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 ただただ暑い,肉まんになったような,蒸されている気分になるような日。夏休みといえど,高校では自主的に参加する「夏季補習」が行われていた。私は「現代文」「英語」「日本史」の文系科目を履修する予定だった。しかし,補習自体は時間割が決まっていて,空き時間ができる場合もあるのだ。私はいままさにその状況であった。二時限目からだったのだ。私は自習をするべく,ノートやらプリントやらを取り出していた。

 リュックを物色し,道具を取り出していた時,私が好きでリュックにつけていた,最近好きになったアニメのキーホルダーが目に入った。ちょっとしたお菓子の付録としてついてきたもので,艶々したミニアクリルキーホルダーだった。光を薄く反射していて,地味にお気に入りのものだった。少しそのキーホルダーを手で撫でて,私はノートに視線を向け,筆箱からシャーペンを取り出したその時だった。後ろから風を感じた。机の上のプリントも少しだけなびいた。誰かが私が座っている机の真横を通ったようだ。自然な流れで視線を上げると,目の前に四角いリュックをしょった女の子が目に入った。とは言ってもほぼ視界は四角いリュックしかないのだが。そしてその視界の中で揺れる,キーホルダーがあった。

(……あれって……私が好きなアニメのやつだ……。……え,そうだよね……うん間違いない。)

 私のリュックについているキーホルダーと同じアニメのやつだった。私はすっと立ち上がり,遠ざかっていく背中を追いかけた。

「ね!そのリュックのキーホルダーってあのアニメだよね?」

 私はそう話かけた。なんとなくいけるかもという勘があった。振り返ったその女の子は何度か廊下で見かけたことのある顔だった。とても動揺していた。私は急すぎたかと反省した。しかしそれはいらぬ心配であった。

「え,知ってるの?!うれしい。あ,私はなつきっていうの。」

 私が思う限り,喉がつぶされてしまってるような,そんな声に思えたが,しっかり聞き取れた。

「私は結都。1組の人間だよ。っていうかあなたのこと廊下で何度か見かけた気がしてたんだよね,でそのリュックのやつって……」

「……うん,わかるよね?何のキャラか。」

 こんな調子であっさり仲良くなった。私のリュックについているキーホルダーも見せ,いい感じの雰囲気だった。

「あ,私次の時間数学の補修なんすよね,行くわね。」

 名残惜しそうに言った。ほんとに名残惜しそうな顔だった。

「うん,また推しのキャラとか話そ」

 私はそう返した。その少し丸まったなつきの背中を眺めながら,こう思う。

(共通点なんて,よく見れば意外と簡単に見つかるものだな。わざわざスマホとかのよく見えない共通点でつながらなくても……よく見れば,あるんだろうな,そういうのが。)

 私はもう一度自分のリュックのキーホルダーを撫でた。変わらずつるつるな手触りだ。またこのキーホルダー買ってこようかな,そう思いながら。

 私はこの時まだ知らなかった。なつきが毎回の放課時間に,1組に遊びに来るようになることなど。全く予感していなかったのだ。

 

こんにちは,ご覧いただき誠にありがとうございます。さてさて,前回に引き続き「友だち」についてのお話ですねリュックについているキーホルダーに気づく結都,中々鋭い観察眼ですね。ちなみに,実は結都はもし違ったらどうしようかなとちょっと戸惑ってたらしいです笑。皆さんも身近なもの見てみてください,なんか既視感があるものがもしかしたらあるかもです。それでは今日も開けた視界で素敵なものたくさん見つけてください。またお会いしましょう。

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