63.料理人、町の名産品を探す
鉱山の街では何が食べられているのか市場調査をしながら歩いていく。
「酒や武器・防具などの金属製品が多いな」
「ドワーフは酒と鍛治が得意な種族だから、そういうものが自然と多いんだろう」
ドワーフが多い街だからか、至る所にお酒が売っている。
野菜が売ってる横に酒。
パンが売ってる横に酒。
武器が売ってる横に酒。
どこを見ても酒に溢れていた。
小さな子どもがあまりいないから、問題にならないのだろう。
子どもがいてもドワーフとそこまで大きさが変わらないから、顔を見ない限りは気づかないだろう。
「そういえば、温泉はどこにあるんだ?」
「温泉……あー湧き出る湯のことか。それなら鉱山の奥にあるぞ」
硫黄の匂いがするから近くにあるかと思ったが、鉱山の奥にあるのが当たり前らしい。
気軽に温泉にでも入ってリラックスしようとしたが、滅多に入れないようだ。
丈夫になったキッチンカーなら、鉱山の奥まで入ってもいいかもしれないな。
まぁ、キッチンカーが入れるスペースがあればの話なんだけど。
「基本的には目立った食材はなしと……」
「本当に酒ばかりだな」
よく見るのはジビエを含めた様々な肉と乳製品。
それと根菜類が多かった。
どれもがすぐに栄養補給しやすいものや保存しやすいものが中心なんだろう。
チーズやバターなどの乳製品は保存しやすいし、根菜類も土がついたまま保存できる。
きっと鉱山地帯が関係しているのだろう。
鉱山って洞窟の奥まで入っていくと、簡単に外まで出てこられない。
その時のために保存しやすい食べ物が必要となる。
他の町には小麦を使ったパンや飲食店が多いのに、ここではあまりそういうのは見かけない。
その町に住む人たちに合わせて、町はできているのだろう。
それにドワーフはあの感じだと食より酒だったしな。
「とりあえず、酒類を中心に買っていくか」
『オイラには楽しめないね』
ペタペタと音を鳴らしながら、少し残念そうに白玉は歩いていた。
「明日には米も復活しているからな。それまでの我慢だな」
「『米!』」
魔宝石の効果もあり、夜の営業を終えたらキッチンカーは自動修復できる。
米がなければゼルフと白玉は生きていけないからな。
それぐらいいつの間にか米好きになっていた。
まるで日本に移住してきた外国人みたいだ。
たまに米が好きすぎて自国に帰れないって人もいるもんな。
「調理器具とかってドワーフに頼んだら作ってくれるか? 鍛冶ってやっぱり剣しか作れないのか?」
金属製品はよく見かけたが、調理器具は見つからなかった。
俺は調理器具も買い揃えたかった。
キッチンカーの中には基本的な調理器具しかないし、ドワーフが作った調理器具なら品質は良さそうだしな。
「あいつらは手先が器用だから、頼んだら作ってくれるかもしれないぞ」
ドワーフは手先が器用な職人気質の人ってイメージがあったけど、その認識で間違いないようだ。
武器や防具だけではなく、アクセサリー類を得意とするドワーフもいるらしい。
「じゃあ、ついでに鍛冶工房によって作れそうなドワーフを探すか」
俺たちは近くの鍛冶工房に寄ってみることにした。
――トントントン!
「すみませんー!」
勝手に中に入るのは悪いと思い、扉を叩くが反応がない。
やっぱり鍛冶をしていると聞こえにくいのだろうか。
――トントントン!
「すみま――」
「うるさいぞ! 聞こえて……あー、ハルトだったか?」
「あっ、二日酔いのドワーフ……」
扉を開けて出てきたのは二日酔いをしていた若手のドワーフだ。
さっきよりは顔が穏やかになっているから、少し落ち着いてきたのだろう。
「ワッシはドワンだ」
「ハルトです。よろしくお願いします」
名前はドワンって言うらしい。
自己紹介もする機会がなかったしな。
「それで何かあったのか?」
「調理器具を作ってくれそうなドワーフを探していて」
「調理器具……?」
俺は簡単に作って欲しいものを伝えた。
基本的に今欲しいのは大きな鍋やフライパンを中心としたものだ。
カレーを作っていた時も、鍋とフライパンを総動員したからね。
それも大きな煮込み鍋があったら、大量に作れるからな。
あとはできれば解体に使える大きめな肉包丁や刃こぼれしない包丁もあると嬉しい。
魔物を解体するたびに包丁が悪くなって、自動修復するまで待っていたからな。
ゼルフは剣で解体すればいいと言っていたが、さすがに命綱でもある剣をそんなものに使うわけにはいかなかった。
「それぐらいなら作ってやるぞ。あのうどんも美味しかったからな……」
ドワーフはチラチラと俺の顔を見てくる。
きっとまたうどんを食べさせてくれってことだろう。
「美味しいうどんを食べるには、やっぱり良い調理器具がないといけないからなー」
「今すぐに作ってくる」
そう言ってドワーフはすぐに工房に戻って行った。
工房の中には様々な武器や防具、アクセサリーなどが置いてあった。
どこか形が歪なのも若手のドワーフって感じがする。
「美味しい飯が食べられるなら、良い調理器具が必要なのか……」
『オイラたちもドワーフを探しに行かないとダメだね!』
「まずは何が得意か聞き込みから始めるか」
『ゼルフ隊長! オイラも付いていくっす!』
なぜかゼルフと白玉も美味しいものが食べられるならと、ドワーフ探しに熱が入っていた。
「今すぐ探してくる!」
「あっ、それなら荷物も頼む!」
俺はゼルフに荷物をキッチンカーに持っていくように頼むと、走ってどこかに行ってしまった。
すぐに人と関われるアイツなら、簡単に探してこれそうだな。
それだけ食に対して貪欲なんだろう。
さすが食いしん坊って感じだ。
ただ――。
「何の調理器具が必要か言ってないけど大丈夫か?」
俺が欲しいものを伝えてないけど大丈夫なんだろうか。
すぐに動けるのはゼルフの良さだけど、俺は少しだけ心配になった。
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