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29 王様が遊びに?来た

ケルテクラウンの東門から真っ直ぐに30分歩くと丘がある。

ケルテクラウン近郊の森と同じく正式名称はないが、ケルテクラウン民からは”希望の丘”と呼ばれている。

今日はそんな希望の丘にいつものメンバーで散歩に来ていた。

ちなみにいつものメンバーとは僕、グラン、メイミ、シリュウ、シズク、フブキ、ジークさん、ザクさん、メグさんである。

相変わらず君たち3人は付き合いがいいね?


門から出ると魔物が現れることがあるため、メイミ以外の大人たちは周りを警戒しているが、丘から見える景色は平和そのものである。


「私には平和な景色には見えませんが」


え?何言ってんのジークさん、だっておとなしそうな牛が草原の草を食べてるだけだよ?


「あれはブルという種類の魔物です。肉は美味しいですが、そこそこ高ランクです。《赤き竜の爪》(我ら)でも怪我をしかねません」


そっかぁ。フブキ!凍らせて!シリュウ!仕留めてきて!

アイテムボックスに収納して、と。

よし、これで解決。

僕の迅速な行動にはジークさんもドン引きである。

ザクさんがジークさんの肩を叩いて励ましている、いや、あれは諦めの境地に誘っている。

メイミとメグさんは楽しそうに拍手をしている。シズクも楽しそうだ。君たちなんかリアクションが似てきたね?


何はともあれ脅威はとりあえず去ったので、テーブルと椅子をアイテムボックスから取り出し、グランとメグさんにはティータイムを楽しんでもらう。

男3人にはそのまま周りの警戒をしてもらい、僕はメイミから花冠の作り方を教えてもらう。

シズクとフブキの分が完成し、僕の分を作ろうとしたところでシリュウが急に身構えた。


「シリュウ殿、あれは味方です」


とグランがシリュウに声をかけるとシリュウは構えを解いた。

何の話をしているんだろう?と首を傾げたところで遠くの空から何かがこちらに近づいて来るのがわかった。

鳥?いや顔が爬虫類だ。あれが噂のドラゴンかな?と考えているとグランが解説してくれた。


「あれはワイバーンですな。人が乗っていますので、おそらく王都の飛竜部隊でしょう」


本当だ、ワイバーンの背中には人が2人ずつ乗っている。

誰が乗っているのかはよくわからない距離で、ワイバーン5頭は僕らの頭上を通り過ぎ、ケルテクラウンへと向かって行った。

しかし、しばらくすると1頭だけが引き返してきてゆっくりと僕らの目の前に降りてきた。

ワイバーンの背中には、前の方に騎士さんが、後ろの方には高貴な身なりの人が乗っていた。

その高貴な身なりの人が誰なのかをいち早く察したシリュウがその人がワイバーンから降りるのを補助しに行った。

ワイバーンはつま先から頭までで悠に3メートルは超えており、大人の人でも1人で乗り降りするのは大変そうだった。


高貴な身なりの人がワイバーンから降りてこちらに近づいてくるとグランはひざまづいて片手を胸に当てる臣下の礼をとる。

遅れてジークさんとザクさんもひざまづき、メイミとメグさんは一番深い位置でのカーテシーをする。

この大人たちがわざわざそんなことをする相手である。誰であるかはすぐ察しがついた。


「王様?」


慌てて僕も臣下の礼を取ろうとひざまずく。シズクとフブキも合わせて伏せをする。


「はっはっは、シオンとそこの2匹は臣下の礼は必要あるまいよ。他の者たちも楽にしていいぞ」


短く「はっ」という掛け声で立ち上がる大人たち。僕も立ち上がり、王様の顔を観察する。

よかった、上機嫌そうだ。

国王たる威厳はあるが、穏やかそうな人である。

髪は癖っ毛のある金髪で、整えられているだけではなくところどころ遊ばせている部分にイケおじ味を感じる。父様よりも年上だったのは確実で、多分40代後半のはずだ。

服装も高貴な感じは滲み出ているが、ワイバーンに乗ってきたために軍服に近い格好であり王冠もしていない。軍服は品のある紫を基調としている。


「改めて私はロクセン国、国王のヴァレン・バイオレットローズだ。ウォルト達との会議の前にシオンと少し話がしたくてね。そこの机は借りれるかな?」


僕が「どうぞ!」というとグランが椅子を引く。

僕の分の席はメグさんが招いてくれた。

僕が新しいティーポットとティーカップをアイテムボックスから準備する。

メイミが緊張で手が震えていたのでグランが僕と王様の分の紅茶を用意してくれた。


「ふむ、いいお茶だ。侯爵領産かね?」

「はい、侯爵領西南のグレンツロウ伯爵領産です」


さすがグラン、王様の質問にも澱みなく答える。僕もかくありたいものだ。


「さて、シオンは私と前に会ったことは覚えているかね?」


突然の王様からの質問にシオン君固まってしまう。どうしよう、全く覚えていない。

あたふたし始めるとグランが助け舟を出してくれる


「あれは、ヴァレン様の即位20周年記念式典でのことですから今から4年前ですな。1歳のシオン様が覚えてるとは思えません」


え?グラン、王様に対して辛辣すぎじゃない?不敬罪にならない?大丈夫?


「はっはっは、相変わらず手厳しいなグランは」


僕がグランを心配そうな顔で見ていると王様が僕の頭を撫でて説明してくれる


「グランはウォルトが侯爵になる前の数年間、私の軍略等の教師をしてくれていたのだよ」


思わず「ほへ〜」と言ってしまう。人に歴史ありである。

グランは元々侯爵軍参謀長であり、それを僕が産まれた時に執事になるために引退をし、リオン君に引き継いだということまでは聞いていたが、それ以前の経歴は初耳だった。

気安い仲なのも納得である。

いい雰囲気になってきたかと思えば、王様は強張った顔になってしまう。

あれ?何かやらかしたかな?


「それでだな、なんというか、その、シオンに謝らなければならないことがあってだな」


誰が?何を?え?王様が?僕に?


「私は王として、そして君を危険に晒してしまった一人の大人として伝えなければいけないことがある。

実はね、あの北西の砦への遠征、あれは、君の父であるウォルトからの君の身体強化の先生を探しているという連絡をもらい、私が提案したことなのだよ。

君も知っての通り、北西の砦にはフェンリルとホワイトベアの調査のためにローランとキジムを派遣していてね、ローランは身体強化を使えるし、フェンリルやホワイトベアを君がテイムすれば一石二鳥ではないかという安易な考えであった。

だが、あの場所にキングホワイトベアが現れたのは、完全に我々の、いや、私の想定外だった。ローランとキジムからの調査書には、あの森には通常種のホワイトベアしか確認できないとのことだった、それならばローラン一人の手で十分に対応できたはずなのだ。

シオン、怖い思いをさせてしまったね。君の機転と君の周りの人員のおかげで事なきを得たとはいえ、まだ幼い君に死線を潜らせてしまった。……本当に、申し訳なかった。

お詫びに私が協力できることがあればなんでも言ってくれたまえ。

何、君にしてみれば私は親戚のおじさんだ。君を贔屓していたとしても誰も咎めるものはいるまい」


なぜか聞いている僕も申し訳ない気持ちになってきたので、両手をあげて元気アピールをする


「見ての通り僕は元気です。結果論ですが、王様が気に止む必要はどこにもありません」


元気アピールが成功したのか王様は目頭を押さえながら笑ってしまった。


「あぁ、そうだな。ありがとう」


王様にお礼を言われたので、ここは畳み掛けよう。


「では、わたしからのお願いがあるとすればお祖父様に会いたいです!」


王様どころかグランもシリュウも驚いた表情をしていた。

なんでやねん。

次回投稿日は7/4(土)です

次回は「番外編2 我が執事」です。

ルーク兄様の執事について詳しく語られますのでお楽しみに!

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