臓器クッキー
電車の音が遠くなっていった。制服姿の私は電車から降り,高校まで歩くのだ。空は灰色である。そんな空の下に,私はいた。いつもより荷物は多めで,久々に手提げかばんを持っていた。普段は持たないのだが。すると前の方から声がする。
「結都!おはようございますですね,帰りたいです。」
「今最寄り駅ついたとこだぞ!?全く毎朝じゃないか……。」
灰色のリュックを背負い,女の子ながらスラックスを履き,水色のリボンを付けたいつも通りの姿の四葉がいた。四葉は私と同じスラックスを履いていたという理由で仲良くなったが,実はかなり個性に溢れすぎていて,とにかく面白いことが好きな,いろんな意味で特殊な子だった。私は「よつ」と呼んでいた。一緒に無人駅の改札を出て,銀杏の形をした街灯のある道を二人は並んで歩いていく。
「よつ,元気出せ,これっ,やるよ。」
そう言って私は手提げかばんの中から一つ紙袋を取り出した。本日は2月14日。バレンタインの日だった。よく見ると周りの女子生徒たちも,見慣れないかばんやら紙袋を持ち歩いていた。きっとそういうことなのだろう。
「おー,チョコ?イエーーイ!!あざ!!」
「おお,元気になった。まぁなんとか頑張れよ。」
四葉嬉しそうである。すると四葉は歩きながら突然リュックを前側に背負った。何か取り出している。
「……何か取り出しているのか?」
私は四葉のリュックを見ながら言った。すると四葉のリュックからジッパー付きのポリ袋が出てきた。ジップロックというやつだ。しかしその中身は私が見る限り少し異様な感じだった。四葉はどこかニヤニヤしながらジッパーを開け,私の方に見せた。
「はいこれ。ハッピーーーValentine!」
ふざけた言い方でそう言った四葉をよそに,私はそのジップロックを覗き込んだ。なんとなく察してはいたが,念のため確認した。
「……。おい,これ,なんだ。」
「臓器クッキーーーーでございますよ?」
笑いを堪えているのか,終始楽しそうなのを抑えている四葉だった。私は驚くことはもうなかった。察していたし,四葉がやりそうなことだと納得していた。
「……おい!ジップロックで持ってくるとか無駄にリアルだな!!」
「いろんな臓器入っておりますよ,脳,心臓。肺。などなど。どのクッキーがよろし?2つあげます。」
そう言いながら四葉はジップロックを差し出した。私は適当に2つ取った。脳と心臓の形のクッキーが出てきた。模様が結構リアルで,クッキーは分厚く,色は普通の小麦色だった。私がクッキーを取った瞬間,四葉の顔が急に驚いた顔になった。ちょっと笑みも混ざっていた。
「ええええ!!臓器売買ですか結都さん!!??!いいんですか!??」
(始まった……。なんとなくそうだろうと思ってはいたけど。……こうなったら)
「やべっ!」
私はそう言ってっすぐにその臓器クッキーを食べ始めた。腹に詰め込んだという表現の方があっているであろう。私は四葉のノリに乗ってあげたのだ。私はそのクッキーを食べることで証拠隠滅を図るという返しを四葉にした。
「あ,おいしいこれ。」
私はクッキーの味を素直にほめていた。
「おー,脳うまいかー。」
四葉はニヤニヤしながら私の口を眺めていた。バレンタインの日に臓器をもらうというわけのわからないことをした私の口の中は,学校の門につく直前までパンパンだった。
ご覧いただきありがとうございます!ひとつ前のエピソードとは打って変わってしまいましたね,急にバレンタインの話がくるあたり,時系列がほんとに適当であることがお分かりいただけるかと思います。そして今回はまさかの「臓器クッキー」の話です。普通「なぜ臓器?!」と言いたくなるでしょう。結都はジップロックで持ってきたことに突っ込んでいましたが…(笑)。皆さんも,面白いプレゼント渡してみてください。相手の力を一瞬で抜けますよ。それではまた次の話でお会いしましょう。




