不便で愛おしい人間へ
桜がきれいに咲いている。これだけ聞けば、始まりの季節だと思うだろう。しかし時は2月。どちらかと言えばまとめの時期だった。少なくとも私にとっては。私は高校に入って2年が経った。あと1年でここを発つわけだ。しかしどうだろう。私は、私として1年を過ごせたのだろうか?今までいろんな子とふざけ合っていろんなものを見て、いろんなことを感じてきた。楽しかった。
……自席に座っているとわけのわからない回想に浸ることがある。やれやれだ。
「結都っ!なーにやってんのっ!」
ひなだ。また茶化しに来たらしい。今は確かに昼放課だった。
「ちょっとぼーっとね。してた。ほら、こんなもんきたらそりゃそうなる。」
私の机の上には進路希望調査用紙が置いてあった。まぁそういう時期だろう。ひなにも心当たりがあったようだ。
「それ私ももらったよ、でも私はもうは決まってるもんねっ。美容学校に行くよ!最強の美容師目指すんだ!」
ひなの目には揺らがない意志が込められているように見えた。しかし私の目はどうだろう。相変わらず中途半端な色をしているかもしれない。私はこの進路希望調査をどうするべきか、少し考えていたところだったのだ。私にとっての理想の道って、何なのだろう。
「……さすがひなだね。理想の姿を決め切ったわけだ。しかし私はどうしたものか。今ちょうど迷ってたとこでさ。私にはひなみたいな、なりたい姿が思い浮かばないんだよ。」
あまり重くならないようなトーンで話した。ひなは私のことをよく知っている。あまり私が深く悩んでいないことも知っているのだろう
「ふーん、結都も大変そうね、でもそれ出さなきゃいけない紙だけど、どうするの?」
そう。その通りなのだ。何か書かなければ。しばらく私は紙を眺めていた。この紙はいわば「設計図」のようなもの。この先を決める組み立て図だ。そういえば、私は何かを組み立てたとき、一度は失敗して崩れることがほとんどであったかもしれない。小さい頃よく遊んでいた「ドミノ」や「ジェンガ」、「パズル」などがまさにそうだ。大体1回は倒してしまっていたな。わたしは大きく息を吸った。
「……人間って、不便だよね。理想通りにはいかないから、こういう紙を何度も提出して、何度も相談して。」
私の突拍子もない言葉にひなは困惑した顔を浮かべているが、また始まったよ、と言わんばかりにあきれてもいた。
「理想ね、まぁそんなうまく行くことなんて稀でしょう。で、結都、何が言いたいのよ?」
私はニコッと笑った。今まで私はいろんな世界を見た。かなり身近ではあったが。そのおかげだろう。不思議な考え事が浮かぶようになったのは。
「でも、不便だから、愛おしいよね」
私は穏やかな気持ちでそう話した。無論、ひなには伝わっていない。
「何言ってんだか急に。ほら、私はそんな哲学話に付き合いたくここにて来たんじゃないわよ、お菓子配りに来たってのに」
そう言った瞬間私はひなの手に握られていたグミの袋をかっさらっていった。
「さすがひな!!お、今日はいろんな味が入ってるパーティーパックのグミじゃないか!!あざ!!!!ありがたく頂くぜ!!!!」
「バッカ!!誰が全部やるって言った!?ちょっと!w」
「私がそう言ったんだ!色々諸々不便なこの私がな!!」
大騒ぎだった。でも嫌じゃない。不便な私は今日も、楽しく生きたのだ。楽しい、楽しい昼放課だった。進路希望調査はいまだ白紙であった。
ご覧いただきありがとうございます!今年ももう残すところ約3か月となりましたね。時が経つのは早いものです。そんなこのタイミングで少しキリが悪いかもしれませんが,「異世界はすぐそばに」はこれにて完結とさせていただこうと思います!!もちろんオチなどない,時系列もない,ただの一人の少女の哲学ストーリーではありましたけど。皆さんの心を少しでもアイスブレイクさせられたなら幸いです!そしてこのようなしょうもない短編集にお付き合いいただき,多くの方々に読んでいただけで感無量でした。拝読誠にありがとうございました!結都の物語は一旦ここで締めとさせていただきます。
もう一つの物語である「ミラーメトロ」の方は更新が続いていきますのでこうご期待ください!ですがみなさん,これは私のエゴのようなものなのですが,結都の哲学に終わりは存在していません。無限なのです。今回30話分の異世界を紹介してきましたが,それらを全部ひっくるめれば,素敵でなんでもありな「視点」が手に入るでしょう。異世界はその視点さえあれば,いくらでも見つけられます。さぁ,今日も素敵な一日になりますよう,心より願っております。
「異世界はすぐそばに」。ここまでの拝読,改めまして本当にありがとうございました!!またお会いしましょう!結都はいつ何時であっても,どこにでもいますよ!




