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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
最後の大樹へ

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雪原の摂理

遠目には真っ白に見えていた雪原地帯。

しかし、足を踏み入れると、その雪はほのかに黒ずんでいる。

雪は降っていないが、くるぶしまで埋まるほど分厚く積もっている。

そんな中でも、ベードは雪の上を軽やかに進んでいく。

足跡も残さず、足音すら立てずに。


さらに、フレウの暖気もあって、凍える雪原でも快適に進むリュクスたち。

道中、ダイアウルフを見かけるが、こちらに気づく様子もなかった。


「フレウの魔法には反応しないんだね。」


うぬやお前の使う探知も感知されないだろ。それと同じだ。』


「あー、なるほどね。フリップスペースも反応されないし、魔素の使い方次第で勘づかれない攻撃魔法とかもできるのかな?」


より寒さをしのぐためにフリップスペースを展開しているが、特に意識せずとも、この魔法が魔物に感知されたことはない。


『その魔法も探知と同じような特性があるな。だが、攻撃的な魔法はどう調整しても、つよい気配が混ざるぞ。』


「あー、レイトはすでにいろいろ試してた?やっぱそううまくはいかないか…」


『今更だな。だが、今のお前ならばそういう魔法を作り出せる可能性もあるかもしれん。』


「そうなの?じゃあこの旅が終わったら試してみようかな。」


この旅の間も、今まで通り自宅で一日小休止をとる時間は作るだろう。

だが、既存の魔法を少し発展させる程度ならともかく、レイトすら実現できなかったものとなれば、十分な時間を取って取り組む必要があると考えた。


そんな他愛もない会話を交わしながら、半日ほどすると、ダイアウルフ以外の気配をレイトが捕らえる。

リュクスの感知範囲にも入るが、どうやらただ小さくうずくまっているだけのようだ。


「何だろう、見てみてもいいかな?」


『…己はあまり気が乗らぬが、いいだろう。』


「え?なんで?」


『見ればわかる。』


レイトの反応からして、驚異的な魔物というわけではなさそうだが、煮え切らない答えにもやもやしながらも、やがてその魔物の元へたどり着く。

気配は雪の中からするが、肝心の魔物の姿は見えない。

リュクスは試しに気配のする場所に識別の意識を向けた。


----------

対象:スノーホワイトラビット

雪に紛れる白い姿をした兎

繁殖力は非常に高いが、魔物としては非常に弱い

他の魔物に狙われても、反撃もせず、小さく震えるのみ

----------


「…本当に魔物?か弱すぎるんだけど。」


『やはり近縁種か。似た姿で臆病な姿をさらさないでほしいものだ。』


蔑むように見下すレイトにリュクスは思わず顔を引きつらせた。


「なかなか辛辣だね。」


『すぐにわかる。来るぞ、ダイアウルフだ。』


「え?うわ、ほんとだ。」


まっすぐ駆け寄ってくるダイアウルフ。その狙いは、縮こまる雪兎だった。

邪魔にならないように、ベードが少し身を引く。


狙われていることに気づいているだろうに、身動き一つしない雪兎。

狩りやすい相手だと理解しているのか、ダイアウルフが躊躇なく襲い掛かる。

リュクスは思わず助けようと手を伸ばすが、頭上をレイトに叩かれる。


『やめておけ。キリがないぞ。』


「…うん。そうだよね。」


ぐったりとした小さな雪兎を加え、ダイアウルフはどこともなく去っていく。

兎だから助けようとしたのか、それとも無防備だったからか。リュクスの胸に、何とも言えない感情が渦巻く。

とはいえ、この雪原地帯の弱肉強食に干渉するべきではないことは理解していた。


その先でも時折雪兎の気配と、それを襲うダイアウルフの気配を捕らえる。

識別通り、雪兎の数はそれなりに多く、隠れきっている個体もいるようだ。


「兎がいるなら、わざわざバロメッツを狩りに行かなくてもよかったと思うけど。」


『何を言っている。体格が違いすぎるだろう。』


「なるほどね。」


雪兎の体格はレイトより一回りは小さく、体格の大きいダイアウルフにとっては何匹も狩らなければいけないのだろう。

その点、咲き誇っていたバロメッツの羊は巨大で食べ応えがあったのだろう。

だが、いまやそのバロメッツは再び咲き誇ることはない。


「…ちょっと悪い子としたかな。」


『何を言う。大樹を癒せばこの地にも餌となる聖族を生み出せるはずだ。』


「太陽の大樹で見た餌牛みたいなやつね。確かに、月の大樹がしっかり復活したら、そういうのも出てくるのかな。」


『おそらく、正常だった頃はそうして弱肉強食は回っていたのだろう。』


レイトの仮説は的を射ていた。

そもそも、雪原に住むダイアウルフが、わざわざ雪のない地まで足を運んでいたのは、そこで何かを狩っていたからに他ならない。

それはおそらく、餌牛のような魔物の餌として生み出された聖族動物。

だが、魔物化した薔薇の影響で三日月山付近に聖族動物が生まれなくなり、代わりに生えたバロメッツを狙っていたのだ。

その事実を知る由もないが、リュクスは納得したように頷いた。


「じゃあなおさら、最後の大樹を直さないとね。雪まで黒ずんじゃってるし。」


『そうだな。』


『了解です!どんどん進みます!』


リュクスが改めて決意すると、ベードはわずかに歩みを速める。

その頭上では、自らの暖気に包まれたフレウが、何事もないかのように眠りこけ、ほのかに揺れていた。

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