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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
デモナの地

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373/418

茨に咲く羊

茨の密度は次第に増し、巻きつかれる低木の数も目に見えて多くなっていた頃。

リュクスたちは新たな魔物の気配を感知していた。


「なんか、二種類の魔物の気配がするね。ヤドリギも残ってるし。」


『そうだな。三種類の魔物が入り混じるとは、珍しい。』


「そうだよね。面倒な相手じゃなきゃいいけど…」


二種の魔物の気配はいずれも近く、リュクスはベードに指示して接近してもらう。

まず見つけたのは、三匹の白い狼だった。

ベードほどではないが、狼としては巨躯で、雪のような白い毛並みをしていた。

体を伏せ獲物を狙う後ろ姿を捉えたが、リュクスたちは狼が狙う相手の異様さに目が奪われる。


茨の中から、なぜか一本だけ、まっすぐ天へ向かって茎が伸びている。

その先端には、茶色い羊が生えていた。


先端の羊は、立っているわけでも、座っているわけでもない。

胴が地面から伸びた茎と繋がり、まるで実が成るように、宙に固定されている。

その不気味さに怯んでいるのはリュクスたちだけで、ダイアウルフたちは獲物として捉えていた。


魔物特有の赤黒い目を持つ羊だが、狼に狙われているというのに、まったく動く気配はない。


『なんだあの魔物は。植物から羊が生えているぞ。』


「…多分バロメッツだね。狼と一緒に識別してみる。」


リュクスは元の世界で見た漫画に、よく似た魔物が登場していたことを思い出す。

とはいえ、この世界でも同じものかを確かめるため、識別をかけた。


----------

対象:スノーダイアウルフ

雪地帯に住む真っ白な毛並みの狼

分厚い毛並みによって豪雪地帯でも悠々と生活できる

雪地帯は獲物が少なく、狩りのため縄張り外へ出向くことも多い

鋭い牙と爪は一瞬で獲物の息の根を止める


対象:ソーンバロメッツ

茨から生まれたバロメッツ

魔物ではあるが、生態はほぼ植物

茎から生えた実が成熟しきると、花が咲くように羊部分が出来上がる

バロメッツ単体に防衛力はなく、羊部分は他の魔物の糧となる

羊の肉は蟹の味がする

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「うん、やっぱりバロメッツだ。狼のほうはスノーダイアウルフだって。縄張り外からあの羊を狩りに来たみたい。」


『なるほど。だが、やたら慎重だな。』


「茨の棘は麻痺毒があるからじゃない?あ、ほら、飛びついたよ。」


ダイアウルフが順番にバロメッツへ飛び掛かる。

まず一匹が茎と羊の接合部を切り裂き、二匹目が羊を宙へ浮かせる。

そして三匹目が華麗に咥えてキャッチし、被害なくバロメッツの狩りを終えた。


「かっこよかったけど…二匹目の浮かせる動きって、必要だったのかな?」


『おそらくだが、羊を咥えるとそれだけ重さが増す。その際に、万が一にも茨に巻き込まれるのを防いでいるのだろう。』


「あー、なるほどね。」


われらも狩るか!?』


興奮気味に見上げてきたグラドに、リュクスは首を横に振る。


「狩らないよ。ベード、もう進んじゃって。」


『あ、すいません!了解です!』


ダイアウルフたちは、その場でバロメッツに食らいつくかと思ったが、南へと運び去っていく。

思わず足を止めてしまっていたベードも、再び西へと走り始めた。


道中、茨から伸びた茎に、赤黒く大きな実が生っている光景を目にする。

魔物の瞳のようにも見えるそれは、先ほど識別したバロメッツの実だった。

リュクスのソナーエリアで中に羊の赤子ができ始めているのすら感知してしまう。


「…ちょっと気味悪い。」


『どうした?ただの赤黒い実だろ?』


「そうなんだけど、あの中に羊の子供ができてるんだ。」


『ほう?そんな生態なのか。面白い。どこかで咲くまでの光景でも見れないだろうか。』


「…僕は見たくないかな。」


リュクスが嫌そうにしていたのに対し、グラドはむしろ興味が増したようで、バロメッツの実をまじまじと見つめる。

もっとも、ベードが走り抜けるので、咲くまでの過程など見られるはずもなく、代わりに再びバロメッツの羊を狩ろうとするダイアウルフ二体を感知する。


それだけならすぐに通り過ぎていただろう。

だが、バロメッツにヤドリギの気配がまとわりついていることに気が付き、今度はリュクスの指示でベードの足を止めさせた。


「ねぇ、あのバロメッツからヤドリギの気配もするんだけど、レイトはどう見える?」


うぬも感知している。まさか魔物同士が完全に共存するとは…』


『やっぱ珍しいことなのか?』


『あたりまえだ。…といいたいが、グラドはまだそういう知識はないか。』


「いや、みんなそんな知識ないでしょ。」


リュクスの突っ込みに、背後のモイザが反応した。


『私は主との旅が長いので、異様なことだとはわかります。』


『俺もわかりますよ!』


『ニもよくわかんない…』


「ネティスもこれから覚えればいいよ。というか、レイトだって初めて見るでしょ?」


『もちろんだ。さて、ダイアウルフが襲ってどうなるか。』


レイトすら興味深そうに狩りの行方を見つめる。

二匹のダイアウルフは姿勢を低くすることもなく、余裕そうにバロメッツへと近づいていく。

そのうえ、リュクスたちと違い、ダイアウルフたちはヤドリギの存在には気づいていないようで、二匹が一斉にバロメッツの羊部分へ飛び掛かった。


その瞬間、バロメッツの茎からヤドリギが伸び、ダイアウルフを絡めとる。

ヤドリギには茨の棘が混ざり、麻痺毒によってあっという間にダイアウルフの抵抗力は失われ、茨へと絡めとられていく。


「…もういくよ。あれはどうにもならない。」


『ほう?助けないのか?』


「ベードみたいに恩を売って返してくれるとは限らないからね。それに、こっちも襲われたらたまらない。」


『それもそうだな。』


『では、進み始めます!』


レイトとしては、リュクスならば助けに行くと考えていたのだが、冷静に見捨てる判断を下した。

だが、それはリュクスの冷たさゆえではない。

弱ったダイアウルフが、茨とバロメッツ、そしてヤドリギの栄養となる光景を想像してしまい、ただ一刻も早く、その場を離れたかっただけだった。

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