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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
デモナの地

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グラドの目覚め

自宅に帰ってきたリュクスは、まずグラドをソファーに寝かせる。

普段はそこを独占しているフレウだが、今日は普通の椅子に乗せた。


「…やっぱり、起きないね。」


『言ったであろう。一晩も寝れば治る。しばらく寝かせてやれ。』


「わかってる。しょうがない、お昼にするよ。」


『わぁい!二はカレー!』


「了解。みんなの要望も聞くよ。」


従魔たちの要望を聞いて厨房へ立つリュクス。

調理のスピードにこそ遅れは出ないが、表情はどこか晴れない。


準備を終えて戻ると、匂いに釣られてフレウは目を覚ましたが、グラドは眠ったままだった。


「やっぱこれでも駄目か…」


誰にも聞こえないほど小さく呟きながら、ベードの皿へと視線を落とす。

今日の料理は香りを強めたステーキで、ベードは夢中でかぶりついている。

だが、グラドを目覚めさせるには至らなかった。


結局、夕食時になってもグラドは起きず、さらに香りの強い料理をと考える。


「スモークチキンなら、もっと匂いは強いかも?」


リュクスは元の世界でも、燻製器を使わない簡易なスモークチキンならば作った経験があった。

調味料は米から作られた酒とリンゴ酢、醤油に砂糖はそろっている。

準備で必要なのは、燻製用の乾燥木片くらいだった。


「うーん、こればっかりはすぐ用意できないか…」


『何を悩んでいる?』


「今日の料理。匂いの強いものをと考えたんだけど、材料が足りなくてね。」


『そうか。…モイザ、お前の出番だぞ。』


『はい。お呼びでしょうか、主。』


レイトが呼ぶと、調合台で薬を作っていたはずのモイザは颯爽とリュクスの前に駆け寄る。


「えっと、呼んではいないんだけど、相談しちゃおうかな。」


『はい。料理のことなら、ご一緒に悩まさせてください。』


「わかった。実はスモークチキンって料理を作ろうと思ったんだけど、そのためにしっかり乾燥させた木片が欲しいんだよね。」


リュクスは軽く肩をすくめて見せる。

相談はしたものの、モイザに解決できるものではないと思ったからだ。


『なるほど、調理道具のほうが足りないのですね…』


「そうだね。リンゴの木はうちに生えてるけど、乾燥させるには時間がかかるから。」


『それならばなんとかなるかもしれません。』


「え?当てがあるの?」


『はい。少々お待ちください。』


まさかの反応に驚いていると、モイザは誰かとの連絡を終え、ひとつ頷いた。


『どうやらすぐに来るそうです。』


「すぐに来る?」


言葉の意味が分からず、リュクスは首をかしげた。


ほどなくして、家の扉を叩く音が響いた。

来るというのはこのことかとリュクスが出迎えると、そこにいたのはトレントのトフショだった。


「え、トフショ?」


困惑するリュクスをよそに、トフショが枝を伸ばす。

枝の先に木片が絡まっていることに気づき、リュクスが手を伸ばすと、ポトリと落ちてくる。

それはよく乾燥した木片であった。


喜びのあまり、リュクスは飛び上がりそうになったが、念のために識別をかける。


----------

対象:リンゴの乾燥木片

リンゴの木から零れ落ちた木片を、トレントの能力によって急速乾燥させたもの

----------


「おぉ!すごい!こんな能力があるんだね!」


『もしかしたらと思い、レササに確認をとって良かったです。』


リュクスとモイザの反応に、トフショも嬉しそうに葉を揺らす。

しかし、すぐにぴたりと納まると、いつもの寝床方面に木の根を動かして帰っていく。


「あ、ちょ!ありがとねー!」


『これで作れそうですか?』


「もちろん!モイザも見る?」


『よろしければ、見学させてください。』


モイザが隣で見学していても、リュクスが夕食を作る手さばきによどみはない。

元の世界とはいえ、スモークチキンは一度は作ったことのある料理だ。

この世界に来て料理のスキルを得て、これまで様々な料理をこなしてきたリュクスにとっては造作もない。


蒸し上がった鍋の蓋を取ると、白い湯気とともに甘く焦げた香りが立ちのぼる。

それは昼に作ったステーキの比ではないほど強く、肉好きのベードが普段立ち入らない調理場に顔をのぞかせるほど。


だが、それでもグラドは目を覚まさなかった。


ベードは夢中で食らいつき、ネティスのカレーにも乗せたのだが、一番の目的は果たせず夕食を終える。


触れれば寝息も心音もしっかり感じられる。それでもこのまま目覚めないのではという不安を抱えたまま、グラドを隣に横たえ、リュクスは眠りについた。


突如、地の底から響く地鳴りのような音にリュクスは飛び起きる。

辺りを見回すと、まだ外は薄暗く、太陽が昇り始めていないほどの刻であることがわかる。

そして、強烈な音の源は、体を起こしたグラドからだった。


『…悪い主。起こしたか?』


「ううん、大丈夫。お腹すいたの?」


『あぁ、とてつもなくな。』


「じゃあすぐになんか食べれるものを…」


『待った。その…出来立ての唐揚げが食いたいんだが…ダメか?』


「全然いいよ!」


激しい音も二人の会話もしているのに、いまだ他従魔たちは寝続けている。

そんな中、リュクスは飛び起きて、すぐに厨房へと入る。

コカトリスの肉を味付けし、油で揚げて、あっという間に唐揚げを作り上げた。


「完成!コカトリスの唐揚げ!今日は時短で二度揚げはしてないけど。」


『おぉ!これこれ!』


こんな早朝にもかかわらず、グラドは勢いよく唐揚げをほおばっていく。

完全に復帰したその姿に、リュクスは安堵しつつ、おかわりの催促を予測し、次を揚げていく。


唐揚げと言えど、肉と油の匂いは香り立つ。

リュクスがおかわりの皿を運ぶと、まだ早い時間だというのにフレウを含めた従魔たちが起きてきて、グラドの皿を見つめていた。


『お前だけずるいぞ!主、俺もから揚げをください!』


『二もから揚げカレーが食べたーい!』


『揚げ物ならば春巻きだろう。うぬは春巻きだ。』


『私はアップルフリッターをいただきたいですね。』


『コッ!俺には魚を上げてもらおうか!終わった油は俺が飲んでもいいぜ!』


「みんな起きてきちゃったんだね。んで、みんな朝から揚げ物ね。」


『おい!このおかわりはわれのものだからな!』


賑やかになった食卓に小さく笑みをこぼしつつ、リュクスは従魔たちの要望をかなえるため再び調理場へ向かった。

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