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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
最後の大樹へ

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帰るべき場所

魔王城地下調理室だった部屋は、リュクスのために改造されていった。

地下であることを生かし、奥をくりぬいて二部屋を新たに作り、一つは簡易神殿部屋を作り上げた。

もう一つは広い寝室となり、ベッドもシングルからクイーンサイズのものが置かれた。


魔王の指示ということもあったが、大樹の癒し手への恩返しという意味で、作業するデモナはやる気が高かった。

ただ、リュクスが魔王城の見学に出歩くと、すれ違うデモナたちから癒し手として崇められてしまう。

魔王の指示で贈り物などは制限されていたようだが、リュクスは城内を練り歩く最中、終始困り顔であった。


転移で帰宅すると、いつもの風景に戻る。

南端の街は元々、破滅の地である白い砂の大地とは無縁の場所。

ただ、リュクスが最後の大樹を癒す際には影響があったようで、ここまで大地が揺れたようだ。


レササ達含む自宅待機していた従魔から心配され、やむなく大樹を癒した話を語り落ち着かせた。


だが、面倒ごとはそれだけで終わらない。

南端の街で冒険者ギルドに軽く報告するだけですませるつもりが…


「そんな世界の一大事を解決したことなど、儂一人では荷が重い!王都のギルドマスターに報告しろ!」


といった具合に、アーバーに追い出されて王都に報告に向かった。

当然王都のギルド長室でもギルシュとテルミクにすごい顔をされた。

二人は大樹を癒した話よりも、聖神から伝えられた外界の話に意識を向けていた。


「外界が開くとなると、港町が騒ぐのではないか?」


「いえ、おそらくそれほど影響はないでしょう。もともと現在の航海術では破滅の地が見えるほどにまで概要に出れていませんでしたから。」


「あのあたりは海を残すためか、破滅の地を防ぐ力が強かったからな…リュクス君は何かイリハアーナ様より伝え聞いていないか?」


「いえ、残念ながら外界は言語が違うということくらいしか…」


リュクスの返答に二人の苦々しい顔が悪化したのは言うまでもない。

結局リュクスは朝から向かったというのに、解放されたのは日が暮れる直前だった。

ぐったりした様子で自宅に戻り、リュクスは気を取り直して夕食を作り始める。

料理は従魔が楽しみにしているが、リュクスにとっても気分転換にもなるのだ。


いつもは連れ歩く従魔だけで楽しむ夕食を、今日はすべての従魔を呼びつけ、外での賑やかな食事となった。

蜘蛛達はリュクスの出来立て料理が初めての者もいたようで、やたらと食が早い。

連れ歩く従魔たちもなぜか対抗し、負けじと食べ進めていく。

トレント達は食事はできないが、水の代わりにジュースを木の体に浴びていた。

リザードマンたちはレイトともに酒が入り、完全に出来上がって、トレントにまで酒をかける始末だ。


食事が終わるころには満腹感と酒で皆がつぶれ、無事だったのはリュクスとレイトだけだった。


「あーあ、ひどい有様…」


『お前のせいだろう。』


「レイトもあんなに食べて飲んでしてたのに、平気そうだね?」


『己を誰だと思っている。それより、横に少し座れ。』


レイトの姿はちょこんと座る兎なのに、バシバシと前足を横に叩くさまは、絡み酒のおっさんの雰囲気だった。

リュクスは肩を落としながら、そっと横にすわる。


「どうしたの、急に。」


『お前、これからどうする気だ?』


「え?ほんとに急に何?」


困惑するリュクスに、レイトは呆れるように鼻を鳴らした。


『わからぬのか?来訪者であるお前の使命は終わったのだ。もう自由にできる。それこそ、元の世界に戻ることすら、今のお前なら可能やもしれん。』


「は?どういうこと?」


『お前の時空術は、覚醒と、その手の力によって、神域まで到達し得るということだ。』


「…そうなんだ。でも、正直もう神の御使いって言われるのはこりごり。それに、僕はみんなと居れるここが好きだからね。」



リュクスは倒れて寝息を立て始めた従魔たちを優しく見つめる。

レイトも再び呆れるように鼻息を鳴らすが、それは先ほどよりも柔らかいものだった。


『まったく、仕方のないやつらだ。確かに、見ていなければならないな。』


「ほんと、その通りだよ。あ、でも、旅には出るつもり。外界って場所にいずれは行ってみたいと思う。」


『好きにすればいい。己はどこまでもついていこう。』


「レイトが付いて来てくれれば心強いよ。まぁ、世界が癒えるのに一年はかかるみたいだし、しばらくはゆっくりこの家で過ごそうかな。」


『それでは体もなまるだろう。時折、己が模擬戦してやるとしよう。』


「…それはやめて。」


むくれるように返したリュクスとにやける様なレイトの視線が合う。

そして特に合図もなく、リュクスは座ったまま、レイトは少しジャンプしてハイタッチを交わし合った。


「よし!片付けるよ!レイトも手伝って!」


気合を入れて体を起こすリュクスに、レイトはまた鼻息を鳴らした。


『仕方ない。今日くらいは手を貸そう。』


従魔ではモイザは糸を使って器用に片付けをこなすが、他従魔は手足の問題で手伝いたくとも手伝えない。

レイトもいつも、どこか他人事のように片づけなど見ているだけ。

それが今は、水魔法で皿を洗い、宙に浮かせて整然と並べ、モイザ以上に器用に手早く片付けをこなす。

さらには酔いや食いすぎでつぶれた従魔たちも次々と運ばれていく。


リュクスとしては冗談のつもりの発言だったが、その手際に驚き立ち尽くす。

だが、すぐにレイトに一瞬睨まれ、慌てて片づけへと向かった。

ご愛読、ありがとうございました!

これにて「ランダムに選ばれたのはテイマーでした」

メインストーリー完結です。


この後、閑話の更新はありますが、

それも終われば最終章「最後の大樹へ」も完結とします。


今後については、閑話の後書きか、活動報告をご覧ください。

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