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キッチンカーと巡る異世界グルメ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~  作者: k-ing☆5シリーズ書籍発売中
第三章

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55/61

55.料理人、新しい町は温泉街?

お待たせしました。

ストックが増えたので連載開始します| |д・)

「この辺の道ってガタガタしているな」

『クゥエエエエ……クゥエ……エエエ……』


 キッチンカーは小刻みに揺れる。

 シートベルトを付けていても、サイズが合わない白玉はずっと揺れていた。


「鉱山地帯だから道は広いけど、さすがにお尻が痛いな」


 道は鉱石を運ぶために広く確保されているが、砕けた石が混ざった固い地面や柔らかい地面が混在しているためか、どうしても振動を避けては通れない。

 あまりにもガタガタしていたら、直接振動はお尻に伝わってしまう。

 座席が広くなっても、高級な椅子になったわけではないからな。

 こういう時は別のことを考える方が良さそうだ。


「次の町で何か有名な食べ物はあるか?」

「あー、鉱山だから何もないぞ?」


 うん、向かう場所を間違えたようだ。

 確かに鉱山地帯だから、あるのは鉱山だけだよな。

 今回は特に長居することもなく、魔石を集めて終わるだろう。

 魔石も鉱山の中に出てくる魔物を狩るだけのため、そこまで時間を要することはないらしい。


「せめて楽しいことがあればいいんだけどな……」

「あっ、でも湯なら湧き出てくるぞ?」

「湯が湧き出る……温泉か!」


 鉱山ってことは地下を掘っている時に、地下水脈を見つけたのだろう。

 どことなく硫黄の匂いがしていたのは、そのせいなのかとワクワクしてきた。


「そんなに嬉しいのか?」

「温泉はみんな好きだろ? あまり行ったことないから楽しみだ」


 働いてばかりで旅行に行った記憶もない。

 休みの日はまた仕事のために寝ていたし、外に出て人と会うのも億劫だったからな。

 久しぶりにリラックスできるかと思ったら、キッチンカーのスピードは自然と速くなる。


「うぉっ、おおおおお……」

『クゥエ……エエエ……』

 

 いや、キッチンカーが自然と速くなることはないか。

 俺がアクセル全開で走っているからな。

 ゼルフと白玉はキッチンカーの振動で上下に揺れていた。

 

 しばらくキッチンカーを走らせると町が見えてきた。

 町を包むように全体がモクモクと煙が上がっている。


「なぁ、ゼルフ……?」

「なんだ?」

「この音ってなんだ?」


 町から警鐘のような連続的に鐘の音が聞こえてるのは気のせいだろうか。

 町に近づく時って嫌な思い出しかないから、つい警戒してしまう。

 ネフィル山から降りた時もそうだし、フロランシェでは牢屋に入ることになった。

 それに今回は町が煙で包まれている。

 きっと温泉の湯気で町全体がこっちから見えにくいのだろう。


「うっ、うわああああ!」

「魔物が近づいてきたぞおおおお!」


 遠くから何か叫び声のようなものが聞こえてくる。

 俺は不安になり、減速しながらジーッとゼルフを見つめた。


「あー、たぶん緊急事態の時になる鐘だぞ」


 俺はすぐにブレーキを踏んだ。


「おいおい、それを早く言えよ!」

『そーだ! そーだ!』


 急いでキッチンカーから外に出ると、町の入り口には冒険者と思われる人たちが集まっていた。

 その中にはやけに背が低く、老け顔のおじさんが多くいるような気がする。


「すみません! 俺たち危ないものじゃないです!」


 声を出して伝えるが、中々警戒心は薄れない。

 このままではまた牢屋行きだろうか。


「なら何か証明するものはないか!」


 背の低いおじさんがゆっくりと近寄ってきた。

 肩には大きなツルハシのようなものを担いでいる。

 変なことをしたら、あのツルハシで頭を叩き割るつもりじゃないだろうか……。


「何か証明って……」

「なら訳のわからないやつはこの町に近づけさせることはできない!」


 明らかに俺たちは怪しい者扱いだ。

 何か証明するにしてもギルドカードしか持ってないし、きっと危険だと思われているのはキッチンカーだろう。

 キッチンカーが危なくないとわかれば……。


「あっ! ちょっと待っててください!」


 俺は急いでキッチンカーに戻り、グローブボックスから推薦状を取り出した。

 きっとこのためにあの領主たちは推薦状を渡したはず。


「フロランシェとブレッドンの領主からもらった推薦状ならあります!」

「なんだと!」


 俺は推薦状を持って、大声で手を振りながら伝える。

 あの反応ならきっと無事に町に入ることができるだろう。


「ゆっくりとこっちにきてくれ!」


 俺は言われた通りに推薦状を持って近づく。

 小さいと思っていたおじさんが目の前にくると、さらに小さく感じた。

 150センチメートルあれば良い方だろう。


「んっ? なんだ、そんなにワシのことが気になるのか?」


 俺がジーッと見ていたのがバレたようだ。


「いや、全く気にならないです!」


 ここで気になるといえば、思ってもいないことが起こるかもしれない。

 フロランシェの領主の時みたいに婚約を申し込まれても困るからな。


「ははは、ドワーフは珍しいからな!」

「ドワーフ……さん?」

「ははは、名前じゃなくて種族だぞ!」


 どうやらこの町にはドワーフという種族が多いようだ。

 町の方にも目を向けると、似たような背丈の人がたくさんいる。

 この世界特有の人種なんだろう。

 変な勘違いをされずに済んでよかった。


「本当に推薦状だな。疑ってすまない」


 ドワーフから確認した推薦状が返される。

 これで問題なく町に入れるだろう。


「キッチンカーが魔物に見えるのも仕方ないので……」

「あの鉄の塊はキッチンカーというのか!」


 ドワーフはキッチンカーに興味津々のようだ。

 何も知らなければ、わけのわからない塊だからな。

 俺はニヤリと笑い、ドワーフに提案する。


「乗ってみますか?」

「乗れるのか!?」


 俺はドワーフを連れてキッチンカーに戻ることにした。

 せっかくだからキッチンカーの凄さを体験してもらった方がいいからな。

お読み頂き、ありがとうございます。

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