3、ゼロ距離になったのですが、、、
~前話あらすじ~
生きて帰れないから婚約破棄をしたいと許婚から手紙をもらった主人公は、彼の元へ向かうことに決めた。
そんな主人公を周りの人達は『病んでる姫』と呼んだ。
そして彼の元へ向かう道中に男性に出逢う。
「えっと、あの。私はあなたと知り合いなのでしょうか?」
「あっ、俺は姫様の体の元の持ち主だよ」
「えっ、体の元の持ち主って女性ですよね?」
「そうだよ。俺は男性になりたかった」
「えっ、どうしてですか?」
「あの娘だよ」
体の元の持ち主さんは、少し遠くにいる私と同じくらいの年齢の女の子を見ながら言った。
「あの娘?」
「俺の大切な人だよ」
体の元の持ち主さんの優しい眼差しを見て気付く。
彼が私に向ける視線と同じ。
「そうですか」
「何も訊かないんだね?」
「訊く必要がありますか? お互いが幸せならそれでいいのだと思います」
「姫様は? 俺みたいに大切な人はいるの?」
「はい、いますよ。大切で私の大好きな人です」
「それは良かった。あの無愛想な男から逃げてきたってことだよね?」
「いいえ、その逆です」
「逆?」
私は体の元の持ち主さんへ全てを説明した。
「いくら無敵でも一人で向かうのは危ないよ」
「私、彼に逢うまでは死ぬことはないと信じています。それが私の魔法の力だと思うんです」
「でも、さっきは危なかったよね?」
「でも、あなたが助けてくれましたよね?」
「そっか。これも運命だ。俺達が姫様の護衛に就くよ」
「えっ、そんな。私は大丈夫ですよ」
「いいや。俺達がいれば姫様も安心だと思うよ」
体の元の持ち主さんは自信満々に言った。
二人は本当に楽しそうに会話をし、私は孤独を感じなかった。
そして二人のおかげで危険のない旅路だった。
体の元の持ち主さんの彼女さんは、危険察知の魔法で、何かある前に避けることができた。
「あっ、国旗が見える」
私は国境の近くの建物に国旗が掲げられているのを見つけ言った。
「俺は、ここまでだよ」
「どうしてですか? 彼に会ってほしいのですが」
「会ってはいけないんだ。危険察知だよ」
体の元の持ち主さんの言葉を聞いて、彼女さんが頷いている。
それなら仕方がないよね。
「本当にありがとうございます。お二人とも、どうかお元気で。お幸せに」
そして二人は来た道を戻っていく。
二人は手を繋ぎ本当に幸せそうに見えた。
二人の背中を見えなくなるまで見た後、一度お辞儀をした。
感謝を伝えたかった。
私は国旗が掲げられている建物へ向かう。
もうすぐ彼に会えると思うと嬉しくて仕方がない。
足早になる。
「姫様!」
建物の中から私を呼ぶ声が聞こえた。
でも、その声は歓迎してはいない。
まるで私に来るなと言っているように聞こえた。
「姫様。どうか、お帰りください」
この声は彼の声で間違いない。
彼は私に逢いたくないの?
ここまで来た私に顔も見せてはくれないの?
「私は、あなたを置いては帰りません。そして婚約破棄も承諾しません」
「姫様、どうか彼の指示に従っていただけませんか?」
建物から中年男性が出てきた。
目元は優しく悪い人ではなさそう。
でも、彼の味方をするのなら私の味方ではない。
「私は帰りません!」
「姫様には何もできませんよ。戦う術を知らない姫様には」
「私は戦う術を知る必要はありません。私は無敵なのですから」
「無敵?」
「はい。私には護衛もいないですよね?」
私が、そう言うと中年男性はキョロキョロと周囲を確かめる。
「そんな、ここまでお一人で?」
「そうです」
ごめんなさい。
嘘をついちゃいました。
でも、もし此処に体の元の持ち主さんがいたら嘘をつけなかった。
これが危険察知の能力なんだろうね。
「姫様は、どんな能力をお持ちなのですか?」
「それは、、、」
なんて言えばいいの?
彼の力になる魔法なんて言っても、それが何なのかも分からないし、使い方も分からないし。
「上官様。このままでは、戦況が、、、」
中年男性に若い兵士が片膝を地面に付け、言った。
中年男性は、すぐに建物の中へ入っていった。
私のことなんて忘れているようだった。
「すまない。このままでは負けてしまう。君の力が必要なんだ」
中年男性は、そう言いながら建物から出てきた。
彼の肩を支えながら。
彼は歩くのがやっとのように見えた。
「やめてください」
私は彼の空いている肩を支えながら言い引っ張った。
でも私の力が男性の力に勝てる訳もなく、中年男性の方へ引っ張られる。
「彼が弱っています。これ以上は、、、」
「お帰りください!」
私がやめてと言おとしたら、彼は私を見て言った。
「どうして?」
「ここは戦場。姫様が来るような所ではありません」
「でも、あなたが、、、」
「ワタシは軍人です。恐れなどありません」
「何を言ってるの? 私は恐いわ。私はあなたを失うのが恐いです」
私の言葉を聞いて彼は目を見開いた。
彼に私の気持ちが伝わったんだと思う。
「上官様、お急ぎください」
若い兵士が急がせる。
「少しだけ姫様と二人にさせていただけませんか?」
「少しだけだぞ」
彼は中年男性に許可を得て、私と彼は近くの椅子に座った。
彼の顔を見ると蒼白く顔色が悪い。
「ワタシは先程、恐れなどないと言いましたが、それは嘘です。本当は貴女の悲しむ顔を想像すると恐いのです」
「それなら私を悲しませないでください」
「それはできません。ワタシは、この戦で勝たなければいけません」
「でも、こんなにボロボロになってまで、戦う必要はあるのですか? 死んじゃったら意味がないですよ」
「ワタシの代わりは沢山いますよ」
「私には、あなたの代わりはいません。そんな悲しいことを言わないでください」
私はうつむいて泣くのを我慢する。
彼に悲しむ顔を見せたくないから。
「姫様、触れてもよろしいですか?」
私は何も言えない。
今、彼に触れられたら、涙が出て止まらないかもしれないから。
「どうか。お願いです」
彼の懇願する声が私の心を動かす。
嫌なんて言えない。
私は顔を上げて、彼に向かって小さく頷く。
彼は優しく私の左頬に手を添える。
彼の手に、いつもの白い手袋はない。
温かい彼の手の上から私は自分の左手を重ねた。
涙が流れる。
「私、もう怪我はしないのです。だから心配はしないでください」
「それなら今までの愛を貴女に伝えてもよろしいでしょうか?」
「はい!」
「貴女を愛しております」
「私もあなたを愛してます」
そして私達の距離はゼロになる。
唇に優しい温かいものが触れる。
幸せすぎて頭がクラクラする。
そして何故だか眠くなる。
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~次話予告~
彼とゼロ距離になったのに眠ってしまって目を覚ますと閉じ込められていた。
その間に彼は戦へと向かっていた。
主人公は彼を守ることはできるのか。




