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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
デモナの地

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岩盤下のアンフィスバエナ

しっかり休息日を挟み、タラスクの地へと戻ってきたリュクスたち。

転移門は使わず、ベードに乗って通常の転移で移動してきたのだが、すぐに遠くからタラスクが駆け寄ってくる気配を察知する。

もっとも鈍重すぎる走りで、ベードが進み始めれば、その気配はあっという間にリュクスの感知圏外へ遠ざかっていく。


硬い石の地面が続くが、タラスクが作っていた湖はなくなり、魔物の気配もしばらく感じ取れずにいた。


『ぬ、ようやく気配を感じ取ったぞ。』


「ようやくだね。いや、居ないほうが楽ではあるんだけど。」


『日のあるうちに魔物を感知できなければ、アンデッドの縄張りである可能性が高いぞ。』


「…確かにそうだね。違っただけ良しとしよう。それで、どんな魔物っぽい?」


アンデッド系の魔物は数が多く、しかもベードの気配を察知してくるため、厄介な存在になりがちだ。

そしてどんな地でも魔物が居ることは避けられない。


リュクスはひとまずアンデッドでないことに安堵しつつ、レイトが感知した魔物を問う。

しかし、レイトはすぐに答えず、軽く唸り始める。


『…地中に居ることは捕捉した。しかし、いまいち姿が捉えきれない。』


「え?地中にいるの?」


『うむ。今も遥か地中を進んでいるようだ。』


レイトが進む先の地面を睨みつける。

地表はタラスクの巨体が踏みしめても、びくともしなかった硬い岩盤。

リュクスたちには地中がどうなっているのかはわからないが、そんな場所でも容易に進める相手だということだ。


「ひとまず、こっちに向かってきてるわけではなさそう?」


『そうだな。だが、進路は同じようだ。このままいけば地表付近を通ることになる。』


「そんなに速くない相手ってことだね。」


『避けて進みますか?』


「いや、そのままでいいよ。それで気づかれないなら、気にせず進めるし。」


『確かにそうですね。了解です!』


一瞬速度を緩めたベードだったが、すぐにいつもの走りで進んでいく。

そして、まだリュクスが感知できていないというのに、レイトが忌々しそうに地面に足を向けた。


『向きが変わった。こちらに向かってくるぞ。』


「え?ベードの気配がばれたってこと?」


『そういうことだ。』


息をのむリュクスだったが、ソナーエリアの範囲に、地中から迫る魔物の気配を感じ取る。

今までの魔物は大体姿かたちを捕らえられていたが、レイトの言う通り、この魔物はいまいち全体像がつかみ取れない。


『…また俺の気配が見切られる相手かよ。足音は鳴らしてないぞ。』


『ベードの口調が戻ってるよー!』


『くさる気持ちはわかるが落ち着け。お前が完璧に音を立てずに走っていることは、気配の消し方を教えたうぬが一番わかっている。何か別の感知方法があるのだろう。』


ネティスに指摘され、レイトになだめられ、ベードは怒りの形相からしょぼくれたように項垂れる。


『…はい。わかっています。とはいえ、悔しいです。』


「ここはレイトも知らなかったような魔物であふれる場所なんだから、ある程度しょうがないよ。それよりも、正面に出てこようとしてるから、一回止まって。対応するよ。」


『了解です、主。』


ベードが足を止めると同時に、魔物が地中から飛び出してくる。

まっすぐ進んでいたら、巻き込まれていただろう。


地中から伸びた体は、大狼のベードと同じくらい太く、なおかつベードを飲み込めそうなほどに長い。

顔は大きく、角こそないものの、蛇というよりもドラゴンを思わせる形相。

口元は先端に向け尖るが、今はリュクスたちを威嚇するように大きく開いていた。

胴体には非常に小さな手。だが、爪は長く、まるでモグラを思わせる。


見た目も不可思議だが、何より異様なのは、鱗が生物らしくない鉛色をしていることだ。

質感もまるで人工物のようで、生物かと疑うが、リュクスたちを睨みつける小さな瞳は、魔物らしく赤黒い。


----------

対象:サブテラーアンフィスバエナ

蛇でもドラゴンでもモグラでもない地中に住む魔物

硬い岩盤の中すら容易に進む

頭以外は常に地中に気配を混ぜ、他の生物をだます

地表のわずかな変化すら拾い、地中より飛び出て獲物を狙う

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識別をかけたが、今までの魔物よりも内容が少なく、リュクスは渋い顔を見せた。


「識別したけど、あんまり情報は得られなかったよ。とりあえず、硬い地中を進めるみたいだから、下は全部硬い岩ってことだと思う。」


『こちらを察知した原因は何かつかめたか?』


「一応、地表のわずかな変化も拾えるらしいけど、それしかわからなかった。それと、地中に気配を混ぜることで相手をだますみたい。」


『なるほど、それでうぬの探知が効きづらいのか。しかもお前の識別内容も少ない相手となれば、用心したほうがよさそうだな。』


レイトも威嚇を続けるアンフィスバエナを強く睨みつける。

向こうが手を出してこないのは、リュクスたちが気配を察知し、奇襲となるはずだった初撃をかわしたからだろう。

そんな風に考えていたリュクスだが、地中からこちらに迫る気配を感じ取る。


「ベード!下からなんか来る!」


『了解です!』


素早く飛びのいたベードの下から、まるでもう一体のアンフィスバエナが現れたかのように見えた。

だが、感知の中の魔物の気配は一つだけ。

そしてよく感じ取れば、もう一つ出てきたアンフィスバエナの頭は、すでに地表に出ていたアンフィスバエナと繋がっていることに気づく。


「こいつ!尻尾も頭ってこと!?」


『お前の感知でもすぐに気づけなかったのか。』


「うん、こいつ、かなり厄介だね。」


悔しげにシャーと鳴くアンフィスバエナに、改めてリュクスたちは戦闘態勢をとる。


『そうは言うが、ペリュトンよりはましそうに見えるぞ!吾が出てもいいか!』


「うーん、まぁ気を付けてね。」


『わかっている!』


戦いとなればやはりグラドは前に出たがる。

リュクスが了承すればすぐに飛び出し、アンフィスバエナの前で翼をはためかせ、宙に陣取る。


『お前の相手はわれだ!』


「シャー!」


再び嘶くアンフィスバエナ。

ただの威嚇だからか、はたまた未知の魔物だからか、リュクスの翻訳では言葉の意味まで分からない。


『まずはこれだ!ブラックブレス!』


グラドの黒炎が放たれるが、アンフィスバエナは素早く地中へ身を引く。

顔を出していたはずの地表はすぐに平に戻り、硬い地盤はグラドの黒炎を弾く。


『ぐっ、どこ行った!?』


「グラド!こっち来てるみたい!対処しちゃうよ!」


『ちっ!しょうがない!任せたぞ!』


地中を通り、宙のグラドを無視して、ベードを狙うアンフィスバエナ。

グラドが戻ってくるうちには、飛び出してくるだろう。


「とはいえ、どう対処するか…」


『主、私の岩で進路をふさいでみてもいいですか?』


「良いよ!やってみて!」


モイザの提案に、リュクスは幽霊鳥を岩でふさいだことを思い出して了承する。


『では、ストーンフィールド、アングランウンド。』


モイザが前足を動かすと、地中の岩とは別に、魔法で生み出された石の大地が作り出される。

しかし、アンフィスバエナは正面にできた障害物であるそれを、容易くえぐり突破した。


『駄目です!抜けられました!』


『魔法の石すら容易にえぐるか。』


「でも、出てくる場所はわかってるから大丈夫!ベードは飛び出てくるとこを避けてね!ディメンジョンスラッシュウェーブ!」


案の定、まっすぐベードを狙いアンフィスバエナの頭が出てくる。

飛びのき、無防備になったところを狙い、リュクスの空間斬撃波が襲い、あっけなく切り裂かれる。


『まだだ!もう一つ頭が来るぞ!』


「あれ一発で死んでないの!?」


ベードの飛びのいた先を狙い、もう一方の頭が地中より襲い掛かる。


『ぐっ!避けれませんし、後ろ足方向です!』


『任せてー!アイシクルランス!』


ネティスの放った氷の槍先が、アンフィスバエナが大きく開いた口に刺さる。

アンフィスバエナが空気の抜けるような断末魔をあげたかと思うと、次の瞬間、まるで水風船が割れるかのように弾けた。

魔物特有の紫の鮮血が飛び散り、ベードの足元をもわずかに汚ごす。

そしてなにより、素材一つも残さず死んだアンフィスバエナに、リュクスは肩を落とした。


「せっかく倒したのに、なんも収穫なしなんて…ベード、足は大丈夫?」


『はい。血がかかっただけです。』


『すぐ洗い流すよー!』


ネティスが魔法で水を出し、すぐに血を洗い流す。

もふもふの足が濡れて、少ししぼんでしまったが、血が残るよりはよかっただろう。


『悪いなネティス。』


「ありがとうネティス。」


『いいよー!』


『くぅ、またわれは活躍できなかった。』


「まぁまぁ、しょうがないよ。今回も相手が悪かったってことで。」


ようやく合流したグラドがあからさまに落ち込み、リュクスが何とかなだめようとする。

だが、レイトはすでに先を見ていた。


『それよりも、どうする。このまま進めばまた襲われるのは時間の問題だぞ。』


「それならいい案があるよ。空を進んじゃおう。」


『空だと?』


「うん。目の前のグラドを襲わずに、ベードを狙ってきたでしょ?こっちのほうが大きい的ってこと以上に、たぶん空は苦手なんだと思うんだ。」


『なるほど。確かに地中の魔物は空を苦手とする傾向が強いな。』


「そ、それは知らなかったよ。」


レイトは納得したようだが、リュクスは新たに魔物の特性を知ることになった。


『ならば、フレウを起こすか。』


「うん。ぐっすり寝てるとこ悪いけどね。」


リュクスがそっとフレウの翼を突くが、なかなか起きる気配がない。

仕方なくゆすってみると、今度はフレウは飛び起きた。


『コッ!?お、おぉ?主か。俺の出番か?』


「そう!ここら辺の魔物が地中から襲ってくるやつでさ、空を飛んで進むことで避けようと思って。」


『おぉう?つまり、ベードが気配を見破られるような相手ってことだよな?大丈夫なのか?』


『大きく上空を進めば、地中からの射程はそれほどないように見えた。何かしら魔法を使えたとしても、こちらも防ぐ手段はある。』


『んま、それもそうか。んじゃ、任せろ!』


『またお前に頼らなくちゃいけないとはな。』


羽を広げ巨大化し、不死鳥の姿になったフレウに、少し小言を垂れつつもベードが飛び乗る。

リュクスは大樹の葉を確認しつつ、進む方向を指示した。


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