2、婚約破棄は許しません
~前話あらすじ~
転生してお姫様となった主人公には許婚である軍人さんの婚約者がいた。
彼に近付くと怪我をしてしまう主人公だが、彼との心の距離は縮まっていく。
そんな時、彼は戦場へと向かうことになった。
戦へ向かうと彼から告げられた日の夜、私は高熱を出した。
次の日の早朝に彼は戦場へ向かった。
私の高熱は不思議と昼前には下がって元気になった。
体も軽いし、いつもよりも体調が良い。
こんなに快適な日を迎えたのは久しぶりかもしれない。
でも彼はいない。
毎日のように顔を合わせていた彼は、どこを探してもいない。
彼に逢いたくて彼との思い出の場所を毎日巡り、独り言を呟く。
ある日、夢を見た。
暗闇の中にいる私に声が聞こえた。
その声の主は、神だと名乗る。
「君は、転生した。その体の持ち主は愛する人の元へと旅立った」
「愛する人、、、。彼ではないのですね?」
「そう、彼ではない。君に色々と説明をする前に謝りたい。説明をするのが遅くなって申し訳ない」
「えっ、そんな。いいですよ。私はアニメの世界にでも迷いこんだのだと思っていたので」
「その償いとして、君に一つ力を授けよう。どんな力がほしいんだ?」
力?
どういうこと?
「力?」
「あれ? 力を知らないのか? この世界は魔法が使えるのは知っているのか?」
「いいえ」
「そうだったか。それでは説明をしよう。魔法を使えると言っても、一人一つの魔法だけなんだ」
「一つだけ?」
「空が飛べるとか、癒しの魔法とか、攻撃の魔法とか、人の数だけ魔法がある」
「そうなんですか」
「基本は、産まれた時に勝手に決まってしまうのだが、君には選ばせてあげよう。君はどんな力が欲しいんだ?」
私は彼の顔が浮かんだ。
彼の力になりたい。
そのために必要な力は何?
「婚約者の力になりたいです」
「婚約者の力になる、、、確か彼の力は、、、分かった。君に力を授けよう」
自称神様が私に手をかざす。
自称神様の手が眩しく光だし、私は目を閉じる。
温かくポカポカする。
「終わったぞ」
私が目を開けると、天井が見えた。
私はベッドに横になっていた。
変わった感じはしない。
「君の力は婚約者の力になる魔法だ。使い方など自分で学べ」
「えっ、自分で学ぶの? どうやってですか?」
「神は力を授けるだけだ。後は自分の力を信じるしかない」
「そんな、ヒントもないのですか?」
「何事も鍛練だな」
「それがヒントですか?」
「そうだな。あっそれと忘れる所だった。君の前の体の持ち主の魔法は消滅する」
「消滅?」
「そうだ。運命の相手以外に近付けば怪我をするという魔法だ」
あんなに傷だらけだったのは、魔法のせいだったの?
そんな魔法もあるんだね。
「でも、私は怪我をしていたってことは、彼は運命の相手じゃないってことですか?」
「それは前の体の持ち主の力だから君には関係ないんだ。勝手に魔法が継続されていただけだ。すまない」
それなら、これからは彼との距離がゼロになっても大丈夫だよね?
彼に逢いたい。
彼に触れたい。
彼に好きだと言いたい。
それから私は、魔法の使い方をいろんな人に訊いた。
皆は口を揃えて言った。
“その時になれば使える”と。
「姫様。旦那様から知らせが届いております」
使用人の一人が手紙を私に渡して言った。
私は急いで手紙を読んだ。
『これが最初で最後の手紙だと思います。
どうかワタシとの婚約はなかったことに
してくれませんか?
ワタシは戻ることができなくなりました。
姫、どうかお幸せに。 』
彼からの婚約破棄の手紙。
信じられない。
最初で最後の手紙が婚約破棄の知らせ?
「戦況を聞いたのですが、劣勢のようです」
手紙を届けてくれた使用人が戦況を教えてくれた。
「負けたら彼はどうなるのですか?」
「旦那様の命と引き換えに部下達の帰還が約束されると思われます」
「何それ? そんなの私が許さないわ」
「えっ、姫様?」
「私、彼の元へ行きます!」
私の言葉を聞いた全員が驚いた後、私を止めた。
でも私の心は決まっていた。
何もしないで待っているのはできない。
彼のために魔法も使えるんだから。
使い方は分からないけど、このまま彼と会えなくなるのは嫌だから。
使用人達は私の発言を聞いて、コソコソと私の噂話をした。
婚約破棄をされたから病んでしまったと。
私は『病んでる姫』とコソコソと呼ばれていた。
でも私は気にしない。
だって『病んでる姫』は間違っていないから。
私は病んでいる。
だって命をかけて彼の元へ行くのだから。
婚約破棄をされたのに。
私は豪邸を出た。
立派な門に一礼してから歩きだす。
護衛なども必要ない。
だって私は、無敵だから。
自称神様が私に言ったの。
私のレベルはマックスで、この世界で勝てない相手はいないって教えてくれた。
自称神様を信じて一人で彼の元へ向かった。
私は本当に無敵だった。
魔物が襲ってきても、私が視線を向けると逃げていく。
これって彼の戦の相手も私が視線を向ければ逃げていくのかも?
しかし、その予想は外れた。
夜になる前に町の宿屋に泊まった。
そこで食事中に怖い顔の男達がニヤニヤしながら私に近付いてきた。
私が視線を向けても、怖い顔の男達は近寄ってくる。
人に対しては無敵ではないみたいだ。
逃げようとする私の腕を男達は引っ張る。
「やめろ」
私の後ろから男性の低い声がした後、怖い顔の男の手から私の腕が離れた。
そして怖い顔の男達は倒れていく。
「何?」
「俺の魔法だよ。眠らせるんだ」
「そっ、そうだったのですね。ありがとうございます」
私は後ろを振り向き、お礼を言う。
男性の顔を確認すると、男性にも女性にも見える顔は可愛らしい。
「姫様。どうして一人なんだよ? あの無愛想な男は?」
無愛想な男とは、彼のことだよね?
彼って切れ長の目が無愛想に見えるのよね。
しかし目の前の男性は私を知っているみたいだけど、私は目の前にいる男性を知らない。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
ブクマやいいねなど執筆の励みになります。
~次話予告~
彼の元へ向かう道中に出逢った男性が護衛となり、彼の元へ向かう。
彼と逢えたのに、彼は弱々しくボロボロだった。
それなのに彼は、まだ戦おうとしている。
彼を止めたくて彼と話をして心も体もゼロ距離になったのに、、、。




