62.料理人、キッチンカーが進化する
魔宝石が時間短縮になることがわかったが、魔鉱石はどうなったのだろう。
何かあるのかと思いモニターをとにかく触ってみたが、何も手がかりとなるものは見つからなかった。
「ぬああああ! 魔鉱石はどこにいったんだ!」
謎に消えた魔鉱石。
何か悪いことに作用しなければいいんだけどな。
「なぁ、ハルト……あれは俺たちも食べていいのか?」
「豚丼か? ちゃんと作ってあるぞ!」
「うっし!」
ドワーフのために作った豚丼だが、ゼルフたちの分も用意してある。
あいつらの分がなかったら、ずっと文句を言われそうだからな。
俺は荷台部分に戻り、豚丼を盛っては受け渡し口に出していく。
「ほら、お前たちちゃんと並べよ!」
『そうだ! 感謝してハルトの飯を食べるんだぞ!』
なぜかゼルフと白玉が威張っているが、気にしないでおこう。
ドワーフたちも特に気にしていなさそうだしな。
みんなに行き渡ったのを確認すると、ゼルフと白玉にも渡す。
「豚丼! 豚丼!」
『楽しみだー!』
ドワーフに紛れてゼルフと白玉も豚丼を美味しそうに食べていた。
あいつらに人見知りってないのだろうか。
俺はまた運転席に戻り、魔鉱石がどこに使われているのか探す。
「んー、やっぱりどこにも変化がないんだよな」
【ステータス】
キッチンカー Lv.6 ポイント:3
ナビゲーション 2
自動修復 3
キッチンカー拡張 3
調理器具拡張
電力拡張ユニット 2
冷蔵/冷凍拡張ユニット
給水タンク拡張 2
排泄拡張 2
ディスプレイ 1
◇次のレベルアップ条件:1日売上 300,000円到達
調理器具拡張以外を一つずつ押していくが、出てくるのは時間短縮のために、魔宝石を使用するかの確認のみ。
「うめえええ! これ酒と飲んだら最高じゃないか?」
「おい、今すぐに酒を持ってこい!」
ドワーフたちの声が運転席まで聞こえてくる。
どうやら豚丼も気に入ってもらえたようだ。
ただ、今酒を持ってこいと聞こえた気がする。
これから夕飯時に合わせて、酒とつまみの準備をするつもりだが、今から飲むってことはもう仕事をしないのだろうか。
「お前たち、酒はもう少し暗くなってから――」
俺は運転席の扉を開けた。
「うわっ!?」
――ドンッ!
扉が何かに当たってしまったようだ。
すぐに確認すると、隣でツルハシを持ったドワーフが倒れていた。
「おい、大丈夫か!?」
「ああ、いきなり開いてびっくりしただけだからな」
明らかにぶつかった感触があったが、びっくりしただけってドワーフは頑丈な体をしているんだな。
ケガをしていないか確認するが、特に痛めたところはないようだ。
「それよりも魔導具を傷つけたんだじゃないか? ツルハシが当たったぞ」
「あー、それなら直せば……って傷がない?」
さっきの衝撃音はドワーフがぶつかったのではなく、ツルハシが当たって出た音らしい。
ただ、どこを見てもツルハシによってできた傷はない。
結構重めにできているツルハシなら、凹み傷やツルハシを擦った跡があると思ったんだけどな。
「やっぱり魔導具は丈夫なんだな」
「そうなのか……?」
今までキッチンカーで魔物に突撃したことはあったが、その度にすぐに傷はできていた。
単に当たりどころが良かったのだろうか。
「あっ、酒を飲むのはもう少し後にしてもらってもいいか? キッチンカーでつまみの販売をしたいからさ!」
俺の言葉を聞いたドワーフたちはお互いに顔を見合わせていた。
昨日つまみを出した時の反応は良かったからな。
どうするか考えているのだろう。
「久しぶりに酒を遅く飲むのもいいかもな。なら町に戻って鍛治でもしてるぞ」
「わしらはもう少し鉱石採取に行ってくる」
町に戻るドワーフもいれば、再び鉱石の採取に行くドワーフと、とりあえずは準備する時間はもらえたようだ。
どうやら昼過ぎには酒を飲むのが当たり前らしい。
酒を飲みながら仕事をしているやつもいると言っていた。
もはやアルコールは栄養ドリンクと同じ扱いなんだろう。
「ハルト、材料はあるのか?」
「足りないものも多いから、買い出しに行く前にタンクを確認してくる」
俺は再び運転席に戻って、モニターから給水タンクの量を確認する。
「水がないと何も……ってこれはなんだ?」
【スキルツリー】
魔鉱装甲MAX
├─ 重装化
├─ 武装化
├─ 呪装化
└─ 属性化
見たこともないものがモニターに表示されていた。
キッチンカーのボディーにツルハシが当たったことで、見れるようになったのだろうか。
「まるで戦車……いや、戦うキッチンカーにでもなるのか?」
モニターに触れてみたが、どういう仕組みになっているのかわからなかった。
ただ、名前からして魔鉱石がここに使われているのは確かだ。
ひょっとしたら何か条件があると、変化していくのかもしれない。
魔鉱装甲ってのがボディーへの衝撃を吸収したのだろう。
俺が知らないうちにどんどんキッチンカーが別の何かに変わっているような気がした。
まるで本当に生きているみたいだな。
『買い物! 買い物!』
「ハルト、どうしたんだ?」
俺が運転席から出てこないのを気にして、ゼルフと白玉がやってきた。
「あっ、いや何もないぞ。よし、行こうか!」
この町にきて初めての買い物になる。
特産品は何があるのだろうか。
キッチンカーの材料探しに俺は胸を躍らせた。
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