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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
デモナの地

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砂漠の乱戦

グラドとレイトに四人のデモナを任せ、リュクスはベードたちと合流する。

『どうしたのですか、主。』


「どうやら、増援がくるみたい。気を引き締めて。」


『了解です。』


背後で戦い始めた気配とは別に、南からデモナの気配が七人、すさまじい速さで近づいてくる。


「…本当に七人きてるね。仕方ない。フレウ、起きて。」


『コッ!?おぉう?また俺の出番か?』


「うん、ただ、今回はデモナとの戦闘になるだろうけどね。」


『まじか!まぁいいぜ!やってやる!』


『主!俺も戦います!』


『私も微力ながら手伝います。』


『ニも戦うよー!』


「うん、もちろん三人にもお願いするよ。」


従魔たちも改めて臨戦態勢になったところで、黒ずんだ砂が大津波のように盛り上がり近づいて来る。

そのうえには、七つの人影。どうやら、デモナが魔法で操る砂のようだ。


『あのままこちらを飲み込む気でしょうか?私の魔法で止められるか試します!』


「いや、大丈夫。僕たちの前で降りてくるみたい。」


モイザの懸念は当たらず、砂の津波はリュクスたちの前で収まり、デモナたちが下りてくる。

中央を陣取るデモナは特に特徴的で、胴体はヒュマなのだが、顔は狼。

全身の肌は真っ黒で、黄金の衣装を身にまとった姿は、エジプト神話のアヌビスを彷彿とさせる。


「まさか、我らの地にヒュマが来るとは。」


「…あなたが集落のリーダーですか?」


「いかにも。しかし、我らに話しかけるな。低俗が。」


リュクスに向けられた身の丈ほどもある奇妙な杖。

先端は獣の首を思わせるいびつな形で、下端は二股に割れている。

アヌビス像が手にしている長杖そっくりだ。


「話し合いの余地はないってことですね…ベード、モイザ、フレウ。三人にデモナ四人の相手を任せてもいい?僕はあのリーダーと戦ってくるよ。」


『もちろんです!』


『お任せください。』


『コッ!やるぜ!って、ネティスが二体一かよ!』


『がんばるよー!』


ネティスはベードから飛び出し、アヌビスデモナの横に控えたデモナ二人を睨みつけながら、元の巨大な怪獣の姿に戻った。

睨まれたデモナも、緊張気味にそれぞれ武器を構えた。


「というわけで、あなたの相手は僕が。残る方々は従魔たちが行います。問題ありますか?」


「ない。」


アヌビスデモナがリュクスと戦う雰囲気を察したのか、デモナたちはお互い距離をとる。

それぞれがリュクスの従魔たちと向き合い、黒ずんだ砂漠の地で、各々の戦いが始まった。


「サンドブラスト!」


「っ!?ディメンションウェア!」


リュクスの足元の砂地が、突如破裂する。

飛びのきつつ、防御姿勢で空間術の膜を全身に纏い、ダメージは最小限。

とはいえ、相手の魔法の発動が早い。

なにより砂を自在に操れるというのは、砂漠において圧倒的有利だ。


「ディメンションスラッシュウェーブ!」


「サンドブロック!」


リュクスが空間斬撃波を放つと同時に、アヌビスデモナは砂を宙に集め、巨大で四角いブロック状にして見せる。

鋭い斬撃波ではあったが、集まり硬くなった砂のブロックに防がれてしまう。


「空間術とは。面倒な。」


「そっちこそ、砂漠で砂魔法は卑怯でしょ。」


「黙れ。サンドブラスト!」


「それはさっき見た!ディメンションウェア!」


再び足元の砂地が破裂するが、リュクスは容易に避けつつ防ぎ切って見せる。


「そこだ!サンドストリング!」


飛びのいた隙を狙い、砂がひも状になってリュクスを襲う。


「ショートテレポート!」


それを予期していたように、リュクスは即時短い転位で避ける。


「っ!背後だと!?サンド…」


「遅いよ。ディメンションスラッシュ!」


「ぐはっ!?」


アヌビスデモナもリュクスの転移先に気が付き、振り向きつつ反撃を狙った。

しかし、素早い空間斬撃によって、深手を負う。


よろけたアヌビスデモナだが、膝をつくこともなく、杖を砂地に突き刺して態勢を保ちつつ、リュクスを睨みつけた。


「…何のつもりだ。手加減など。」


「別に、僕はあなたた達とちがって、人殺しがしたいわけじゃないからね。」


「舐めた真似を。これは殺し合いだ!サンド…」


「 スペースエリアコントロール、サンドクローズ。」


「タイダルウェーブ!」


荒い呼吸の中、アヌビスデモナはすべてを飲み込む砂の津波を起こすつもりだった。

しかし、リュクスの空間術によって、砂の魔法は封じられ、ただ静寂だけが少し流れる。


「な、何をした!?我の砂魔法が、発動しない!」


「いうわけないでしょ。」


「この、聖族風情がぁ!」


やけになったのか、血を噴き出しながら歪な杖をリュクスへと振りかぶった。

しかし、リュクスはあっけなく避け、アヌビスデモナは砂地へと倒れ伏せる。


「そんな状態で戦えるわけないでしょ。」


『おいおい、主。いくら何でも手加減しすぎじゃないか?』


「あれ、グラドはもう終わった?」


『グラドだけではない。うぬもいる。』


「まぁ、レイトは余裕だよね。」


先に戦っていたレイトとグラドが合流し、リュクスは二体に顔を向ける。

その余裕に、アヌビスデモナは怒りに震えるが、血を失いすぎたのか上手く立ち上がれずにいた。


『それで、そいつはどうするつもりだ。』


「いや、別にもう僕たちに顔を見せないでくれればそれでいいんだけど。」


「見下すな、聖族がぁ!」


『あー、もう。お前こそ見苦しいな。ブラックブレス!』


「はっ!?ぐあああぁぁぁ!」


何とか上体を起こしたアヌビスデモナだったが、グラドが吐き出した黒炎を避けることはできず、次の瞬間、その肉体は黒い灰と化して砂漠に溶けた。


『おい、グラド…』


『なんだよ?主がもう顔見せるなって言ったのに、あいつが顔を向けたんだぜ?』


『そうは言うが…』


『それに、他のデモナは潔く自害したぜ?なのに、リーダー格だけ惨めだろ?』


『確かに、その点だけは無様といわざるを得なかった。』


「大丈夫だよレイト。むしろグラドには感謝してる。…結局、自分でどうにかできなかっただろうから。」


『ほらな!』


胸を張ったグラドに対して、レイトは大きくため息を吐きつつ、主であるリュクスの様子を探る。

一見、いつもと変わらなく見えたが、どこともつかない場所に顔を向けている。

レイトはそっと定位置であるリュクスの頭上を陣取ると、肉球の手で軽くなでた。


「な、何?レイトがこんなことするなんて。」


『気にするな。それより、ベードたちも戻ってきたぞ。』


デモナとの戦いを終えたというのに、誰も怪我一つなく余裕で勝利したようだ。

ネティスもいつもの小さな姿で、ベードの首元に陣取っている。

無事従魔たち全員と合流し、リュクスも少し強張った肩を落とした。

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