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キッチンカーと巡る異世界グルメ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~  作者: k-ing☆孤独な王子①6/8発売
第三章

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64.料理人、酒のつまみを作る

 金属を叩く音が工房の奥から聞こえてくる。

 しばらく待っていたが、そんなにすぐ完成するはずもなく、俺はドワンの工房を後にした。


「ゼルフのやつどこに行ったんだ?」


 キッチンカーに戻ると、荷物は置いてあるのにゼルフの姿はなかった。

 ドワーフを集めるにしても、何が欲しいのか伝えてもないし、ゼルフが伝えられるはずもない。

 そういえば、宿を決めていないからゼルフが帰ってきたら宿屋の予約を頼むのを忘れたらいけないな。


「兄ちゃん、何か手伝えることはないか?」


 酒のつまみを求めてドワーフたちが戻ってきた。

 今も片手に大きな酒瓶を持っている。

 すぐにでも酒が飲みたいのだろう。


「小さなフライパンが家にあったりしないか?」

「あー、ワシは料理をしないからな……。ちょっと仲間に聞いてくる」


 ドワーフたちがフライパンを探しに行っている間に、余っている魔物の肉を全て一口サイズより大きめに切る。

 今日の夜にはキッチンカーを自動修復する予定だから、品質が悪くなるものは使った方が良いだろう。

 居酒屋メニューも考えたが、いくつも仕込みをする時間がないからな。

 どうするか迷いながら肉を焼いていく。


「豚よりは脂が少ないけど、結構出てくるな……」


 焼いて出てくる脂を拭き取りながら、焼いた肉は全てお湯の中に入れていく。

 本当は茹で終えてから、焼くほうが脂をしっかり落とせるが、時間を短縮させるには順番を変えた方が早い。

 本当は圧力鍋があると楽なんだけど……。


 下茹でを終えたら、すぐに水に酒としょうがを入れて弱火で再び煮ていく。

 何度も煮て脂を落としていくのが、この料理には必要だからな。


「兄ちゃん、持ってきたぞ!」

「わざわざありがとうございます」


 しばらくすると、ドワーフが小さなフライパンを持って帰ってきた。

 どうやら俺が欲しかったサイズのフライパンがあったようだ。


「美味しいものが食べられるなら構わんさ! 誰も持ってないから作ってみたが……どうだ?」

「作って……みた?」

「ああ、これぐらいならすぐに作れるぞ」


 ドワーフが持ってきたのは、武器用に仕入れていた鉄材から作られた無骨なスキレットだった。

 まさかこの短時間で作ってきたとは驚きだ。


「そういえば、ドワンも兄ちゃんを探していたぞ?」

「まさか寸胴鍋ができたんですか?」

「あれは寸胴鍋って言うのか」


 俺がドワンに頼んだのは寸胴鍋だ。

 パスタやうどんを茹でるにしても、普通の鍋だと何回も茹でないといけない。

 追加で買ってはいるが、寸胴鍋だけは見当たらなかった。

 キッチンカーでカレーを作った時は、すべての鍋やフライパンを使って作ったのも懐かしい。


「あとは煮るだけなので、もう少し待っててくださいね」

「酒でも飲んで気長に待ってるぞ」


 ドワーフは酒を飲みはじめて待っていた。

 これは早く作らないと、かなり待たせることになるな。

 一度肉を取り出して、串で刺すとスーッと入っていく。

 あとは醤油と砂糖を追加で入れて、煮詰めていけば完成だ。

 俺が作っていたのは、男なら絶対大好きなものだろう。


――豚の角煮


 今作っているのは豚似の角煮になるが、きっと汗水出して働くドワーフなら好きな気がする。

 それに酒のつまみとしてもいいからな。


「おーい、ドワーフを連れてきたぞー!」

『みんなやる気だぞ!』


 ゼルフと白玉が帰ってきた。

 ただ、その背後には魔石や鉱石、魔宝石を集めたドワーフより人数が多い。


「ひょっとしてお前――」

「町にいるドワーフ全員に声をかけたぞ!」

『オイラもこのふわふわボディで頑張ったぞ!』


 まさか調理器具を作るために、ドワーフ全員に声をかけたことに驚いた。

 本当に毒で殺されそうになっていた男と同一人物だろうか。


「兄ちゃんが楽しいことを紹介してくれるって言ってたからさ!」

「年老いてもまだまだ手先は器用じゃぞ!」


 集まったドワーフの中には年老いた人もいた。

 ゼルフのコミュニケーション能力が高かったことに驚かされる。

 ドワーフは無愛想な相手でも、楽しいことがあると聞いたら特に気にしないのだろうか。

 まぁ、最近のゼルフは自然と笑っていることが多いからな。

 ただ、こんなにドワーフを連れてきたら問題が増える。


「もっと品数多く準備しないといけないだろうが!」

『今日は食べ放題ってやつか!?』

「食べ放題だと!?」


 ゼルフと白玉は特に何も考えていないのだろう。

 これだけ人が集まったらキッチンカーの宣伝に適した環境はない。

 今日は角煮とマッシュポテトのチーズ付けを作ろうと思ったが、品数を増やさないといけないようだ。


「お前ら、手伝えよ!」

「任せろ!」

『オイラもやるー!』


 なんやかんやで俺は嬉しそうにする二人の姿を見て、文句は言えなかった。

 ドワーフを集めたのも善意だからな。

 俺は全部の材料を取り出して、全て使い切ることにした。

お読み頂き、ありがとうございます。

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