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最強おじさん異世界で休日を満喫する!〜なお、勇者は換金所である〜  作者: 涙目


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Pro 英雄達の帰還

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 今日は世界の歴史が変わる日だった。


 人類最大の敵。

 百年前より人類を脅かし続けた魔王。


 その討伐に向かった勇者一行が帰還したのである。


 王都は熱狂に包まれていた。

 広場には民衆。

 城には貴族。

 玉座の間には王族と重臣が集う。


 そんな中。


 俺はいた。


 部屋の隅に。

 できるだけ目立たない場所に。


 柱の陰。


 最高である。


 ここなら視線を感じない。


 安心だ。


 落ち着く。


 帰りたい。



「よくぞ帰った!勇者たちよ!」


 王の声が響く。


 歓声。

 拍手。

 称賛。


 勇者は胸に手を当てる。


「ありがたきお言葉」


 隣には魔法使い。

 神官。

 武闘家。


 それぞれが誇らしげだ。


 当然である。


 魔王を倒したのだから。


 俺ならたぶん恥ずかしくて死ぬ。



「さあ申せ!」


 王が笑う。


「褒美を与えよう!」


 再び歓声。


「ありがたき御言葉、痛み入ります」


 だが。

 勇者は首を横に振った。


「ですが」


 ざわり。


 空気が変わる。



「本当に魔王を倒したのは我々ではありません」



 沈黙。


 誰も喋らない。


 王すら固まった。


「どういうことだ?」


 王が問う。


 勇者は振り返った。


 嫌な予感がした。


 すごくした。


 俺を見るな。


 頼むから見るな。


「こちらです」


 やめろ。


「彼こそが真の功労者」


 やめろ。


「魔王を倒したのは彼です」


 やめてください。


 全員が振り返る。


 俺を見る。


 やだ。


 怖い。


 吐きそう。


「……誰だ?」


 王が言った。


 そりゃそうだ。


「彼です!」


 勇者が指さす。


「だから誰だ?」


 勇者が固まった。


「共に旅した仲間です!」


「いたか?」


 貴族たちが顔を見合わせる。


「見たことがないな」


「勇者殿の従者では?」


「荷物持ちかもしれんな」


 違う。


 違うんだけど。


 訂正する勇気がない。


「彼は私たちより強いのです!」


 勇者が叫ぶ。


「俺は彼に勝ったことがありません」


 ざわり。


「剣も」


 ざわり。


「魔法も」


 ざわざわ。


「模擬戦も」


 ざわざわざわ。


「一度も勝ったことがありません」


 静寂。


 王が頷いた。


「疲れているのだな」


 なんでだよ。


 勇者が絶望した顔をする。


「本当なのです!」


「ならば証明してみせましょう!」


 やめろ。


「彼一人に対し、我々勇者パーティー全員で挑みます!」


「なん……だと……!」


 騎士団長が立ち上がる。


「無茶だ!」


「それほどなのです!」


 勇者も譲らない。


 おい。


 お前。


 善意しかないのに何でそんなに人を追い詰められるんだ!



 そして。


 訓練場。

 観客席満員。


 国中王族。

 騎士団。

 貴族。

 民衆。


 全員いる。


 最悪である。


 俺の精神は限界を迎えていた。


(帰りたい)


 心の底から思った。


(ゲームしたい)


 切実だった。


 審判が前に出る。


「両者準備はよろしいか?」


 勇者。


 こくり。


 俺。


(はやくしろぉぉぉおおお!!)


 審判。


 確認するようにもう一度見る。


(そのタメいらねぇぇぇぇぇぇぇ!!!)


 会場中が息を飲む。


 ごくり。


 緊張。


 期待。


 熱気。


(あああああああああああああ!!!!!!)


 「始め!!」


 勇者が動いた。


 魔法使いが詠唱した。


 武闘家が跳んだ。


 神官が支援した。


 ように見えた。


 次の瞬間。


 全員。


 倒れていた。


 地面に。


 ぺたりと。



 静寂。



「……」


「……」


「……」


 審判が勇者へ近づく。


「勇者殿?」


 返事なし。


「勇者殿?」


 審判が勇者の呼吸、脈拍を確認する。


「なっ……」


 審判が青ざめる。


「どうした!?」


 王が叫ぶ。


「そ、それが……」


 一拍。


「寝ています」


 沈黙。


「……」


「……」


「……」


 誰も理解できない。


 すると。

 どこからともなく声が上がった。


「勇者殿達はお疲れでしたからな」


「ああ」


「魔王を倒した直後だ」


「限界だったのだろう」


「眠気の」


 王も頷いた。


「うむ」


 また頷く。


「当然であるな」


 さらに頷く。


「長旅に魔王討伐」


 納得したらしい。


「心身ともに限界だったのであろう!」


 完全に納得した。


「勇者殿達を運べ!」


 兵士が動く。


「丁重にな!」


 勇者達が担架で運ばれていく。


 勇者が途中目を覚ました。


「か、彼は……!」


「お休みください勇者殿!」


「違う!」


「無理をなさらず!」


「彼を!」


「眠れていないのですな……可哀想に……」


 連れて行かれた。


 俺は周囲を見た。


 誰も見ていなかった。


 誰一人。


 俺のことを。


(帰ろ)


 そっと城を出る。


 兵士とすれ違う。


 しゅばっ!


「ん?」


 通り過ぎる。


 数歩。


 兵士が振り返る。


「あれ?」


 首を傾げる。


「今誰かいたか?」


 隣の兵士も首を傾げた。


「気のせいだろ」


「そうか」


 帰ろう。


 部屋でゲームしよう。


 本日の日記。


 勇者パーティーと試合した。


 一秒で終わった。


 誰にも信じてもらえなかった。


 いつものことだった。


 少しだけ泣いた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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