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キッチンカーと巡る異世界グルメ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~  作者: k-ing☆孤独な王子①6/8発売
第三章

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67.料理人、ベッドの上は戦いです

「ぐがっ……ぐがあああああ!」

「くそっ! ゼルフ、うるせーな」


 お酒を飲んでいる影響か普段は気にならないゼルフのいびきが大きく部屋に響く。

 チラッと白玉を見るが、特に気にしてないのかスヤスヤと眠っていた。


「お前もよく寝れ――」

『クゥエ!?』


 突然、白玉が俺にぶつかるように跳んできた。


『何が起きたんだ!?』


 さすがに大きな衝撃で白玉も目を覚ましたようだ。

 何が起きたのかわからず周囲をキョロキョロしている。

 目が合うと、俺はチラッとゼルフの方を見る。


『クゥエエエエ!』


 ゼルフの寝相の悪さに白玉は怒って、くちばしで突いていた。


「ぬぁ……あぁ……ぐおおおおお!」


 それでもゼルフは起きないようだ。

 突かれて起きないのも、中々の才能なんだろう。

 諦めた白玉は俺の方をチラチラと見ていた。


「白玉、こっちにくるか?」

『クゥエ……』


 俺がベッドの端に移動すると、白玉がこっちに転がってきた。

 再び寝られると安心したのか、白玉は溶けるように眠りにつく。

 その結果、俺の寝る場所はさらに狭くなってしまった。


「俺も寝るか……」


 外もわずかな光が差し込む程度で、まだまだ朝になったばかりだろう。

 俺も目を閉じて眠りかけた頃、勢いよく何かが当たった。


「痛っ!?」


 すぐに目を開けて確認すると、目の前にはゼルフの足があった。

 いつの間に向きを変えたのだろうか。


『クゥエ……』

「ちょ、お前たち!?」


 そのまま白玉は俺の方に寝返りをしてきた。

 ベッドの縁ギリギリで寝ていた俺は、その衝撃でベッドから落とされてしまった。


「はぁー、いい加減にしろよな……」


 寝相が悪いゼルフと白玉にベッドは占拠されていた。

 かけ布団も床に落ちているし、子どもみたいだ。

 俺はかけ布団を拾うと、ゆっくり白玉とゼルフにかける。


「ぐごぉ……がぐに……ごっ……」


 ゼルフは角煮の夢でも見ているのだろうか。

 少しムカついた俺は鼻と口を手で塞いでみる。


「……ごっ……ぐごおおおおお!」


 特に苦しそうな反応もなく、再びいびきをかいていた。

 本格的にお酒を禁止させないと、これから一緒に旅をするのも大変だろう。

 やっぱりお酒は嗜む程度が一番だ。


「はぁー、もう起きるか」


 さっきよりも日が登ってきたため、俺は起きることにした。

 一階ではすでに宿屋のドワーフが目を覚ましていた。


「早起きですね」

「ドワーフは朝が早いからな」


 テーブルの上に紙を置いて何かを書いていた。

 俺がひっそりと近づくと、どこか見知ったデザインをしたものが描かれていた。


「蒸し器ですか?」

「あぁ、他のドワーフたちと提案を出すことになったからな」


 俺のお願いを律儀に聞いてくれたようだ。

 ドワーフたちは各々俺の言った用途のものをデザインして、手当たり次第に作る予定らしい。

 ただ、例のあれは頭を抱えていた。


「爆発する鍋なんてどうやって作るんだ?」

「いやいや、爆発はさせないでくださいよ」

「おっ、そうなのか?」


 圧力鍋をどうやってデザインするか困っているようだ。

 確かにあの場では爆発しないようにって言ったが、その印象が強く残っていたのだろう。

 事前に言っていなければ、俺は爆発する鍋を受け取っていた。

 ドワーフは俺たちを殺すつもりだったのかと疑うところだった。


「ペンを借りてもいいですか?」

「ああ、いいぞ」


 俺は紙に記憶にある圧力鍋を描いていく。

 圧力鍋って密封した鍋の蓋に圧力を調整する装置がついている。

 ただ、その装置の構造までは俺にもわからない。


「ここの部分が圧力がかかると浮いて、爆発を防ぐ役割があるんだが……」

「お前さん、中々絵が上手いじゃないか」

「ありがとうございます」


 俺が描いた絵を見て驚いていた。

 ドワーフが描く絵のように設計図みたいなものは描けないけどな。


「そもそもその圧力っていうのは何なんだ?」

「あー、中から押し返す力のことを言うんだが……」


 圧力について説明を求められても中々良い答えが出てこない。


「んー、ちょうどさっきのやつがいいか」


 俺はベッドを描いて、俺、白玉、ゼルフをその上に描いていく。


「お前たち一緒に寝てたのか?」

「あっ……ああ……」


 まさかそこを突かれるとは思わず、少し恥ずかしくなってしまった。

 だって、俺以外が一緒に寝たいって言うから仕方ない。

 俺はみんなの意見を尊重しただけだ。


「仲が良いんだな。そういうのは大事にしろよ!」


 ドワーフは声を出して笑いながら、俺の肩をバシバシと叩いていた。

 小さな体なのにがっしりとした体は、伊達に鉱石を掘っている体ではない。

 俺はただ圧力の説明をするつもりだったんだけどな。


「それで圧力についてなんだけど……」

「ああ、すまない」


 すぐに話を戻すことにした。


「例えばこのベッドの境目が鍋と鍋の外だとします。それでゼルフがこっちのベッドに入ってこようとすると……」

「おう、それで?」

「俺はベッドから落ちないためにはどうすればいいんですか?」

「んっ? その例えはなんだ? 相談か?」


 考えてもらうために聞いてみたが、相談だと思われてしまった。

 現に俺は押し出されて起きているからな。


「いや、相談ではないですよ」

「がはは、そうかそうか。わしなら押し返すぞ」


 再び俺はドワーフにバシバシと肩を叩かれる。

 この人たちもやけに距離感が近いからな。

 

「その押し返す力が圧力鍋で言うと圧力です」

「ほう、押し返す力ってことか。なら密封する鍋だと中から押し返す力がずっとかかってるってことだな」


 どうやら俺が伝えたいことに気づいてもらえたようだ。

 料理以外のことになると、中々説明しづらいし、こんなこと教えるなんて学生以来だ。


「その圧力が強すぎると俺が怒って爆発するってことですね。だから逃がす道がいるんです」

「それで起きてきたのか」

「ははは、そうとも言えますね」


 俺がイライラしないようにする方法があれば、今頃はスヤスヤと眠っているだろうからな。

 それが圧力調整する装置ってことだ。

 我ながら――。


「お前さんは説明が苦手なんだな」

「くっ……」

「がはは、料理人って感じだな!」


 俺は視線を窓の外に向ける。


「ああ、外が眩しいな……」


 なぜか今日はやけに日差しが強い気がした。

 俺なりに説明したつもりが、説明下手で一緒に寝ていたことをバラしただけだった。

 だが、伝わったなら問題はないからな。

 気づいた時には外の日は完全に登り、朝になっていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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