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9 北西の砦とシリュウの属性

緩やかな雪道の上り坂を進む一行。吐く息が白くなってきた。


馬車の中に風は入ってこないし、小型の魔道暖房装置があるものの、寒いものは寒いので、僕を真ん中に3兄弟で身を寄せ合って温まっていた。そして僕の腕の中にはシズク。

出発前に、ヴィッグにシズクが寒さに弱い可能性があるといわれてメイミに縫ってもらっていたシズク専用服のおかげでシズクも元気そうだ。


「かぁ~!かぁ~!」


クロウ丸が砦への手紙を届けて帰ってきたらしい。ヴィッグが褒めておやつを与えている。クロウ丸も飛ぶのに邪魔にならない衣装を着ている。もちろんヴィッグのお手製だ。クロウ丸が帰ってきたということは、砦の到着が近いのだろう。


3兄弟で雑談をしていると、馬車の窓がノックされる


「皆様、砦が見えてまいりました」


キャロルがノックしてきた方の窓から僕と姉様が顔を出し覗く。逆の窓からは母様が窓から顔を出していた。

少し遠くに立派な砦が見え、その門の前に人が沢山いるのが見える。

こんな寒いのに今から待機しなくても、と思ったが、この世界ではそれが当たり前なのかもしれないと黙っていたら母様が


「こんなに寒いのに今から待機しなくても、そんなことで私怒らないわよ〜」


と言っていた。あ、よかった感性は間違ってないみたいだ。


「ローラン殿は真面目なお方ですからな。ウィンディ様が気にしない方だと分かっていてもこういったことはきっちりとしたいのでしょう」


なるほど、ローランさんは生真面目でローランさんとキャロルは知り合いっと。


お互いが視界に入ってから僕ら侯爵一家が馬車から降りるまで、砦の兵士たちは敬礼をしながら待機していた。


「ウィンディ・A・シルバーバーグ侯爵夫人を始め、御一行の皆様方、北西の砦へようこそおいでくださいました。

「「「「おいでくださいました!!!!」」」」


ローランさんの挨拶に兵士の皆さんが復唱をする。


「私、こう言うもてなされ方は好きではないわ〜。ローラン、部下の方々に風邪を引かせないようにね」


あれぇ〜?到着早々、おかしなことになったぞ〜?


母様とローランさんのいざこざは一旦置いておいて、僕ら一家は砦の貴賓室に泊まることになった。といっても数が少ないので、母様と姉様が相部屋で僕はルーク兄様と相部屋になった。

砦の設備を一通り見て、晩御飯とお風呂を済ませた後、それぞれのベットに入り兄様とおしゃべりタイムが始まった。シズクは側ですでに寝ている。


「シオン、明日からシオンがローランさんから稽古を受けている間、僕は何をしたらいいと思う?」


普段のルーク兄様からは想像もしないような言葉が飛び出したので、少し驚いたが、ちょっと考えて、思いついたことを提案してみた。


「この砦の兵士たちの仕事内容を把握してみることも勉強になると思いますし、フェルンタウンとフロストタウンに丸1日滞在できるように父様に出す嘆願書の執筆もお願いしたいですね。あと、アクア姉様の相手もお願いしたいです。もちろんローランさんとの稽古の様子を近くで見てもらっても構いません」


矢継ぎ早に喋ると、兄様も少し驚いたような顔をした後に、いつもの頼もしい表情になり


「分かった。このルーク・B・シルバーバーグ、愛する弟の頼みを全て引き受けよう」


と言った。その後、兄様がぼそっと「すごいな、シオンは」と呟いたのは聞き逃さなかった。

やっぱり兄様は完璧超人だ。部屋が暗くなっていなければ耳が真っ赤になっていたことを気づかれたかもしれない。



翌日、砦の裏手側、山の麓で、ローランさんと冬服装備で対峙していた。

観客はグランとキャロルとメイミとシリュウとシズクである。

少し遠くでルーク兄様とアクア姉様とその周りの人たちが雪だるまを作っている。


「ローランさん、昨日はすいませんでした」

「いえ、シオン様が謝ることでは…。私も配慮が足りなかったと昨晩から猛省しております」


何故か居た堪れなくなって初手謝罪をしてしまった。微妙な空気感になってしまったので、ローランさんが咳払いをして


「では、始めましょう」


と、空気を作り変えてくれた。


「身体強化が他の魔法と少し違って難しいところを説明いたしますと、他の魔法は魔力を掌に集中させ、頭では魔法のイメージを行うと言った具合になると思いますが、身体強化は違い、魔力を体内に循環させ、頭では魔法のことは考えず、戦い、もしくは戦う相手に意識を集中させることです」


なるほど、戦う相手に集中し、魔力を体内に循環させる。こうかな?


「ていやっ!」


目の前のローランさんの構えている木の剣に当てるだけのつもりで自分の木の剣を振ったら、ローランさんの木の剣をすっ飛ばしてしまった。


「あっ、すいません」

「これはこれは、こんなに早くできるわけがないと思い油断していました。噂を信じていなかった自分の責任です。申し訳ない」


と、逆に謝られてしまった。噂という言葉には疑問を感じながら、ローランさんの木の剣を拾いに行こうとしたら、すでに拾い上げている人物がいた。いや、その人物の目の間に飛ばしてしまったみたいだ。


「シオン様、私の目の前に飛ばしたということは、私への挑戦状ということですな?」


いや、シリュウさん、違う、そうじゃない。あ、これはスイッチ入ったな、こちらの話を聞かずに一人で盛り上がっている。いや、朝の準備の段階からおかしいと思ってたんだよ。明らかにシリュウも戦う格好をしてるんだもん。


「では、私は審判になりますので、シリュウ殿、どうぞ」


え〜!?ここでまさかのローランさんの裏切り!?っていうかグランもメイミも止めないんだ。


「シオン様ファイト〜!」

「ぼっちゃま、これも試練ですぞ」


逃げ道防がれたじゃん、こちらの様子が伝わったのか少し遠くで姉様と兄様もこちらに手を振っている。

よっしゃ、そこまでいうならやってやろうじゃん、身体強化も覚えたし、前みたいにはならないかんね。

ローランさんの「開始!」の合図で今回は僕から攻めてみた。しかし、簡単に弾かれ、逆にシリュウの攻撃を受け止める。

何これ重っい!2回まで耐えてはいたが3回目の攻撃で剣を吹っ飛ばされてしまった。


「ふむ、真面目に訓練をした3年目の一般兵といった具合ですかな?」


手がジンジンしてそれどころではなかったが上々の評価をもらったみたいだった。というか剣を受け止めた時のインパクトって自動物理防御効かないのか、もしくは効いていてシリュウの腕力が貫通してきているのか。後者だったら恐ろしい。

まぁ、僕的には気絶をしなかっただけでも上出来だ。


「では次はローラン殿、お手合わせをお願いいたします」


シリュウの次のターゲットはローランさんみたいだ。

今日はもう僕が剣を握ることはないだろうとメイミに掌に軟膏を塗ってもらう。

シズクもグランから返してもらい僕の頭の上に戻ってきたので、シリュウの様子を伺う。

いつの間にかキャロルが審判を買って出て、シリュウVSローランさんが始まっていた。

ローランさんは身体強化を使っているのに魔法を使わず互角なシリュウが恐ろしい。

そういえばシリュウの属性ってなんだっけ?とグランに聞いてみた。


「シリュウ殿は闇属性レベル2ですな。しかし、自分から使える魔法というものがなく、毒や幻惑などといった闇属性に分類される状態異常に耐性を持っております」


勝負はローランさんの身体強化が一瞬緩んだ隙をついてシリュウが勝ちましたとさ。

うん、シリュウが味方で良かったよ。

次回投稿予定日は3/7(土)です。

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