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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
デモナの地

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372/418

不可解な茨

球体に整えられた低木と、それに寄生するヤドリギが点在する地。

魔物か魔物でないか、リュクスたちは気配で悟ることができるうえ、動かない相手。

日を追うにつれ、木々の総数が増えていっても脅威とはならず、ベードは順調に進んでいく。


だが、レイトが耳を上げたことで、緊張感が走る。


『なんだ、この気配は。』


「何か感じ取ったの?」


『そうだが、魔物の気配、なのかこれは?』


珍しく自信なさげに首をかしげるレイトだが、リュクスは揶揄やゆすることもなく、軽くうなずいた。


「なんか変な気配があるんだね。」


『地面を這うような気配だが、動いていない。実物を見るまでは、うぬでも魔物かすらわからん。』


「そっか。ベード、まだ先だけど、一応気を付けるよ。」


『了解です!』


ベードは少し姿勢を低くしながらも、進む足が緩むことはなく、やがてリュクスのソナーエリアでも不思議な気配を捕らえる。

地面を這うように広がる、魔物とも植物ともつかない曖昧な反応。

それだけでなく、ここまで背を伸ばしていた雑草の生え方が変わり、地面に張り付くように広がり始める。


やがて、その元凶が見えてくる。

それは黒ずんだ茶色をした茨だった。

色味で言えば枯れかけの植物にも見えるが、むしろ強い生命力を感じ取れるほど、無数の棘が生えた小木が地面を這うように伸びている。

葉も花もない蔓のみだが、形状だけはリュクスが元の世界で見た薔薇園の茨によく似ていた。

西の奥からずっと伸び進んでいるようで、その全体は一切見えない。


「あれだね、気配の正体は。」


『これは…やはり魔物由来の物のようだが、魔物そのものではないようだな。』


「とりあえず、識別してみるよ。ベード、もう少し近づいてくれる?」


『了解です!』


茨にベードが接近するが、特に反応はない。

気配を消しているからか、植物だからか、確かめるためにリュクスは識別をかける。


----------

対象:蔓茨つるいばら

葉も花も生やさない蔓のみの茨

すさまじい生命力でゆっくりと侵食している

棘には麻痺毒が含まれており、生物が触れると動けなくなる

鈍った相手を茨は取り込み、糧とする

----------


「…識別したけど、魔物かどうかすらわからなかった。」


想定とは違う識別内容にリュクスは眉をひそめたが、レイトは冷静に分析を続ける。


『そうか。だが、明らかに魔物気配が混ざっている。ただの植物ではない。』


「そうだね。棘には触れないほうがいいみたい。麻痺毒があって、動けなくなった相手を茨が取り込むらしい。」


『まるでヤドリギのようだな。』


レイトがヤドリギの気配がする低木を睨みつけた。

雑草とは違い、茨が生え始めても、低木は生き生きと生えわたっている。


『茨には触れなければいいだけですよね!この程度なら避けるのは容易です!』


『…そうだな。ほとんど動いていない。おそらく飛び越えたとしても、伸びて襲ってくるようなこともないだろう。』


「確かに、そういうところは植物そのものだね。」


危険であることに変わりないが、ヤドリギと同じく避けて進めば脅威ではない。

ベードが茨を避け、軽快に進んでいくと、低木が茨に飲まれる光景を目にする。


低木特有の球体の姿はそのままに、茨がまとわりついている。

だがよく見れば、茨の隙間から覗く低木は、黒ずんだ葉を生い茂らせたままという異様な状態。

まるで侵食を受けていないかのようだ。

一瞬で通り過ぎたが、思わずリュクスは振り返って見つめていた。


「なに、あれ?」


『わからん。栄養を吸っているようには見えなかったな。まるで共存だ。』


「共存…なるほど。」


実際に共存しているかどうかはわからなかったが、リュクスもひとまず納得した。


だが、再び低木が茨に飲まれているのを見て、少し評価が変わる。

低木からヤドリギの気配を感じたのだ。


「…あれ、ヤドリギだよね?」


『そうだな。魔物すら共存しているのか。棘でも飛ばしてきそうだ。』


「怖いこと言わないでよ。」


『どちらにせよ、ベードの気配は感づかれていない。気にせず進め。』


『了解です!どんどん進みます!』


西へと進み、徐々に茨が増えてくる。

そして日が暮れ夜になる。


いつもより薄暗い夜の影響で、黒ずんだ茶色の茨は普通では視認しにくくなる。

とはいえ、リュクスはソナーエリアで感じ取れ、夜目の利くベードにとっては、リュクスからの指示もあれば避けるのはたやすい。


夜も順調に進み、日が昇り始めたのだが、いつもと雰囲気が異なっていた。

明るかった太陽まで淀むように光が薄まる。

だが、空には雲一つない。


「これも濁った魔素の影響?朝まで暗いんだけど…」


『そうだろうな。西に行くにつれて影響がひどくなってる。』


「大樹があるはず、なんだよね?」


以前見た太陽の大樹のある地は、不毛の地の黒ずんだ雑草とは違い、青々とした草原が広がっていた。

だが、今回は大樹に近づくにつれて、濁った魔素の影響は濃くなっていくことに、リュクスは不安を覚える。


『何かが起きているのは確かだろう。この茨も、その一端なのかもな。』


「そういうことね…もしかして、雑草とか低木もその影響かな?」


不毛の地だというのに植物が繁栄しすぎているこの地。

それは大樹の力ではなく、茨から感じる魔物の気配の主が影響しているのではないかと、リュクスは考えるのであった。

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