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キッチンカーと巡る異世界グルメ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~  作者: k-ing☆孤独な王子①6/8発売
第三章

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81.料理人、嘘つきキッチンカーの店主になる

「俺たちは目立ちたくない(・・・・・・・)。だから、この話は外に漏らすなよ」

「ははぁっ!」


 念の為に口止めをしてみたが、すぐに返事がきた。

 この町での俺はキッチンカーの店主ではなく、大嘘つきになってしまった。

 ただ、ここまでやっておかないと、この場にいない人たちにも伝わるからな。


「じゃあ、俺たちは先に町に戻るぞ」

「ハッ!」


 俺はそそくさと運転席に戻っていく。

 その後ろをゼルフたちが嬉しそうに付いてくる。

 もちろんいつのまにか仲間扱いになったカエルもいる。


「なあなあ、俺たち勇者だってよ!」

『オイラは神の使徒だ』

『ところで勇者と神の使徒ってなんだ……?』


 カエルの言葉にゼルフと白玉は頷いていた。

 まさか何も知らないのに喜んでいたとは……。


「ゼルフは勇者とか神の使徒って知らないのか?」

「ああ、これでも普通の貴族とは違うからな……」


 遠い目をしているゼルフを見て、少し罪悪感を覚える。

 たしか毒を盛られるような貴族だったな……。


「ここはドワンに聞いてみるか」


 あの場にいたのは一部のドワーフしかいない。

 温泉の湯を引くために作業をしていた半分程度しかいなかっただろう。

 そこにはドワンの姿はなかったからな。


「ちゃんとシートベルトはしたか?」

「『もちろん!』」

『ゲコッ……?』


 ゼルフと白玉からはすぐに返事をしたが、カエルは戸惑っていた。

 そういえば、カエルはゼルフに抱えられたままだもんな。

 サイズ的にはそこが特等席になるだろう。

 キッチンカーを拡張して、ここが広くなるかわからないからな。

 俺はキッチンカーを走らせた。


『ゲッコオオオオオオ! すごいゲコッ!』


 初めて乗るキッチンカーにカエルは嬉しそうに飛び跳ねていた。


「これはキッチンカーという魔道具だ」

『美味しいご飯も作れるぞ!』


 先輩風を吹かせて、ゼルフと白玉がカエルに説明していた。

 まだ荷台部分を見せてないから、どんなところか知ったら驚くだろう。

 しばらくすると、洞窟の出入り口付近で、人影がちらほらと見えた。

 そこにはドワンもいた。


「大丈夫だったか?」

「ああ、どうにか助かったよ」


 外から声をかけてくるドワンに返事をする。

 ゼルフの姿を見て、他のドワーフも安心したのか肩の力を抜いた。


「そういえば、他のやつらはどこにいったんだ?」

「あー、俺たちだけ先に帰ってきたからわからない」


 どうやら他のドワーフがいないことに気づいたのだろう。

 俺たちもしばらく待っていたが、中々出てくる様子はなかったからな。

 ただ、土を掘るような音が聞こえてきたから、鉱石でも見つけたのだろう。

 カエルがいた奥までは普段は行かないようにしていたらしいし。


「なあ、ドワンちょっといいか?」


 キッチンカーを普段止めているところ置き、俺はドワンの元へ駆け寄る。


「何かあったのか?」

「ちょっと伝承の話を聞いたから気になって……」


 俺はドワンに伝承について聞くことにした。

 唯一聞けそうなドワーフと言ったら、ドワンしか思い浮かばなかった。

 それにまだ帰ってこないドワーフたちよりも先に聞いて、話を合わせられるようにしないといけないからな。

 だって、今の俺は嘘つきキッチンカーの店主だ。


「伝承……ああ、勇者と神の使徒ってやつか?」

「おお、それそれ! 少し面白そうだと思ってな」


 ドワンは顎に手を当てて、少しだけ考える素振りを見せた。


「面白そうって聞く話じゃないけど……まぁいいか。どうせこの辺りじゃ誰も真面目に信じちゃいねぇ」

「そうなのか?」

「昔話みたいなもんだ。勇者は災いを断つ者、神の使徒はそれを導く者ってな」


 伝わっている伝承は様々あるようで、魔王と呼ばれた存在が侵略してくるとか、暴走した魔物の大群が襲ってくるとか、大きな災害が起こるとからしい。

 それをどうにかするのが勇者と神の使徒ってのが、ドワーフの伝承と言っていた。

 思ったよりもよくある童話のような話だ。


「つまり勇者と神の使徒の力で平和になるってことか?」

「まあ、そんなところだな」


 災いが何かはわからないが、俺たちが勇者ではない。

 だから、伝承のようなことは起きないだろう。

 それにそんなことが起きても、嘘つきのキッチンカー店主には何もできない。

 俺はドワンに礼を伝えると、キッチンカーに戻る。


「やっぱり俺たち勇者と神の使徒だったか?」

「はぁー、そんなわけないだろ。魔王や魔物の暴走を止められると思うか?」

『オイラも無理だぞ!』

『そもそも拙者、魔王を知らないゲコッ!』


 白玉やカエルすら、何の目的があるのかもわかっていなさそう。

 ただ、話せるようになったコールダックとカエルだもんな。


「おーい、みんな手伝ってくれー!」


 しばらくすると、洞窟の奥にいたドワーフたちが戻ってきた。

 チラチラとキッチンカーにいる俺たちを見つめてくるが、残っていたドワーフたちはそれに気づいてなさそうだ。


「聖……カエルの魔物を退治したぞ!」

「おおお、まさかあいつらは勇者か!」


 あのドワーフは俺たちが勇者だと言いたいのだろうか。


「がはは、それで何を手伝って欲しいんだ?」


 俺が首を横に振ると、残っていたドワーフたちは笑っていた。


「カエルがいたところで、純度の高い魔宝石と魔鉱石が出てきたぞ!」

「なんだこれは!?」


 今まで見ていたものとは異なり、大きさや輝きが見比べなくても違う。

 本当に鉱石を掘っていたとはな……。


「俺たちも負けてられねーぞ!」


 ドワーフたちは次々と洞窟に向かっていく。

 すると、洞窟から出てきたドワーフはこっちにきて跪いた。


「勇者様、神の使徒様ぜひこの魔法石と魔鉱石を受け取ってください!」

「あっ……ああ」


 やっぱりこいつら隠す気がなさそうだ。

お読み頂き、ありがとうございます。

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