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7 初遠征!

最初はテンション鰻登りな3兄弟だったが、2時間も景色が変わらないと退屈し始めた。


母様は編み物をはじめ、ルーク兄様は何かの専門書を読み出し、アクア姉様はシズクをムニムニしていた。

シズクは困った顔をしているが、僕に助けを求めていないのでさほど嫌がっていないのだろう。

僕らの退屈を察した執事組の伝言をキャロルが持ってきた。


「ウィンディ様、この先に大きな木があり、休憩するのにちょうどいいスペースがあります。執事たちがそこでの休憩を提案していますがいかがいたしますか?」

「そうね、みんな、休憩しましょうか?」


異論はない3兄弟は元気に「はい!」と返事した。

アクア姉様の手元から帰ってきたシズクはやり切った表情をしていた。


馬車から降りると執事組が平らなスペースを確保していた。そこに僕がテーブルと椅子をアイテムボックスから取り出して配置する。そしてメイド組にティーセットを渡した。

最初に座ってティータイムを始めたのは僕らの家族とごった煮馬車に乗っていた4人だけだ。

御者たちは馬のお世話をしているし、護衛組と執事組は打ち合わせをしている。

同じ《赤き竜の爪》でも護衛の仕事をまっとうしているジークさんとザクさんがティータイムに入っているメグさんに何も言わないあたり、紳士的な男たちである。


家族以外は交代で休憩をとりつつ、これから乗る馬車について執事組から提案があった。

要は僕たち兄弟の勉強のために家族バラバラで乗りましょうとのことだった。

アクア姉様以外反対意見がでなかったので、アクア姉様はアクア姉様の専属執事に抱えられていきましたとさ。そうだよね、7歳だもん勉強より家族団欒がいいよね。それについてはアクア姉様より僕とルーク兄様の方がおかしいのだ。

ごった煮馬車の面々は、ジュストは母様の馬車に、シェフは兄様の馬車に、シスターは姉様の馬車に、メグさんが僕の馬車に乗ることになった。


アイテムボックス収納というお片付けを終えた僕は馬車に乗り込んだ。メイミとメグさんが「お疲れ様です」「お疲れ様〜」と出迎えてくれる。最後に忘れ物などのチェックを行っていたグランが乗り込み馬車はまた走りだした。


「せっかくですのでこれから立ち寄る町と、スケジュールについて確認しましょうかな」


ケルテクラウンから北西の砦までは大きな町が二つありそれぞれ父の部下の伯爵が納めている。

ロクセン王国では公爵と侯爵が地球でいうところ州知事、伯爵が県知事、子爵が市長、男爵が町長・村長というイメージで、同じ街に土地を納めている貴族は住んでいない。一応、部下に領地を持たない貴族階級の武官や文官がいたりする。ケルテクラウンで言うと、ジュストが領地なしの子爵だったりする。


そして大きな町の間に駅舎町が存在している。宿屋と食堂と厩舎しかないが、大きな街と街の間が馬車で1日と離れていることが多く、祖父の時代に施策として建設や運営が始まったものだ。

駅舎町は名前がないことが多く、次に訪れる駅舎町は通称「ケルテクラウンフロストタウン間の駅舎町」だ。実は地図上だと侯爵領のちょうど中心にある駅舎町だったりする。


駅舎町で先に名前が出てしまったが、今日の執着地点が、フロストタウンだ。雪国にふさわしい名前である。

明日は朝にフロストタウンを出発し、駅舎町でお昼ご飯を食べて、次の町、フェルンタウンに泊まる。

そして、明後日は朝にフェルンタウンを出発し、途中でお昼ご飯を食べて、やっと北西の砦に到着するらしい。フェルンタウン・砦の間は駅舎町がないくらい近いが、上り坂になるので馬車であれば他の町の間と同様の時間がかかるだろうといったスケジュールだ。


スケジュール確認の後はグランの授業だが、せっかくメグさんがいるので、炎属性や冒険者についての授業になった。

メグさんの冒険譚には僕だけでなくメイミも楽しそうにしていたので、充実した時間が過ごせた。



ケルテクラウンフロストタウン間の駅舎町に着いた時にはお昼の時間はとっくに過ぎていた。休憩時間を長くとり過ぎたのかもしれない。

母様と兄様はいつも通りだが、苦手な勉強をさせられた上、空腹を我慢していた姉様はとても不機嫌だった。兄様とアイコンタクトをとり昼食会場である食堂にて姉様を挟んで座る。二人で姉様を褒めつつ頭を撫でたら機嫌が戻った。姉様もちょろい。


「姉様、午後の休憩にはおやつを用意してもらいます。午後の勉強も頑張りましょう!」


と言ったら自分から張り切って馬車に乗って行った。姉様素直で良い子。

そんな姉様をホクホク顔で見ていたら、そんな僕ら兄弟の様子を大人たちがホクホク顔で見ていたことに気づいた。

あらやだ、恥ずかしい。


午後はヴィッグたち御者組や馬たちの頑張りもあり、移動速度を早めることができ、しっかり休憩時間をとり姉様のおやつタイムと機嫌を確保した上で暗くなる前にフロストタウンまで辿り着きました。


僕らを出迎えてくれたのはフロストタウンを納めているハーヴェイ伯爵と伯爵夫人だった。

ちょっとでっぷりとしたいかにも貴族らしい、いでたちのハーヴェイ伯爵は、父に貴族としてのイロハを教えた人らしい。伯爵夫人にも母様が世話になったことがあるらしく、双方にこやかだ。

母様やジュスト、キャロルは視察の名目を達成するためにこれから、伯爵家の人々と会談だが、子供の僕らには関係がないので伯爵家で晩御飯を食べた後、お風呂に入り、すぐに寝た。

そして、朝になるとすぐ出発だ。意外と弾丸旅行だな?この日程。

帰りはフロストタウンとフェルンタウンに丸1日滞在できるように日程調整してもらおうかな?


今朝のプチ事件は会談のおかげで寝不足なキャロルを馬車で寝てもらうために、ルーク兄様がキャロルの馬に乗っていくと言い出したことがきっかけだった。9歳で馬に乗れるとか王子様か?王位継承権あるし、あながち間違いじゃないか。

当然のようにアクア姉様が羨ましがり、アクア姉様の専属護衛の馬に一緒に乗ることに、なぜかその流れ弾で、僕もシリュウの馬に一緒に乗ることになった。

…自動物理防御って落馬にも対応してるかな?


移動中、ルーク兄様は馬を乗りこなすだけではなく、仮眠をとっている母様やキャロルの代わりに指揮をこなしていた。やっぱり中身9歳児じゃないですよね?

約2時間移動し、休憩を取れる場所に到着した。

シリュウに抱えられながら馬に乗り、お尻が限界に来ていた。姉様も最初ははしゃいでいたが、流石に疲れたのか休憩の時にはいつもよりテンションが低かった。しかし、前向きなアクア姉様は、


「お家に帰ったら、一人でお馬さんに乗れるように練習する!」


と意気込んでいた。これを聞いた姉様の専属メイドと執事と護衛の顔が真っ青になっていた。

うん、姉様危なっかしいもんね。僕も心配。あとでグランから3人に胃薬を差し入れてもらおう。

休憩には母様とキャロルとジュストも起きてきていた。みんなの元気な姿を見て安心したのか、逆に兄様が眠ってしまった。どうやら、プレッシャーを感じて疲れていたらしい。よかったこの人、人間だ。


休憩後、お昼を食べる予定の駅舎町までは家族馬車で移動する。

ルーク兄様は母様に膝枕され眠っている、9歳児がギリギリ横になって足を伸ばせるサイズの馬車でよかった。

僕と姉様は向かいの席で静かにオセロをしている。なんとこの世界にはオセロがあるのである。しかも馬車など揺れる場所でもできるようにマグネット製だ。これはこの世界に僕以外にも転生者いますね、多分。

シズクが気を聞かせて姉様の味方にまわっているが、意思疎通がそんなにできていないのであんまり意味はない。迷っている時にこねくり回す要因だ。


そんな感じで次の駅舎町に到着をした。

次回投稿予定日は2/23(月)です。

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