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27 宗教戦争?ありませんよ、そんなの。

次の日、僕はいつものメンバーを連れてケルテクラウンの街中を歩いていた。

いつものメンバーというのはグラン、メイミ、シリュウ、フブキ、そしてメイミの持っている籠に入ってるシズクである。

昨日の夜のお風呂でフブキを徹底的に洗い、兄様に乾燥してもらったので今日は真っ白のツヤッツヤだ。


今日の目的地はケルテクラウン内の教会である。

シリュウの謝罪は本人が昨日1人で行ったので、それが目的ではない。

いや、シリュウが仕える主として僕も顔を出す必要があるという意味では、来た意味はあるのだが。


教会の中に入ると若い男性の神官さんが奥の部屋まで案内してくれた。

部屋の入り口には”大司教室”と書いてあった、つまりこの教会のトップの部屋である。

え?フラッと来た貴族のおぼっちゃんがすんなり入っていい場所なの?と、後ろのグランを振り返って見てみると、何も疑問を抱いていない表情をしていた。あ、これでいいんだ。


神官さんがドアをノックし


「シオン・B・シルバーバーグ様をお連れしました」


というと、どこかで聞いた声で


「通しなさい」


と返ってきた。

部屋に入ってみると、執務机に座っていたのは僕の神託の儀式をしてくれた神官さん。

…神官どころの騒ぎではなかった。

ロクセン王国の教会の神官とは男性の一般職であり、女性の一般職はシスターで、出世すると司教、大司教、枢機卿、教皇となっていく。

つまりこちらの大司教さんは侯爵領の教会組織のトップなのである。

老齢の神官とか心の中で言ってすいません(1話参照)


後から知った話ではあるが、神託の儀式は普通、何名かいる司祭さんがローテーションで毎週末に行うらしいが、あの日は僕が参加するために大司教さんが神託の儀式を行っていたらしい。



「これはこれはシオン様、ようこそいらっしゃいました。今日はどのようなご用事で?」


大司教さんは好々爺な笑顔で話しかけてくる。

異世界ものでは王家と教会の対立もセオリーではあるが、ロクセン王家と教会は仲が良い。そもそもロクセン王国にとっての教会とは冠婚葬祭を行う場所であり、スキルやギフトを司る組織である。宗教的、政治的ないざこざもないので敵対する理由もない。

そしてもう1つ教会には役割があるのだが…


「今日は来た理由は、この前シリュウが迷惑をかけた件の謝罪と、あとは孤児院に遊びに来ました!」


そう、孤児院の運営である。

このシステムは先代国王と祖父が始めた施策であり、資金は教会の冠婚葬祭の売上と領主家からの税金投入である。

そうなると着服する教会も出てきそうだが、そういう教会は意外と少ない。ロクセン王国内で2、3年に1件見つかる程度である。…少ないか?少なくとも我が侯爵家では1度も起こっていない。

孤児院の子供達でも学校には通えるので教育の心配はないが、神官さんやシスターさんが身の回りを手伝ってくれるので、恩返しとして光属性になった子供はその道に進むことが多い。


「こちらはお詫びの品です」


普通なら僕の指示でグランがお詫びの品を渡すところだが、僕がアイテムボックスから取り出し、直接渡す。

お詫びの品はルドーら侯爵邸のシェフたちが頑張って作ったお菓子の盛り合わせだ。3箱もある。

腐りやすそうなものから先に食べてね、と説明をしたら大司教さんは苦笑いで受け取ってくれた。


「わかりました。こちらは神官たちに配りたいと思います。では、孤児院に行かれるのであれば、案内はシスター・リリィにさせましょう。君、シスター・リリィを読んできてくれたまえ」


僕らをこの部屋まで案内してくれた神官さんが、お辞儀をして部屋を出ていく。

これ、大司教さんからの呼び出しにならない?またリリィさん胃が痛くなりそう。


リリィさんが来るまで応接机でお茶をする。お茶は大司教さんの秘書的なシスターさんが淹れてくれた。

せっかくだからと大司教さんが僕が渡した詰め合わせの中からケーキを1つ取り分けてくれる。それを僕とシズクとフブキでシェアして食べていたらリリィさんが現れた。


「失礼します。大司教様、シスター・リリィです。ご用件は…あれ?シオン様?」


リリィさんがこちらに気づいたので小さく手を振る。すると安心したのか、リリィさんの表情が柔らかくなる。わかる、上司からの呼び出しって怖いよね。うっ、前世の記憶が…。


「リリィ君、シオン様が孤児院に行きたいらしい、案内をお願いできるかね」

「はっ、はい!」


前世の感覚で言ったら、リリィさんは新人OLで大司教さんは支社長かな?

大司教室から孤児院に向かって歩き出と、道中、リリィさんは明らかにホッとしたような表情を見せていた。

孤児院は教会に併設されているのですぐついた。

建物の大きさは前世の小学校くらいで、いろいろな部屋があり、中には体育館のような室内運動場まである。教室の代わりに子供たちが数人で寝泊まりする部屋があるので小学校というよりは自然の家の方がイメージに近いかもしれない。

この孤児院には0歳から15歳までの子供がだいたい300名くらいが生活している。

300名と聞けば多いと思うかもしれないが、数万人が住んでいるケルテクラウンでこの人数である。

お祖父様以前の世界では孤児の扱いは国によってバラバラであり、戦時中は優先されることはなかった。

そんな孤児たちを救って来た、ロクセン王国の孤児院はお祖父様と父様の努力の結晶であり、僕の誇りでもある。


今日は学校が休みの日なので、子供たちはみんな孤児院の中にいる。

僕が廊下を歩いていると、「あ、おうじさまだ〜」とか「ちがうよ〜ごしそくさま?だよ〜」とか聞こえてくる。

声の方に視線を向けると僕と同年代くらいの子供の部屋だった。

うん、普通の5歳児ってあぁだよね?


大広間に到着すると、1人の子供が全力ダッシュでこちらに向かってくる


「シ〜オ〜ン〜さ〜ま〜!!」


大声で叫びならが向かってきた彼はそのまま僕に抱きついてきた。

彼の名はキャスパー。僕の2つ上の7歳で姉様と同じ年齢である。この孤児院で僕に一番懐いていて、将来の夢は僕の専属護衛である。そのため、彼にしてみればシリュウは師匠でありライバルでもある。

孤児院の300人全員が僕の友達のつもりではあるが、キャスパーが一番の友達と言えるだろう。


大司教さんのことを知らなかったのに孤児院の子供たちのことを知っているのはなぜか。

実はこの孤児院に来るのは今日が初めてで、子供たちとは違う場所で知り合ったからである。

それは学校だ。昨年、兄様、姉様と3人(もちろん執事や護衛と一緒に)で学校に交流会として招かれた訳だが、そこで僕は持ち前のコミュニケーション能力を発揮してしまい、キャスパーたちと友達になったのだ。

…学校は6歳以上が通う場所なのに5歳以下の子供たちがなんで僕を知っているかって?それは僕も知らない。


今日は昨年の僕とキャスパーが誓い合った孤児院の訪問日である、さぁ、キャスパーたちと何をして遊ぼうか。

と、考えていたら、シリュウがキャスパーたち、将来の騎士や冒険者たちを連れて外に出て行ってしまった。

あれ?思ってたのと違う。


グランは真面目な子たち相手に授業を始めてしまったし、メイミは女の子たちに裁縫を教えている。

シリュウについていかなかった活発な子たちはフブキと追いかけっこをしているし、シズクはお絵描きが好きな子たちのモデルになっている。


そして僕は、玉の輿を狙う女の子たちに質問攻めにあってしまうのでした。

リリィさんもたまに助け舟を出してくれるが、女の子たちの勢いに押されてタジタジである。


だ、誰か助けて〜!

次回投稿日は6/20(土)です。

次回28話のタイトルは「姉様の特訓」です。

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