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10文字で開く無限の世界

 ある日の昼下がり,教室には重い雰囲気が漂っていた。昼食前の授業だからだろうかと勝手に私は考えていた。そんな昼食前ラストの科目は「国語」で,今回の授業は「十文字ホラー」というものを作るという授業だった。私は少しわくわくしていた。得意だからだ。紙が配られてからものの五分でひとつ書き上げた。

「その手にひろがる紅は」

 気づけば血だらけになっている自分の手,というホラーである。私はなかなかいいのではと満足していた。その後も私は淡々と書き進めていた。すると咲(友達)が話しかけてきた。

「結都ちゃん,どんなの書いた?」

「じゃあ見せ合いっこするか」

 そして私と咲の紙を交換し,私は咲の書いたものを見た。結構しっかりホラーだった。咲も私の書いたものを見て感銘を受けているように見えた。紙を再び咲に返すと,私はもう一度自分が書いた文章を読み返した。ふっと言葉で傷つけられた過去の記憶が脳裏をよぎった。それを振り払うように,私は話し始めた。

「それにしても,たった十文字でこんなリアルなことが書けるってすごいよな……。でもさ,たった二文字で人を傷つけることができてしまうってところがまさに凶器だよな。……私さ,昔誰かに『死ね』って言われたことがあるんだけど,なんかそれを聞いただけで心が締めつけられるというか……。たった二文字なのに。」

 咲はうんうんと頷いた。

「……え,そんなことあったの……。ひどい……。」

 咲は何とも言えない顔をしていた。私は少し呆れた顔をしながら再び話し始めた。その声は心なしか,少し強くなっていた。

「なんかさ,もったいないよね。言葉でこんな世界を生み出せたりできるのに,それを何かを傷つけるための道具としてつかうなんてさ。言葉でしか開けない世界がきっとたくさんあると思うんだけどなぁ」

 咲はしみじみと頷いていた。

 そして再び,十文字ホラーを二人で考え始めた。相変わらず教室の重い雰囲気は変わらない。でも私は,もっと重い言葉の力を知っているから,昼食前のこの雰囲気なんか,どうってことなかった。私のお腹はしっかり減っていた。

 


ご覧いただいありがとうございます!今回はちょっと重めのお話ですね。「言葉」は本当に恐ろしいです,なんでもできますからね。にもかかわらず,言葉を発することは簡単であり,吐き出せる場所は身近にあるという。結都は言葉の恐ろしさについて知っていたようです。でもお腹は減っているという。さすがにそこには逆らえなかったみたいです。さて今回はちょっと重いお話でしたが,もしかしたら次は真逆な異世界が見られるかも?こうご期待です。

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