中途半端の美学
ある日の帰り道。空は珍しく雲1つない,快晴という奴だった。私は相変わらず真っ赤なボディの電車に乗り込もうとしていた。今から家まで帰るのだ。窓の外からは,ひながニヤニヤしながらスマホをこっちに向けている。ひな曰く「結都の顔はフリー素材」とのことで,毎回顔が終わっているときに限って写真を勝手に撮るのだ。かわいいタイミングで撮ってくれと毎回思う。そんなひなをよそに,電車は走り出した。私は窓際の席に座りながら,外をぼんやり眺めた。いろんな色の景色が目に入る。薄桃色の夕焼け,別の方向ではまだまだ清々しい快晴の空色,駅の券売機の青色,田んぼの緑色,葉っぱのない銀杏の木の茶色。そんな風景を見ながら,私はふと小学生の時のことが頭に浮かんだ。
(……私が小さい時,好きな色が毎日変わっていたような気がするな,ある日は赤,ある日は緑,ある日は黒……。なつかしい。)
窓から見える景色は速いけれど,どこかゆっくり横にスクロールしていく。そんな景色をただ眺めていた。そして思った。
(……私の好きな色って,何色だ……?考えたことなかった)
そんなことを考えていた時に,ひなが二日前に言っていたことを思い出した。その日は寒く,私が灰色のパーカーに黒いマフラーをつけて行った時だった。
「結都って灰色とかモノトーンな感じだよね,パーカーも今日はそうだし。ま,私もパーカー真っ黒なんですけどね(笑)」
その日,ひなは黒色のパーカーに白色のマフラーだった。狙ってもないのに,私とひなは傍からみたら,まさに「双子コーデ」のようになっていた。
(……灰色……か)
私はスマホで灰色と調べてみた。さまざまな色見本の画像を見ていた時,1つ面白い名前の色を見つけた。
(……灰青……?灰色とも見られるし,青色と言えなくもない,不思議な色だな……)
私はこんな名前の色は初めて知った。色の名前と言えば普通,「赤色」などはっきり色を表すものと,「赤褐色」「黄緑色」など,「こんな色味を含むこんな色」と言ったようなものが普通だと私は思っていた。「黄緑色」を例に言えば,「黄色がかった緑色」である。とはいえ結局この色は「緑色」であることに変わりはないわけである。しかしこの「灰青」はどうであろう。「灰色」でもあり「青色」でもある,2つの要素を持ち合わせていて,中途半端な色である。私はこの「灰青」の色見本を眺めていた。なにか感じることがあった。
(……灰青……。灰色なのか,青色なのか,どっちともいえる,中途半端な色……。でもそれって,灰色にも,青色にもなれる,すごい色じゃないか……。中途半端って,悪い意味に見られがちだけど,どっちにだってなれる,案外すごい状態なのかもしれないな。まさか,色にこんなこと教えられるなんてな……。灰青色,か。気に入った。)
私はもう小さいころのように,毎日好きな色が変わることはないだろう。なぜなら,私には自信があったからだ。好きな色を聞かれたときに,「灰青」と言える。そんなような,誰に誇ればいいのかよくわからない,不思議な自信があったのだ。電車は間もなく乗り換えをするために降りる駅へ到着する。スマホの画面にはいまだに「灰青」の色見本が表示されていた。
はい,ご覧いただきありがとうございます。さて今回は「中途半端」についてですね。あんまりいいイメージないでしょうね,この言葉には。でも結都はそうでもないことに気づけたようです。さすがです。そして
ひなとの仲の良さも示唆されていますね,マフラーが狙ってもいないのに色が対になるとは,中々ないのでは?皆さんの好きな色はなんでしょうか?大きくなるにつれて,この問いの印象は薄れていくものです。考えすぎて疲れたときなどに,少し考えてみては?色見本なんか見たりすると,視界が華やぎますよ。それではまた次の回にてお会いしましょう。よい一日を。




