表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
デモナの地

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

376/418

赤黒き薔薇

三日月の山を登り始めたリュクスたち。

山の形はいびつだが、登れる獣道はあり、ベードの足なら問題なく進める。

バロメッツこそいなくなったが、山を覆う茨は健在で、再び道を阻まれた。


『これは…俺では飛び越せません。』


「そうだね。どうせもう一回燃やしちゃったし、ここも燃やしちゃおう。フレイムボールズ!」


リュクスがすぐに大きな炎球をいくつも茨に放つが、命中した箇所は燃え落ちたものの、他まで燃え広がらなかった。

そのうえ、燃え跡を埋めるように周囲の茨が伸び、再び道を塞ぐ。


「嘘、全然効いてないんだけど。」


『おいおい、燃やすならわれに任せろ!』


「そうは言うけど、ちょっと前に大量に黒炎吐いてたでしょ?疲れてるかなって思って。」


『まだまだいける!見ていろ!ブラックブレス!』


グラドが飛び出し、茨に黒炎を放つ。

リュクスの炎と違い黒い炎は燃え広がり、しっかりと道ができあがった。


「おー、すごい!」


『火力の差だな。お前でももっと強い技を使えば燃やし切れたはずだ。』


「なるほどね…でも、ちょうどいい技がないから、何か考えておくよ。」


『ずっと吾に任せてもいいのだぞ!』


「じゃあ、この山の茨はグラドに任せちゃおうかな。でも、疲れたら言ってね。」


『わかっている。』


『では進みます!』


開けた道をベードが軽快に進んでいくが、数刻ごとに度々茨に道を阻まれ、グラドが黒炎のブレスで焼き払っていく。

夜になっても文字通りの茨道は続き、また行く手を塞ぐ茨にリュクスは肩を落とした。


「なんていうか、まるで行く手をふさぐかのようだよね。」


『まるでではない。確実にうぬらの行く手を防いできている。』


「え?そうなの?」


『見える範囲より遠い茨が薄くなり、進む先に集まってきている。茨のヌシはよほど己らが山を登るのが嫌なのだろう。』


「そうなんだ…でも、避けたところでもうこっちの気配がばれてるってことだよね?」


『そういうことだ。茨を焼いたことでばれたのだろうが…まだ向こうの気配はつかめていないのが不穏だな。』


「レイトでもわからないとなると、マンイーターみたいに茨と気配が混ざってるんだろうね。」


リュクスは山頂を見上げながら、まだ見ぬ茨の本体に不穏を感じていた。


グラドの黒炎で茨を焼き払い、ベードがどんどん進んでいく。

日が昇り、山頂も近い頃、リュクスは魔物の気配を感知した。


「いた。魔物だ。僕たちの進む先に陣取ってるよ。」


うぬはまだ感じ取れぬ。どういうことだ?』


「わからないけど、近づけば見えると思う。結構でかい気配だよ。」


『そうか。』


『どうします?このまま進んでいいですか?』


「うん。多分倒さないと先には進ませてくれそうにないから。」


明らかにリュクスたちを待ち受ける気配。

よほど登らせたくないのだろうと察したリュクスは、まっすぐ対峙することを選択する。


やがてリュクスたちが気配のヌシまでたどり着く。

周囲の茨が蛇がとぐろを巻くかのように蠢き、丘と見紛うほどに盛り上がっている。

その中心に大きく咲き開く、赤黒い薔薇。


「あれが、魔物みたい…」


『ただの花に見えるが…』


『己の感知では、茨と同じく魔物とすら感じ取れぬ。』


「そうなんだ、とにかく識別してみるよ。」


----------

対象:マザーローズ

植物の母である薔薇

初めはただの小さな薔薇だったが、濁った魔素に汚染され魔物と化した姿

今では魔物の本能で月の大樹の力を奪う

----------


「濁った魔素で魔物と化した薔薇ね。植物の母で月の大樹の力を奪ってるみたい。」


『なるほど、元は植物か。そして母ということは、マンイーターやバロメッツを生み出したのもこいつか。』


レイトが睨みつけても、蠢くのは茨だけで、マザーローズ自体に動く気配はない。

だが、すでに背後を茨で覆われ、退路はふさがれていた。


『にしても襲ってこないな。もう吾が燃やしていいか?』


『待て。明らかに待ち構えられたのだぞ。何か罠があるかもしれん。』


『そうはいうけどよ、見ててもらちが明かないぜ?』


「どうせ向こうから仕掛けてこないなら、少し準備しよう。スペースエリアコントロール。」


リュクスが辺り一帯を空間掌握したが、大量の茨の影響で巨大なマザーローズは半分も入らない。


「さすがに、あいつは全部入らないか。でも、これなら何かあっても転移で回収できるよ。」


『なるほど。グラド、これならば突っ込んでもいいぞ。』


『そう来なくてはな!行ってくる!』


意気揚々とグラドが飛び出し、マザーローズ前の宙を陣取る。

そして大きく口を開いた。


『ブラックブレス!』


激しい黒炎がマザーローズに襲いかかり、誰もが決着を予感した。

しかし、マザーローズ本体に黒炎がたどり着くことはなく、巨大な薔薇全体を覆う水の壁に阻まれる。


『んなっ!?』


グラドが驚いたのもつかの間、マザーローズ周囲の茨が蠢くと、そこから棘が打ち出される。

それは宙にいるグラドだけでなく、後方で見ていたリュクスたちにも襲いかかる。


「うわっ!こっちまで来た!フレイムシールド!」


『背後は動いてません!盾手伝います!ストーンシールド!』


リュクスたちは炎の盾と、モイザの石の盾で、飛んできた棘をすべて塞ぐ。

しかし、グラドは黒炎を放ったばかりで、素早く防御できる手段はなく、何とか飛んで避けようとする。

だが、マザーローズに近すぎたがために、体にいくもの棘を受けてしまう。


『うぐっ!?』


「グラド!」


棘の麻痺毒が回ったのか、苦しげな表情で宙から落ち始める。


「ショートテレポート!」


リュクスはとっさに、茨の地に落ちる前にグラドを手元へ転移させた。


『悪い、しくじった…』


「無理にしゃべらないで!モイザ、解毒できる?」


『すいません…この麻痺毒に私の解毒薬が効くかどうかは…』


『リュクス、お前のヒーリングハンドのほうが効くだろう。』


「わかった!あの薔薇を見ててね!ヒーリングハンド!」


リュクスの手が緑の光を放ち、グラドの全身を包んでいく。

苦しげだった顔も少しばかり収まる。


癒しで手がふさがるリュクスを見て、レイトはまだ寝こけているフレウを睨みつけた。


『仕方あるまい。フレウ、起きろ!』


『コッ!?な、なんだ!?うお、敵か?』


『そうだ。だが、本体はグラドの黒炎すら防ぐ水の結界がある。』


『コッ!?それって、俺の炎でどうにかなるのか!?』


『ならないな。だが、そのグラドがダウンしている。リュクスが癒し切るまで防御役くらいにはなれ。』


『コッ!?グラドがやられたのかよ!?まぁわかった!』


フレウもリュクスのひざ元で麻痺毒に倒れているグラドに気づき、気合を入れ直すようにマザーローズへ向き直る。

そしてマザーローズは再び周囲の茨をうねらせ、リュクスたちへ棘を飛ばす。

今度は薔薇の根元の棘だけでなく、リュクスたちを囲うすべての棘を。


『防ぎます!ストーンシールド!』


『ベード、ネティス、お前らも手伝え。サンダーシールド。』


『了解です!フロストブレス!』


『ニもいくよー!フロストシールド!』


『コッ!負けてらんねぇ!フレイムシールド!』


従魔たちがそれぞれ得意属性の盾を展開し、棘を完璧に防ぐ。

これで茨の蔓の棘は尽きたかと思われたが、すぐに新たな棘が生え始める。

異様な再生能力にさすがのレイトも顔を歪めた。


『なんだ…魔物としても、再生力が早すぎる。』


『コッ!?気持ちわりぃな!あの茨なら焼けるんじゃねぇか!?』


『そうだな。ならば、ライトニングストライク。』


リュクスたちの退路を塞ぐ茨へ、激しい雷撃が降り注ぎ、着弾点が燃え上がる。

だが、茨の一部が燃え落ちただけで、すぐに周囲の茨が延びて再び塞がれた。


『…ダメか。』


『まさか、レイトさんの雷でもダメとは…』


『また棘が来るぞ。構えろ。』


従魔たちが棘に対処する中、リュクスはグラドの治療に専念していた。


「ただの癒しじゃ完全に治らない…もっと麻痺毒を癒せるように…」


リュクスのヒーリングハンドは傷を癒すことに長けているが、状態異常を癒すことは得意ではない。

イメージを切り替え、癒しの効能を変えるため、技そのものを切り替える。


「キュアハンド!」


緑の光が青に変わり、グラドの体全体を包む。

麻痺毒が抜けたのか、ようやくグラドの顔から完全に苦しみが消える。

だが、影響はまだ残っているようで、目覚めない。


「さすがに起きれないか…」


『リュクス、癒せたなら加勢しろ。そいつなら一晩も寝れば治る。』


「ごめん、すぐ手伝う!」


『よし、あの花には水の結界があったが、お前の転移ならば抜けて攻撃でキルやもしれぬ。防御は任せて試せ。』


「了解。ディメンジョンインパクト、テレポート!」


レイトの指示に従い、即座に空間衝撃波をマザーローズへ転移させる。

だが、薔薇の周囲にある水の壁に阻まれ、その地点で破裂してしまう。


「嘘、転移が通らない!?空間掌握までしてるのに…」


『水を防ぐことはできないのか?』


「無理!みんながいろいろ魔法使ってるし、あいつ全体を掌握できてない!」


『そうか、何か手段はないのか…』


従魔たちが度々飛んでくる茨の棘を防ぎつつ、リュクスも少し悩む。

そこでベードが氷の吐息で茨を凍らせ防ぐのを見て思いつく。


「そうだ!薔薇の周りのやつって、ネティスの水結界に似てるでしょ?凍らせたりできないかな?」


『似ているというか、ほぼ同じだな。確かに、凍らせられるだろう。』


『ニの結界よりなんかつよそーなのむかつく!ニも凍らせる!』


「え?でも、ベードのブレスで凍らせようと思ったんだけど。」


『ニもブレスはけるよー!ベードみたいな広がるやつ!』


『んなっ!?お前もできたのか…』


明らかにベードが項垂れたが、すぐにリュクスが慰める。


「まぁまぁ、今はできるだけブレスの威力は強いほうがいいから、二人で協力してよ。」


『ならば、次の棘は己が防ぐ。モイザとフレウは万が一抜けてきたらカバーしろ。』


『了解です。』


『レイトの防御を抜いてくるとは思わねぇけど…まぁやるぜ!』


棘が再生しきり、再びリュクスたちを狙って発射される。

その瞬間、レイトが右前足を掲げた。


『ライトニングドーム!』


リュクスたちの周囲を覆うように雷がドーム状に覆い、棘を防いでいく。

レイトの懸念は当たらず、通り抜けてくる棘はない。


「僕たちも行くよ!ベード、ネティス!転移させるから、同時にブレスを出して!」


『了解です!』


『りょうかーい!』


「じゃあ行くよ!せーの!」


『『フロストブレス!』』


「テレポート!」


合図に合わせ二体が氷の吐息を放ち、リュクスがマザーローズに向けて転移させる。

薔薇を包む水の壁に阻まれるが、同時にその水が凍り付いていく。

水の壁全体が完全に凍り付き、マザーローズは氷の中へ閉じ込められた。


「ディメンジョンスラッシュウェーブ!」


すぐさま空間斬撃波を放ち、氷ごとマザーローズを切り裂く。

凍り付いた赤黒い薔薇が真っ二つに裂け、蠢いていた周囲の茨も動きを止める。

もともと黒ずんだ茶色の茨だったが、より枯れ落ちたように蔓が萎れていく。


「気配は消えたね。倒せたみたいだ。」


『そうだな。棘も止んだ。』


『さすがです、主!』


「いやいや、ベードとネティスが凍らせてくれたおかげだからね。」


ほっと肩を下ろしたリュクスは、いまだ眠るグラドを少し撫でる。


『さて、もう茨も復活しないだろう。燃やしてしまえ。』


『せっかく起きたんだから俺がやるぜ!フレイムボール!』


フレウの炎球によって、萎れた茨はあっけなく燃え落ち、道が出来上がる。

あれほどの再生力は見る影もなく、マザーローズ討伐の決着を物語っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ