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27 雑貨屋「シエロ」

 買った武器は馬車に置かせてもらって、次はリリーの要望であった雑貨屋に向かうことにする。


「どのお店に行きたい、とかありますか?」

「あ、じつはおかあさまからオススメのお店をおしえてもらったんです。『シエロ』というおみせです」

「そうなんですね。場所は分かりますか?」

「え……あ!」


 リリーは、はっとして口に手を当てた。


「す、すみません……。どこにあるかまではきいていなくて……」


 しゅんと眉根を下げて、申し訳なさそうにする。しっかりしてるように見えて、意外と抜けた部分があるようだ。


「私が知っていますので、ご案内しますよ」


 どうしようかと思っていると、ヒューバートがそう声をかけてきた。


「良かった。じゃあ、案内お願いします」

「お、おねがいします」

「はい。ではこちらへ」


 ヒューバートについて暫く歩いていると、『雑貨屋シエロ』と書かれた看板が見えてきた。白い建物で店先には植物が置かれ、ツタが絡んでいい雰囲気を作り出している。茶色い窓枠の向こうには、雑貨が種類別に綺麗に並べてあるのも見えた。


「ここが『雑貨屋シエロ』です」

「良さそうなお店ですね。入ってみましょう」

「は、はい」


 店の中の棚や柱には木材が使われ、外と同様植物を置いたり吊るしてあるので、自然を感じられる内装になっていた。


「そういえば、リリーはここで何を見たかったんですか?」

「あ、かみかざりです。かわいいものがそろっているときいて」

「じゃあ、あっちですね」


 辺りを見回し、アクセサリーらしきものが置かれた一角を見つける。そこへ移動しながら、他に売られている品物を眺める。

 前の世界での雑貨屋と違い、ゲームならではの調合品類や、魔物を撃退する用のアイテムなんかが置かれている。


 へぇ、素材も取り扱ってるんだ……


 カウンターの奥に目を向けると、薬棚のようなものに調合で使われる素材名が書かれた紙が貼られている。名前を見る限り、よく使われるものを中心に置いているようだ。

 グレードに差異がないものなら、こういった所で仕入れた方が手間が省けていいかもしれない。 


「る、ルーナさま……。こちらのほうを見ていてかまいませんか?」


 エヴァンが立ち止まり、ポーションなどが置かれている棚を指差す。男の子二人は髪飾りに興味はないだろうし、そうしてもらった方がいいかもしれない。


「では、あとで合流しましょう」

「はい」


 二人をその場に残し、私とリリーはアクセサリー売り場まで来る。


「沢山種類がありますね」


 リボンの形をしたものから、色鮮やかな石をあしらったもの。金属に透かし彫りをされたものなどなど。思っていたより品揃えが豊富だ。

 リリーは「わあ……」と声を上げ、気になった品を一つ一つ手に取って眺めはじめた。私もそれに続くように商品を見ていく。

 いくつか眺めたところで、私は目に留まった髪飾りを持ち上げる。

 

 深紅のリボンで、結び目に大きめの石が一つ装飾されている。


「これ、リリーに似合いそうですね」


 私は隣にいるリリーにあててみる。黄みが強めのブロンド髪によく映える。


「ほんとうですか? なら、それにします」

「え、そんな。気にせず自分の好きな物ものを買ってください」

「じつは、じぶんじゃきめきれなくてこまってたんです。だからすごくたすかりました」


 少し恥ずかしそうにしながら、リリーは心底嬉しそうに笑う。


「なら、代わりに私の髪飾りをリリーが選んでもらえませんか?」

「……いいんですか?」

「はい。お願いします」

「わかりました。ルーナさまにいちばんにあうものをさがしますね」


 リリーはぐっと両手に拳を握った。何だか自分の髪飾りを探すより気合いが入っている気がする。

 暫く待っていると、リリーが髪飾りを一つ手に取り、私のもとへ戻ってくる。


「ルーナさま、こちらはどうですか? いまのかみいろもですけど、もとのかみいろにもあうとおもいます」


 リリーが持っていたのは、蝶をモチーフにした透かし彫りの飾り。所々に緑色の石が埋め込まれていて好みのデザインだ。「しつれいします」と言って、私の髪にあてて見せてくれる。


「素敵ですね。気に入りました」

「よかったです」


 リリーはほっと息をつき、


「他にも何か買いたいものがありますか?」

「いえ、きょうはこれだけでだいじょうぶです」

「では、二人に合流しましょうか」


 私達は互いが選んだ髪飾りを持ち、エヴァンとランドルフがいる棚の方へ戻った。二人はマジックポーションを見ながら、何か話をしている。


「これ、もっとのみやすいあじにならないのかよ……」

「……それはぼくもおもう」

「気持ちは分かりますけど、飲みやすくしてしまうと過剰摂取してしまう人が出るから、改良されないんだと思いますよ」


 私がそう声をかけると、二人は少し驚きながらこちらを振り返った。


「ひめ……ルーナさま、もうそちらのようじはすんだんですか?」

「ええ」


 エヴァンの問いかけに答えながら、持っていた髪飾りを見せる。


「すてきなかみかざりですね。ルーナさまによくにあいそうです」

「ありがとうございます。リリーが選んでくれたんです」

「わたしのはルーナさまがえらんでくださったんですよ」


 いいでしょう! というように、リリーが自分の髪に髪飾りをあてながら、くるりと回った。

 

「にあってるよ。ランドルフもそうおもうよね?」

「……まぁ、いいんじゃない」


 同意を求められたランドルフは、少し照れくさそうにしながら答える。どうやら女の子を褒めることに関してはエヴァンの方が上手のようだ。


「そ、それよりさっきのはなしですが、かじょうせっしゅとはどういういみですか?」


 ランドルフは恥ずかしさを隠すように、話題を戻した。


「簡単に言えば、沢山飲んでしまうってことです。それは駄目だと注意を浮けませんでしたか?」

「……いわれました。のみすぎはどくになるって」

「そうです。なので、味もそれを防ぐための措置の一つなんでしょう」

「けっきょくは、まりょくりょうをふやすためには、じみちなどりょくをするしかないんですね……」


 ランドルフは残念そうに小さく息を吐く。私と同じように、魔法を使い切ったらマジックポーションを飲んで……というのを繰り返して、魔力量を増やしたいと思ったんだろう。


「まだ実戦には出ていないんですか?」

「……いっかいだけつれていってもらいましたけど、うまくたたかえなくて……」


 他の二人にも視線を向けると、同意するように頷いた。

 それは仕方のない事なのかもしれない。精神年齢が高く、普通の子より鍛えている私でさえ、最初魔物を前にしたら怖かったんだから。


「実戦の方が魔力量は増えやすいですよ。うまく出来なくても、数をこなした方が私は良いと思います」


 私達の会話を聞いていたヒューバートが、そうアドバイスをくれる。


「そ、そうなんですね。しりませんでした……。あ、あの! ドラゴンナイトになるために、ほかにもこういったことをしていたほうがいい、ということはありますか?」

「ぼ、ぼくもききたいことが……!」


 武器屋での件もあり少し緊張がほぐれたのか、二人はわっとヒューバートに詰め寄った。何だか長くなりそうだ。


「リリーも話を聞きます?」

「いえ、わたしはせんとうめんをきたえるつもりはあまりないので、だいじょうぶです」

「なら、先に髪飾りの代金を払いに行きましょうか」

「はい」


 その間に二人の話が終わればいいな、という淡い期待をしながら私達はカウンターへと向かう。その最中リリーと雑談したり、他の商品を見ながら少し時間をつぶす。


 そして支払いを済ませ戻ると、当然ながら話は尽きていなかった。このままではお店の邪魔になると思い、半強制的に中断させ雑貨屋を出た。二人は不満の目を向けてくる。


 全く……。緊張して話しかけることすら出来ていなかったのは、誰だったか。

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