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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
最後の大樹へ

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閑話:神の観点

真っ白で何もない神の世界で、美しく白い女神であるイリハアーナが祈りをささげていた。


彼女は世界を作り出した聖神であるが、神の規則に基づき、過度な世界への干渉は行えない。

自分たちが生み出した生命の一種が強大な力を持ち、世界の秩序を守る大樹を傷つけ、世界に崩壊が訪れようとも、神が干渉できる範囲は限られる。


邪神と聖神、二柱の力を合わせれば、規則を破り、世界の崩壊を防ぐことは不可能ではない。

だが、そんなことをすれば二柱は神の力を失い、存在が消えていく。

そうなれば、いつしか魔素がなくなり、それこそ真の世界滅亡が起こる。


二柱が力を合わせれば、崩壊した世界を作り替え、新たな世界を作り上げることもできる。

だが、神と共に世界が滅亡すれば、そこには何も残らない。


だからこそ、【ゆりかご】を利用した来訪者の呼び込みがうまく行き、大樹が癒えたことで、イリハアーナはひどく安心した。

大樹に神の力をいきわたらせ、破滅の地に飲まれた外界を戻す干渉の鍵が生まれたのだ。


とはいえ、彼女の祈りはあくまで世界に力を注ぐに過ぎない。

破滅の地を癒すのは大樹の力である。


そんな大事な祈りの最中だというのに、白一色の世界に似つかわしくない、禍々しい黒の邪神イギルガブラグがどこからともなく現れる。


「おう、イリハアーナ。頑張っているな。」


「おう、ではありません。貴方も共に力を注いでくださらなければ、人の一年などあっという間に過ぎてしまいますよ。」


「それはわかってるが、今回はあのリュクスという癒し手についてだ。全然報告に来ないお前が悪いんだぞ。」


「…何か、ありましたっけ?」


首をかしげるイリハアーナに、イギルガブラグは頭を抱える。

聖神と崇められているが、どこか少々抜けているところがあるのだ。


「ちゃんと目を見とけって言っただろ!」


「あぁ、その件ですか。きちんと見ておきましたよ。」


「なら報告してくれ。…白は輝いていたか?」


不思議な問いだったが、イリハアーナは疑問を挟むこともなく首を横に振る。


「問題ありません。綺麗な色でした。」


「それならいい。破滅の色が混ざらなくてよかった。」


「あの方は心の色が綺麗でしたから、問題ありませんよ。」


「そういう話じゃねぇんだよ…」


リュクスの瞳は日本人らしい黒色から、覚醒を経て白く変色した。

それは覚醒の光を帯びた綺麗な色だ。

イリハアーナはおそらくこの世界で最も美しく、清らかな白。

それと比べれば、リュクスの瞳は劣るだろうが、聖なる色といえる。


しかし、世界を飲み込む破滅の地も、白の砂なのである。

同じ白なのに、二つの白色とはまるで違う、恐ろしさを感じさせる狂気を含んだ色なのだ。


「…確かに、覚醒の光は、もっとも相性のいい属性の色が移ります。ですが、彼の色は破滅ではなく、私と似た慈愛でしたし、覚醒の力も封印しましたよ?」


「まぁ、覚醒を封印したなら、もう大丈夫だろうが、破滅の地が揺れを起こしたのが、まるで共鳴に思えたんだよな…」


「いいえ、あれはただの抵抗です。破滅の地が大樹を一つでも飲み込もうと試みただけ。…そんな遺志を持ったことは恐ろしいですが、きっかり人の時間で一年で消し切りますよ。」


「…あぁ、そうだな。」


イリハアーナが再び祈り始め、イギルガブラグは頬を掻きながら自身の黒一色の世界へ戻っていく。


神である彼が感じた不安は的を射ず、世界の癒しは順調に進む。

そして、一年より早い次の赤月をもって、破滅の地は完全に消滅した。

砂に埋もれていた外界の大陸や海洋内では、かつて消えた生命が再生成されていった。


一万年以上前に滅んだはずの命の数々が、蘇っていく。

中には知的生命も当然いるわけだが、彼らは滅んだ直前の記憶を失っていた。

破滅に飲まれたはずの建物も、周囲の自然もそのまま戻されたため、一万年という時が経過したことも感づかない。


長期間耐えたのは大樹のある大陸のみで、それ以外の外界は今からようやく時を刻み始める。

だが、外界にそれを指摘できる存在はいない。

そのうえ、外洋に住む魔物の影響により、大樹の大陸で造船技術がどれだけ発展しても、海を進むのは困難である。


外界のものが海を容易に渡れぬように作られた魔物だが、かつての強靭なデモナは数日もかけて空より飛来した。

しかし、今のデモナにそれができるものなど、魔王くらいだろう。

そして、魔王は今の地を離れる気など毛頭ない。

それゆえ、彼らは一万年という時を眠っていたことを知る機会が訪れることなく、残る生涯を全うするものばかりだろう。


そもそも大樹が癒され、神が力を注ぎ、世界が復旧したことを知る者が少ない。

外界の者たちのなかでも、力を持つほんの一握りが世界が癒えたことに気づき始めるが、彼らは人と語らうような存在ではない。


外界に暮らす人々は、それでも神に祈る。

それは滅ぶ前より行っていた、なんてことのない日常の静かな祈り。


二柱にとって神への祈りは力になるわけでも、明確な対話ができるわけでもない。

一方的な神託を下ろせることもあるが、それを利用してまで、一万年の時が過ぎたことを告げるような内容は送らない。

ようやく世界に戻れた彼らに、これ以上余計な不穏を与えないためだ。


ただ静かに、彼らが再び命をはぐくみ始めた様子を見守っていた。

今後について


「ランダムに選ばれたのはテイマーでした」は

メインストーリーを完結としますが、

作品は連載中でおいておきます。


理由は、番外編を始める予定があるからです。

「外洋編」「外界編」の構想があるので…

せっかくなので書いていきたいです。


なお、この後に「おまけ小話」があります。

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