◎ 第18話 簡単な作業
【アルベルト視点】
控室に戻ったが、エリシアとルナ、顔役サンまでなにかよそよそしい。なぜだ、解せない。
「お前は……少し自覚した方がイイぞ……」
「……わかって……らっしゃらないのですね」
ナンの事だ?全くわからん。
「アルベルト様、お疲れ様でした……。
実にお見事です。あの一気にペアを成立させていく様は……その……圧巻でした……」
「はは……、ありがとうございます。
あの……、どうしたんですか?」
顔役サン、なんか怖がってません?
「……こちらが参加をお願いしたのに、こんな言い方はどうかと思いますが……、なんとも恐ろしい方にお願いしてしまったものだ……と心底震えておりますよ……」
顔役サン、それは買い被り過ぎでーー
おっと!エリシアとルナが突っ込んできた。
「そうだぞ、アルベルト!この私ですら、見ていてちょっと怖くなったくらいだ!
知らんヒトがアレ見たら絶対ヒキまくるぞ!」
「そうです、アルベルト様!
あんな得体の知れない怖さなんて初めてです!」
「……アルベルト様、あの3分の間で……あそこまでお考えに……?」
「……いや、カイン様もあのルール見せられたら、そう考えるんじゃないんですか……?」
顔役サンがちょっとよろめいて、ソファの背もたれに手をついた。
「あ、大丈夫ーー」
「……アルベルト様」
「……はい?」
「……確かにあのルールがゲーム前の待機時間に示されていれば、皆で対策を考えて、おそらく同じ結論に至っていたでしょう……」
「ほら、やっぱりーー」
「しかし……」
あ…、顔役サンがソファに沈み込んだ。
「……絶対に無理です……」
カインが、はぁ〜〜〜と格段に大きなため息をついた。
「あれを……それを3分で構築するなんて……
ぜっーーーーーーーーーたいに無理です!!」
いや、そこをそんなに力説されても……
ルナがフラッとよろめき、エリシアに支えられる。
「……エリシア様、私、アルベルト様の底知れなさをここまで目の当たりにしたのは、初めてです……」
「……まだまだ修行が足りんな、ルナ……。
コイツのイジワルな部分はな……、こういう事態の時に、モノっっ凄いスピードで発動するんだ」
「しかもゲーム中は一喜一憂する素振りも見せず……あんなに淡々と……」
「お前は執務中のコイツを知らんからな。
アルベルト、お前、ゲーム中はずっとオシゴトモードだったろう」
「ハハ……、確かにそうですね。
勝ち筋は見えていたので、粛々とそれをこなしてました」
ふたりがガクッと肩を落とした。
「……私たちがアレだけ胃を掻きむしられるような思いをしていたのに……」
「……言うなルナ、イマサラだ……」
「いや……簡単な作業ですよ」
そう言ったら、3人がまたもや大きなため息をついた。
そこに案内人サンが入ってきた。
「失礼致します。西対北のゲームが終了しましたのでお知らせします。
勝者は西。よって決勝戦は西と対戦することになりました」
「ほう……、西か」
顔役サンが、納得の表情に少し苦い成分をまぶした顔をしている。
西の代表。当然だが全く面識がない。
事前情報はいくらあってもいい。
「カイン様、相手の西の代表はどんな方ですか」
「ああ、西の打ち手ですか。彼はジンといいまして、キャリアの長い古参のギャンブラーです。
洞察力とカード捌きには定評がありますな。
相手が彼だと…少々手強いかと」
「東のギースさんは力で押すタイプでしたが、ジンさんは違うタイプですか」
「勝負どころでは押す、見限れば引く、局面に応じて柔軟に対応してくる、バランスの良い打ち手です。
そういう意味では、ギースとはだいぶ異なるタイプになります」
「なるほど…。でも、カイン様の表情から、ジンさんの強さは窺えますね」
「ええ…彼は…」
顔役サンの目に警戒色が浮かんだ。
「彼は……本物のギャンブラーです」
そこにまた案内人サンが入ってきた。
「失礼致します。ブラックジャックルール説明が配布されましたのでお持ち致しました」
みんながどよめいた。いよいよ来たか。
「拝見しましょう」




