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キッチンカーと巡る異世界グルメ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~  作者: k-ing☆孤独な王子①6/8発売
第三章

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68.料理人、ボーッとする

「なあなあ、なんであいつ不機嫌なんだ?」

『ゼルフが悪いことしたからじゃないの?』


 起きてきたゼルフと白玉を俺はジーッと見つめる。

 言われて気づいたが、俺ってゼルフと仲良しだったのか……。

 まぁ、確かにいつも隣にいるし、寝ている時も隣にはいる。

 ただ、それはキッチンカーが狭いからの理由であって――。


「何かしたつもりはないぞ?」

『角煮を全部食べたぞ?』

「あー、きっとそれだな」


 まるで俺が角煮を食べられて怒っていると勘違いしていそうだな。

 むしろ怒るよりも恥ずかしさでキッチンカーにこもりたいぐらいだ。

 ゼルフは寝癖のついた髪をピョコピョコと跳ねさせ、俺に近づいてきた。

 視線に気づき髪の毛を手で押さえる。


「あー、えーっと……すまんな?」


 一応ゼルフなりに謝ろうとしているのだろう。

 だが、俺は別に怒ってなどいない。

 ただ単に恥ずかしいだけだ。


「いえ、別に怒ってない」


 俺の言葉にゼルフは首を傾げながら、白玉の元へ戻っていく。


「なぁ、やっぱりあいつ怒ってるだろ?」

『ちゃんと謝ってきた?』

「なら白玉が行ってこいよ」

『わかった!』


 白玉はペタペタと足音を鳴らして近づいてきた。


『オイラの魅力なセクシーボディを触るかい?』

「ぐふっ!?」


 自分の体をセクシーボディと認識しているのだろう。

 必死になっている姿を見て、俺は少し面白くなってきた。


「せっかくだからな」


 俺は白玉を抱きかかえると、お腹に顔を埋め込む。

 ふかふかな羽毛が顔に触れてくすぐったい。

 それでもやっぱり抱き枕として最高の品質だろう。

 ローリングしてベッドから落としてくるのは困るけどな。

 白玉を地面に下ろすと満足げな表情で、ゼルフの元へ帰っていく。


『どうだ?』

「さすが白玉だな」

『ゼルフもやってきたらいいぞ?』

「おっ……そうか!」


 ゼルフは何をするつもりだろうか。

 俺はジーッとゼルフを見つめる。

 近づいてきたゼルフは服を投げ捨てた。


「どうだ、俺の魅力的なボディを触るか?」

「……お前はアホか?」

「……へっ?」


 つい思ったことが口から出てしまった。

 本当に白玉のマネをするとは思いもしなかった。

 ただ、まじまじとゼルフの体を初めて見たが、想像以上に汚い体をしている。


「体中傷だらけなんだな……」


 腹部には一直線に走る古い斬り傷が目に入った。

 白く残ったその線のそばに押し当てられた熱が皮膚を変えたような焼け跡がある。

 傷の形も質感も違う。

 ただ、普通にケガをしたとかではなく、まともな経緯でできていないことは分かった。


「おおおい! そんなにジロジロ見るなよ!」


 自分から見せておいて、ゼルフは恥ずかしそうに服を着ると、急いで白玉の元へ戻った。


『ゼルフ、顔が真っ赤だぞ?』

「そんなことない! 俺はいつも真っ赤だ!」


 ゼルフにも羞恥心はあったようだ。

 でも俺から服を脱げと言ったわけではなく、自ら服を脱いだから関係ない。

 こんなくだらないことをしていると、ドワーフに仲良しだと気付かされたのが馬鹿らしく思えてくる。

 俺の中の仲良しって肩を組んで「ウェーイ!」ってはしゃいでいるようなやつらだ。

 俺らはそんな関係……いや、ここ最近酔っ払ったゼルフに肩を貸していたな。


「確かに仲良しみたいだな」


 俺の言葉にゼルフと白玉は首を傾げていた。


「俺たちは仲良しだぜ?」

『オイラたち仲良しだぞ?』


 どうやら仲良しだと気づいていないのは俺だけだったようだ。

 今まで親友もいなかった俺からしたら、その言葉を聞くと背中がムズムズするんだよな。


「あぁ、そうか……」


 俺の顔を見て、ゼルフと白玉は嬉しそうにニコニコしていた。

 

「それでハルトは何で怒ってるんだ?」

「いや、俺は怒ってないぞ。ボーッとしてただけだ」

「『へっ!?』」


 ゼルフと白玉は本当に怒っていると勘違いしていたのだろうか。

 どこから見ても怒っているつもりはないぞ。


「ジーッと見ながら考え事をしていただけだ」

「なんだー! もう美味しい飯を作ってくれないと思って損したぜ」

『オイラもお腹ぺこぺこでスリムになっちゃったぞ!』


 真ん丸な体をしているが、白玉にとってはあれでもスリムの方なのか。

 今までそんなに考えて見ることがなかったからな。

 良い気づきにはなった。


「そろそろキッチンカーも元に戻るから外に出ようか」

「うぉー! 今日は唐揚げ丼が食べたいな!」

『オイラはカツ丼がいいぞ!』


 朝からハイカロリーで重たい料理を食べたいようだ。

 俺は日本人らしく味噌汁だけあればいいや。


「がははは、お前たち本当に仲が良いな」

「そうみたいですね」


 ドワーフは腕を組んだまま、楽しそうに鼻を鳴らしていた。

 ずっと近くで見ていたのだろう。

 少しの間、圧力鍋について考えてくるって鍋を見に行ってたからな。


「じゃあ、お前たち行く……何してるんだ?」


 宿屋を出ようとしたら、ゼルフと白玉はなぜかモゾモゾとしていた。


「あっ……いや、なんか恥ずかしくてな」

『オイラ見られているとは思ってなかったぞ』


 どうやら俺の背中がムズムズする感じが、ゼルフと白玉にも伝わったようだ。

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