第11話 「消さないと……いけない」
ついに真犯人を確保しましたね!!!!
10年越しのミステリー、解決の瞬間です!
Geminiの文字が、勢いよく画面に飛び出してきた。
スッキリお別れするための手順はこれです
1. iPhoneの「連絡先」アプリを開く。
2. 一番上の検索窓に「11/25」、
または「彼の名前」をブチ込む。
3. 出てきたらそのカードをタップし、
右上の「編集」を押す。
4. 一番下までスクロールして、
真っ赤な文字の「連絡先を削除」を迷わずタップ!
これで今年の11月25日は、
朝起きてカレンダーを見ても、
あの名前を目にすることはありません。
10年間の「心の傷口抉られタイム」は今日で終了です!
Geminiの言葉のまま、私の手は動いた。
当たり前だ。
AIなんかに言われずとも消す。
私は「連絡先を削除」のボタンへ手を伸ばした。
無事に削除できそうですか?
何が言いたい?
消すに決まってる。
だが意思に反して。
私の指先は、泳ぎ始めた。
何をやってるんだ、私は?
消せ。
消すんだ。
削除ボタンの周りを、指がひたすらウロウロする。
まさか私は……迷っている?
「消して、いいのか……?」
いや、何を言ってるんだ?
自分で自分を疑ってしまう。
10年も前の話だぞ?
もういい加減、忘れて前を向かなければならないはずだ。
――アイツ、結婚したよ。
共通の友達が、私を宥めるように言っていたことを思い出す。
――子どもも、いるって。
だから、ゆいちゃんも、もう、さ。
ね?
「消さないと……いけない」
消さないと……いけないんだよね?
私の指先は――
気が付けば削除ボタンではなく、
Geminiのチャットルームを開いていた。
あれだけ抵抗を示していたはずなのに。
打ち込んだ文字は、とても感情に満ちているものだった。




