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キッチンカーと巡る異世界グルメ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~  作者: k-ing☆5シリーズ書籍発売中
第三章

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56.料理人、ドワーフ危険なやつら

 異世界にきてやってはいけないことを一つ学んだ。


「うぉー! すげーな! もう一回だ!」

「いや、次は俺が乗る番だろ!」

「いやいや、お前は二回乗っているじゃないか!」


 それは気軽にキッチンカーに乗ってみますかと声をかけることだ。

 次から次へとドワーフが交代してキッチンカーに乗り込んでくる。

 クルクルと5分くらい走っているだけなのに、時計を見るとすでに二時間近く時間が経っていた。

 その間にゼルフと白玉は町の中に入って行ったのに、俺だけ町の中に入れずに運転席にいる。

 まるで遊園地にある体験アトラクションの運転手の気分だ。


「今日はもう終わりに――」

「「「あともう少しだ!」」」

「はぁーい」


 もうため息混じりの返事しか出ない。

 ドワーフは鉱山地帯に好んでいる人ほど、鉄や金属が好きな人種らしい。

 それもあってなのか魔導具と聞いたキッチンカーに興味津々だ。

 ドワーフたちも魔導具として聞き入れているから、キッチンカーが魔導具になったということで間違いないのだろう。

 正直、ゼルフに言われただけだと信じられなかったからね。


「この魔導具はどういう仕組みなんだ……」

「馬車とは作りが違うから全くわからないな」

「そもそも動力がどうやって伝わっているのか複雑すぎるぞ」

「中から見ても魔法陣が何一つ描かれていない……」


 初めはワイワイと喜んでいたのに、二回目からはずっとぶつぶつと呟いているから正直居づらい。

 俺が会話の中に入れるような話でもないからな。


「魔石で動くにしても効率が良すぎる」

「魔鉱石を使っているのか……」

「「どうなんだ?」」

「さっ……さぁー?」


 俺に問い詰められても車の構造は良くわからない。

 むしろキッチンカーって車よりも調理ができる環境が付いているのが魅力だからな。


――プスッ……ドゥル……ドドド!


 あまり聞いたことのない音が聞こえ、すぐにメーターを確認するとガソリンが底をつきそうだ。

 向きを変えて町の方に向かっていく。


「そろそろ燃料切れになります」

「そうか……」


 やっとこれで解放されそうだ。


「ならまた今度乗せてくれないか?」

「明日はどうだ?」

「魔石ならいくらでも用意するからな! それよりも今から熱く語り合おうじゃない!」


 二人のドワーフは楽しそうに問い詰めてくる。

 ただ、俺は返事することもなく、町の入り口でキッチンカーを止める。

 勝手に約束をして面倒なことに巻き込まれるのも嫌だからな。

 町の中に入ると、俺を見捨てたゼルフと白玉がいた。


「お前ら……晩飯抜きだからな」

「なっ!? 俺は何もやってないだろ!」

『オイラもだぞ!』

「せめてドワーフが熱血なやつらだって教えてくれよ!」

「『……』」


 ゼルフと白玉は黙ってそっぽ向いていた。

 絶対知ってて何も言わなかったのだろう。

 まぁ、俺から乗ってみるか聞いたのが悪い。

 だけど熱血にも限度があるからな。

 ここまで暑苦しいやつなんて身近にいなかったから、対処の仕方がわからない。


「おい、兄ちゃんいくぞ!」

「兄ちゃんは酒好きか?」

「いや……」

「「好きそうだな!」」


 俺はドワーフたちに引っ張って連れて行かれる。

 小さな体にどれだけそんな力があるのだろうか。


「おい、みんなで歓迎会するぞ!」

「酒を持ってこーい!」


 ドワーフの声が町全体に広がり、たくさんのドワーフたちが集まってきた。

 気づいた時には広い部屋に押し込められて、ドワーフたちは持ってきた酒を片手に飲み会が始まった。

 まるで学生の飲み会を間近で見ている……いや、巻き込まれているような感覚だ。


「兄ちゃんは鍛治好きか?」

「いや、鍛治よりも魔導具だろ?」

「たしかにあのキッチンカーってやつを見ていたら、魔導具好きなのは確かだな」

「すごい高かっただろ?」

「あれだけの魔導具なら一億ルピは硬いな」

「それでも安い方じゃないか?」

「あぁ、あれなら国が欲しがる代物だからな……」


 この世界でのキッチンカーが想像よりも凄いものだと改めて認識した。

 一億ルピって日本円にしたら一億円だぞ。

 それなのに、安くても一億円って……。


「兄ちゃん、顔が真っ青だぞ?」

「酒が足りないじゃないのか?」

「早く飲め飲め!」


 気づいた頃には手に酒を待たされて、口の中に押し込まれる。


「ゴホッ! ゴホッ!」


 アルコール消毒を飲んでいるような感覚で思わず咳き込んでしまった。

 飲んだ瞬間全身が熱くなり、顔が真っ赤になってきているのかすぐにわかる。


「ははは、兄ちゃんも酒は好きそうだな!」

「口に入れられるぐらいだからな!」


 いやいや、勝手に入れたのはお前たちだからな。

 大きな声で笑っているドワーフにイライラするが、どこか頭がボーッとしてそれどころじゃない。


「おい、兄ちゃん大丈夫か?」

「さすがに火酒(ファイアブランデー)はまずかったか?」

「度胸試しには火酒だからな」


 ドワーフたちはニヤニヤしながら、俺に飲ました酒を一気に流すように飲む。


「「くあああああ!」」


 平気な顔して飲むドワーフはきっとアルコール中毒の集団のようだ。

 香りは甘いのに喉が焼けるように熱く、まるで火を吹き出しそうだからな。

 高アルコールのラム酒って言われたらわかりやすいだろう。


鉱酒(ストーンスピリッツ)はどうだ?」


 違うドワーフが別の酒を持ってきた。

 鼻先に近づけると、どことなく煙や土ぽい匂いがする。


「ウイスキーなのか?」


 見た目も琥珀色でどこかスモーキーなウイスキーに近い。

 これなら飲みやすそうだが、さすがに俺はこのままでは無理だな。


「ちょっと水割りさせてくれ」


 俺はふらふらしながらも近くにあった厨房に立ち寄る。

 ウイスキーの水割りなら俺でも飲めるだろう。

 水で割っていくと、鮮やかな薄めの琥珀色に変化していく。

 この世界にきて初めてお酒を飲むが、これで美味しい料理でもあれば――。


「ドワーフって何も食べないのか?」

「酒を飲む時に食べるやつなんていないぞ?」

「ガハハハ! むしろ飯より酒だからな!」

「「「カンパーイ!」」」


 嬉しそうにガバガバと酒を飲むドワーフたち。

 さすがにつまみが無ければ、俺の胃が荒れてしまいそうだ。


「ちょっと材料を取りに行ってくる……」


 俺は一度キッチンカーに材料を取りに行くことにした。

 そういえば、ゼルフと白玉はどこにいるのだろうか……。

お読み頂き、ありがとうございます。

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