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10 フェンリルとキングホワイトベア

その日の晩御飯は僕らシオン一派がローランさんを囲み食事をしていた。

上座に僕とローランさん、その近くにグラン、メイミ、シリュウ、キャロルが座っていた。

いや、キャロルは母様の護衛だったはずだが。その母様はジュストと砦の副兵士長から話を聞いているようだった。


というのも元々副兵士長さんがここの責任者(兵士長)であり、ローランさんは王都からとある依頼を受けてここの兵士長になったらしい。副兵士長という役職もローランさんが来てから新設された役職なので、追い出された人はいない。そしてその依頼というのが


「ここの山でフェンリルと通常より大きいホワイトベアが目撃されたのです。そこで、調査と近くの町の安全の確保のために魔物の生態を研究している学者と派遣されました」


なるほど、兄様、姉様一派のグループのゲストになっている兵士っぽくない人の正体はその学者さんだったか。道理で兄様が目を輝かせて話を聞いているわけだ。

ここで普通の貴族であれば、危険な場所だということを隠しておいて歓迎するとは何事かとかいうのかもしれないが、誰も騒ぎ立てないあたりが実に我が侯爵家である。とうか、父様も母様も知ってただろ。

そういえば、無属性でも強力な魔物を引きつれていれば自然属性と引けを取らないとか父様言ってたしな、これは遠回しにどちらかテイムしてこいって言われてますか?

訝しんでグランを見ると、なんともいえない顔をされた。え?それどういう意味?


お風呂の後、自室でルーク兄様から魔物のレクチャーを受ける。学者先生から魔物図鑑を借りたらしく、ページを指差しながら説明してくれる。例の如くシズクはすでに寝ている。


「まずフェンリルだが、狼に似た魔物で、氷の魔法を得意としている個体が多い。単体でも強力な魔物だが、群れをなしていることも多い。とても賢く、人に懐く個体もいるのだとか。そしてホワイトベアの方は、全身白い毛皮の熊の魔物で、腕力が凄まじく、あまり賢くはない。縄張り意識が強く、狩り以外でも縄張り争いのために他の魔物を攻撃することもあるらしい。どちらも雪国の魔物なので炎が他の属性に比べてよく効くが、弱点というほどのものでもないらしい。と、この本には書かれているね」


ルーク兄様の魔物講義はとてもわかりやすかった。流石、ルーク兄様である。

余談で他の雪国に生息する魔物の話を聞いているうちに寝落ちしてしまったらしい。気づいたら朝で、しっかり布団がかかっていた。ルーク兄様がかけてくれたらしい。


2日目は天気が悪く、雪が振ってきていたので、今日の稽古は室内になりそうだと朝ごはん前にグランから報告を受けた。

しかし、朝ごはんの時から妙な胸騒ぎを覚えて、万が一のために特別メンバーを選出した。

僕を筆頭に、ローランさん、シリュウ、キャロル、メグさん、ジークさん、ザクさん、グラン、学者さん、ヴィッグ&クロウ丸。そして兵士のやる気のありそうな人10人。主に兵士は後半3名の護衛をしてもらうためである。まぁ、実際は完全に戦えないのは学者さんだけで、グランとヴィッグはそれなりに戦えるのだが。


朝ごはんを食べてから、特別メンバーと昨日稽古をした辺りにパトロールに向かった。

山の方から違和感を感じ近づくように歩く、しばらくするとゴゴゴゴゴゴという音が聞こえてきた。


「雪崩かもしれません!少し離れましょう!」


というローランさんの指示に従おうとしたが、”ソレ”は既に近くまで迫ってきていた。

僕の目の前にとてつもなく大きい白い狼が現れたのである。

僕は一瞬、呆気に取られたが、すぐに悟って振り返る。


「シリュウ!射っちゃ駄目だ!」


既に弓を構えているのはシリュウだけでなくローランさんとキャロルとザクさんもだったが、僕の言葉に全員構えを解いてくれた。

グランとヴィッグに視線を送りアイコンタクトをするとフェンリルの方へ振り返り、両手に魔力を集中させ、フェンリルの顔に触れた。

フェンリルは安心したのか、白い光に包まれて僕が抱えられる大きさに縮んでいった。


「今日から君の名前はフブキだ」


と呼びかけると


「ワォン!」


と嬉しそうに応えてくれた。

その光景に場の緊張がほぐれた瞬間


「グァオオオオオオ!」


と背後に大きな白熊が現れ、僕を爪で弾き飛ばした。

グランが柔らかい土で受け止めてくれ、僕とフブキは無事だった。

いや、僕じゃなきゃやられてただろ。自動物理防御様々である。

それを戦闘の合図にシリュウとローランさんとキャロルとザクさんの弓がホワイトベアを襲う。

遅れてメグさんの放った火炎弾も命中するが怯んだだけで、大したダメージは与えられていないようだった。

ザクさん以外は槍に持ち変え、最初から槍を持っていたジークさんも加え、接近戦を試みる。

冷静に戦況を見れる状況になったところで、学者先生が何やら興奮していたので近づき、情報提供を求めてみる。


「あれはただのホワイトベアではありません。キングホワイトベアです!」


どうやら普通のホワイトベアでさえ凶暴な魔物なのにそれの上位種らしい、フブキはこいつに追われて助けを求めてたのか?


「下手に胴体を狙っても激昂するだけです。眉間に強烈な一撃を叩き込めれば倒せると思います!」


地面が雪での戦闘に一番慣れているローランさんが引き付け、攻撃しそうになったら、シリュウが背中を槍で叩いてみたり、ザクさんが弓で顔を狙ってみたり、クロウ丸が空から牽制をしてみたり、メグさんが火球を飛ばしたりしているが、このままではジリ貧である、あまり時間はかけられない。


落ち着けシオン、考えろ、考えるんだ。

目的はキングホワイトベアの眉間に強烈な一撃を与えること。

そしてメンバーの特徴と特技を。


「フブキ!行くよ!メグさん、ザクさんお願い!」


フブキに僕が乗れる大きさまで大きくなってもらい背中に乗る。どうやら僕の魔力を貸せば大きくなれるらしい。キングホワイトベアの気を引いてもらうため、遠距離攻撃の二人に声をかける。

遠距離組に攻撃を仕掛けるため、キングホワイトベアが口から冷気弾を放ち始めた。

冷気弾の切れ目を目掛けてジークさんとキャロルがローランさんを左右から槍で打ち上げ発射する。

しかし、キングホワイトベアの体勢が立て直す方が早くローランさんに鋭い爪が襲いかかる。


身体強化を使い、フブキの背中を蹴り、空中に飛び出し、キングホワイトベアとローランさんの間に割って入る、そのままローランさんを抱きしめ、背中からキングホワイトベアの攻撃を受け飛ばされ、またグランに受け止めてもらう。


そして、体勢を崩したキングホワイトベアの頭上にもう一人。

近くの木からあそこまで飛ぶってやっぱり人間卒業してないか?あ、クロウ丸を足場にしたのね。じゃあ、その人よりクロウ丸がMVPですね。


そう、その人物とはシリュウである。空中で愛用の槍を構え、こちらを確認するように視線を向けてきた。


「シリュウ!いっけー!!!」


シリュウはニヤリと笑い、そのままキングホワイトベアの眉間に槍を叩きつけるように貫いた。

ズドンという音と共にキングホワイトベアが倒れ、動かなくなった。


学者先生がキングホワイトベア討伐を確認し、合図を出すとメンバー全員で勝鬨の声を上げた。


キングホワイトベアの後処理を学者先生と兵士と護衛組に任せて砦の中に戻ると、母様と兄様と姉様が怖い顔をして待ち構えていた。

あれ?砦の問題解決したけど、でしゃばりすぎたかな?


「シオンちゃん。2箇所も服が大きく破れているけど、どう説明をするつもりなのかしら?」

「シオン。言い訳しても無駄だぞ。母様も僕もアクアも望遠鏡で見ていたからな」

「シオンが飛ばされた時、私も息が止まったんだけど!」


どうやら、自分を盾にした作戦に対して怒っているらしい。

グランは僕の作戦に参加した手前説教には参加しなかったが、メイミをはじめ、ジュストやシスター、挙げ句の果てにはシズクにも説教をされてしまった。

被害が僕の服だけっていう名采配だと思ったんだけどなぁ?

次回投稿予定日は3/14(土)です。

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