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第2話 「すごくない?」


 特に変わり映えのない日々が続き、3ヶ月ほど経った頃だ。

 

「え……っ」

 

 出勤して、すぐに違和感を覚えた。

 

 Aがパソコンを立ち上げ、

 スプレッドシートを作成していた。

 

 あの、デジタル関係の知識が

 皆無に近い先輩が、だ。

 

「嘘でしょ?私にも教えてくださいよ!」

 

 私はAの肩をばしんと叩く。

 いて、と小さく呟いたあと、Aはニヤリと笑った。

 

「やだよ。教えて欲しけりゃ、ゆいさんもGeminiに聞けば?」

「え」

 

 Aから、まさかの言葉が出てきた。

 

 思わず固まっていると、

 しびれを切らしたAが、白衣のポケットからスマホを取り出し、画面を見せた。


 

 1. Googleドライブを開く

 

 2. ヘッダー(見出し)を決める


 3. セルの書式設定

 

 4. データ入力

 あとはひたすら打ち込みましょう!

 


 思わず、ポカンと口が空いた。

 前回の、ChatGPTが出演した番組を思い出す。

 

「バリ喋るやん……」

「そうそう、めっちゃ喋るんよ」

 

 Aがスマホをパソコンの横に置く。

 

「質問したら、細かく拾ってくれるから助かるよー。

 システム室のやつらに聞いても、

 教えてくれるまで数日かかるやろ?」

 

 それがさ、とAが続ける。

 

「AIなら秒で答え出してくれる!すごくない?」

「…………」

 

 ようやく私は、空いたままの口を閉じた。

 

「……私、今日……

 委託先の開発部門と連絡を取らないといけないので、

 お昼、事務所の固定電話を借りて良いですか……」

「いいよ!」

 

 機嫌良くAは答える。

 

「ええと、試薬の在庫管理を、つ く る に は 、と……」

 

 Aのスマホの画面に、滑らかに文字が出力され始める。


 

 データ確認プルダウンメニュー:

 データ > データの入力規則 を使うと良いですよ。



 ぞっとした。

 

 ……いや、違う。

 たぶん、ちょっと腹が立ったのだ。


 …………

 ……ちょっと?

 

 私は実験ノートを掴み取って、足早に研究室へ向かう。

 

 ――AIだかなんだか知らんけど。

 調子乗んなよ。


 そう思いながら。


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