戦闘を避ける空の旅
アンフィスバエナの縄張りを、フレウに乗って空から進んでいくリュクス一行。
ベードと違い気配を消すことはできないため、アンフィスバエナにも当然気づかれているようだった。
もっとも、岩盤から時折顔をのぞかせ、フレウをじっと見上げる個体がいる程度。
はるか上空を襲うような技や魔法は持っていないらしく、空の旅は概ね快適だった。
「順調だね!」
『そうでもない。このままだとあいつらの縄張り内で一度降りることになる。』
「え?どういうこと?」
『フレウは三日しか飛べないのだぞ。今までの魔物の傾向からして、あいつらの縄張りを抜けれるとは思えん。』
「あー…そういうことね。」
ここまでの魔物の縄張りは、ベードの足でも三日以上かかった。
フレウの飛行速度はベードより遅く、アンフィスバエナの縄張りを超える前に限界が来るだろう。
『コッ…そればっかりは俺もどうしようもないぞ。もう少し速度は上げれなくもないけどよ。』
『やめておけ。ばてるのが早くなるだけだ。』
『言われねぇでもわかってる。』
背中の会話が聞こえていたようだが、フレウは速度を維持して飛び続ける。
回避手段として、りゅくすならば、上空のまま自宅へ転移することはできる。
問題は転移地点の設置で、しっかり地面に作らなければ、この地に戻ってこれないのだ。
旅の目的を考えれば、いずれ降りて対処するしかない。
しばらくして日が暮れ始めると、リュクスのソナーエリア範囲からアンフィスバエナの気配が地中へ遠のいていく。
夜になるころには完全に気配が捉えられなくなっていた。
「なんか、アンフィスバエナが地中深くに潜っちゃったみたい。」
『そうだな。あれだけ離れていれば、お前の感知範囲外か。おそらくだが、眠っているようだな。』
「おー、夜は寝る魔物なんだね。今なら降りても平気かな?」
『やめておけ。フレウの気配がはるか上空だから寝ているだけだろう。』
「さすがに地表に近づいたら起こしちゃうか。」
いくら眠る魔物とはいえ、フレウほど大きな気配が近づけば、目を覚ますのは当然だ。
夜だからといって、安全に降りられるわけではない。
結局、そのまま空の旅が続く中、朝になって顔をのぞかせ始めたアンフィスバエナをフレウが見つめ、疑問を話し始める。
『そういや、あの蛇みたいなやつ、俺たちを追ってこないよな?』
「アンフィスバエナね。確かに、こっちを見てる奴はいても追いかけてこないね。」
『こちらに対する手段がないゆえだろうが、その判断ができる程度には能ある魔物ということでもある。』
「…なるほどね。」
時折会話を挟みつつ、フレウはいつもの速度で飛び続け、三日目を迎える。
どうするかとリュクスが悩む中、昼頃になってレイトが耳を立てた。
『ぬ、地質が変わっている?もしかすれば、アンフィスバエナの縄張りを超えられるかもしれんぞ。』
「ほんと?縄張りが狭いんだね…」
『多少はな。とはいえ、このペースではついても明日の朝だろう。』
「そっか…夜には降りることになるから、結局戦闘は避けれないかな?」
『待て待て!俺を舐めるんじゃねぇぞ!ずっと寝てばかりではあるが、ちゃんと魔素をためておいたんだ。明日の朝までくらいなら、何とか飛んでいられるぜ!』
「無理はしなくてもいいんだよ?」
『コッ!あんがとよ!でももう少し俺に飛ばせてくれ!』
「そこまで言うなら、頑張ってみて。」
『コッ!もちろんだぜ!』
いつものフレウなら、夜にはばてて地表へと降りていただろう。
ずっと寝てばかりに思えたが、変異した能力に慣れてきたのか、言葉通り魔素をしっかりためていたのか、少し速度は落ちたものの、夜の間も安定した飛行を見せた。
そして月が沈み、朝を迎えるころに、レイトの言っていた地質の変化をリュクスも目にする。
硬そうな岩盤地帯が、徐々に崩れていき、その先は砂地が広がっている。
そんな変化の激しい場所だからか、レイトもアンフィスバエナの気配を感じないようで、砂地方面からも魔物の気配は感じないことをリュクスへ伝える。
そんなわけで、フレウは朝までと息まいていたたが、ゆっくりと地表へ降りていく。
『コッ…正直助かったぜ。やっぱきつかったからな。』
「やっぱ無理してんじゃん。」
『たまにはいいだろたまには!そのおかげで、こうして安全に降りれたんだからよ。』
「まぁ、それはそうだけど。」
このあたりにアンフィスバエナがいないこと、そして夜は眠っていたこともあり、朝方でも何事もなく降りれたのだ。
リュクスも納得して、それ以上はフレウに追求しなかった。
『んじゃ、俺もねみぃから、あとはベードに任せるぜ。』
『もちろんだ。任せておけ。』
地表につくとフレウはすぐに元の大きさに戻り、ベードの頭上に陣取りあっという間に寝息を立て始める。
改めて、これから走ろうと気合を入れたベードだったが、リュクスが待ったをかけた。
「待ってベード。フレウからバトンタッチしたところ悪いんだけど、ここに魔物が来ないなら、今のうちに一回帰っておきたいな。」
『…それもそうでしたね。次に休めるのがいつになるかわからないんでした。』
「そういうわけだから、いつもより少し早いけど、自宅休憩するよ。」
『構わん、好きにしろ。』
レイトの許可も得て、リュクスは転移地点の設置を済ませ、自宅へと転移した。




