変わらぬ木
澄んだ空の下。私はベランダにいた。景色を眺めていた。景色を見ると、いつも必ず映るものがあるのだ。私が小さい時からずーっと変わらない。松の木が。
「……あの松の木、ホントに高いよな。距離が離れているはずなのにさ、何よりも目立っているんだよねぇ。」
独り言だ。でもそれぐらい、あの松の木は高い。そして昔から変わらず立ち続けているのだ。私はベランダの手すりにもたれかかった。布団を取り込んでいる途中だったからか、まだ布団がいくつか干されっぱなしになっている。ふわふわした敷布団にもたれかかって景色を眺めていた。自然って面白い。普段は見えないものが見えてくるのだ。どういうことかって?簡単だ。田んぼを見れば風の動きがわかる。匂いをかげば、雨の匂いがするときもあれば、しないときもある。なんか面白いのだ。
しかしそれにしても、あの松の木はいつまでたち続けているのだろう。一度だけ近くで見たことがあるが、とてつもなく太い幹だった覚えがある。威厳のある佇まいが忘れられない。
「……行ってみるか。」
私一階に降り、小麦を強制連行(散歩まだ行っていなかったらしい)し、松の木がある誰もいない神社まで行ってみることにした。めっちゃ遠いわけでもなく、すぐに松の木が見えてきたが、普段こんなところを散歩することはないので、ちょっと心配ではあった。小麦は普段来ない散歩コースに興奮してはしゃいでいる。地面は昨日雨が降ったからか、湿っている。
松の木のふもとまで到達した。
「……でっか。そして何にも変わりないんだ。すごい。もう10年以上は経っているはずなのに。」
小麦もどうやら目の前の松の木に圧倒されている様子だった。上を見ても、先端が見えない。これぞまさに『普遍の軌跡』だと感じた。少しだけ木に触れてみた。頑丈だ。私は突如『アメニモマケズ』と言う言葉を思い出した。その体現者は今目の前にある。
「……行くか、小麦。暗くなっちゃうし」
そう言って私はその場を後にし家に向かった。しかしもの惜しさはない。後ろを振り返ればいつでも見えるからだ。
家について、小麦の足を拭いていた時のこと。
「結都!散歩ありがとう。ところで布団は取り込んだのかしら?」
「……あっ」
忘れていた。再びベランダへ行くと、掛布団が忘れないでくれよと言わんばかりに揺れている。わたしは布団をササっと取り込んだ。松の木を背に。
こんにちは!ご覧いただきありがとうございます!今回は自然についてですね。田舎ならではの物語にしてみました。世の中に存在し得ない『普遍』なもの。その奇跡的な光景をしっかり見抜いている結都でしたね。皆さんも普段,『変わらない景色』の一つや二つはあるでしょう。しかしそれはかなり奇跡に近い話なのですよ。変わらないものに感謝しながら,今日も生きていきましょう!それではまた次回,お会いしましょう!




