【6-4】鋼鉄の死神
車外へ飛び出した和樹は、真っ先に後部座席のドアを開けた。
「あやめ! 大丈夫か!?」
あやめは目を覚ましていた。震えてはいたが、怪我はない。
「……おじさん、あのおじさん、こわいよ」
あやめの視線の先。
激しく路面に叩きつけられたはずのライダーが、ギチ、ギチ、という異音を立てながら、ゆっくりと立ち上がっていた。
ライダースーツの至る所が破れ、剥き出しになった肩からは、血ではない「灰色」の液体が滴っている。
「……ターゲット、捕捉……」
壊れた機械のような、抑揚のない声。
男は、異様な角度に曲がった右腕を、自ら力任せに引き戻した。
バキリという骨が砕けるような音が響くが、男は苦痛すら感じていない様子で、再び和樹へと向き直る。
(こいつ、一体……何なんだ!)
男が地面を蹴った。
その踏み込みの衝撃で、アスファルトにクレーター状の亀裂が走る。
和樹は警察学校で叩き込まれた逮捕術を使い、相手の突進をいなそうとした。
だが、相手のパワーは常軌を逸していた。
一撃。
脇腹を抉るような打撃を受け、和樹の意識が飛びかける。
二撃。
顔面をかすめた拳の風圧だけで、視界が赤く染まった。
「ぐ、あぁ……ッ!!」
地面を転がりながらも、和樹は近くに落ちていた金属バット――以前、用心のために車に積んでいたもの――を掴んだ。
「……来いよ。この子は、指一本触れさせねえぞ……!」
和樹は吐血しながらも、最後の力を振り絞り、男の背後から跳躍した。
男が、その殺気に気づき、振り返る。
だが、和樹の執念が、僅かに勝った。
ガァンッ!!!
怒りと、後悔と、全存在を込めた一撃が、ヘルメットの側頭部を完璧に捉えた。
深い亀裂が走り、隙間から灰色の液体が飛び散る。
男の動きが、完全にフリーズした。
和樹はその隙を逃さず、警察学校で叩き込まれた一本背負いの要領で、男の巨体をアスファルトへと叩きつけた。
「うおおおおおっ!」
ズドンッ!という重い衝撃音と共に、男の頭部が砕け散る。
和樹はそのまま男を抑え込もうとしたが、全身の痛覚が限界を迎え、指先に力が入らない。
(あやめ……護……)
最後に見たのは、泣きそうな顔で自分を覗き込んでくる、あやめの小さな顔だった。
「おじさん! おきて! おじさーん!!」
その声を遠くに聞きながら、堂島和樹の意識は、深い闇へと沈んでいった。
お読みいただきありがとうございます!
もし「面白そう!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、 ページ下の【☆】マークから評価や、ブックマーク登録をしていただけると、作者のモチベーションがマッハで上がります! (感想もお待ちしています!)
★隔週で更新いたします!




