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26 雷神剣ゼクシオン

倉庫の掃除中、ヴィッグが来てくれたのはありがたかった。

棚をアイテムボックスに収納しようと手を棚に乗せたら嫌な予感がしたからである。

嫌な予感の正体を探るべく、棚を隅々まで観察したところ棚が金属でしっかり邸の壁や床に固定されていたのである。

つまり、嫌な予感の正体は棚を収納しようとすると、邸全体まで収納しかねなかった、というわけか。

それができてしまいかねない自分が恐ろしい。

ヴィッグにそれを伝えると苦笑いをしながら


「ぼっちゃんがそうおっしゃるなら、その通りなんでしょうな。いやはや、思いとどまってもらい助かりました」


変な感謝のされ方をしてしまった。

ヴィッグは台車の布に隠れていた工具箱を取り出し、要領よく棚を固定している金属を外していく。

全て金属を外し終わり、ヴィッグがOKサインを出したものからアイテムボックスに収納していった。

ん?棚の留め具に金属?中世ならありえないはずだが、この世界ならあり得るのか、そうか。深く考えないことにしよう。


全部の棚を収納すると、棚のあったところだけが綺麗な床になった。

ということは、他の部分は少なからず埃が積もっているということである。

僕とフブキ、若手メイドさん2人で雑巾掛けを行う。

すると床は綺麗になったが、部屋内はますます埃っぽくなってしまい、フブキは何度もくしゃみをしている。


やっぱり、換気をした方がいいな〜と思っていたら、父様が様子を見に来た。

僕が父様の執務室を出てから2時間ほどしか経っていないはずだが、父様は仕事を終わらせたのだろうか?

ニコニコしている父様の後ろでマーカスがため息をついている。うん(察し)。

しかし、タイミング的にはベストである、父様に事情を説明したところ、父様は魔法で風を起こし、一番近くの廊下にある窓まで風の流れを作ってくれる。

倉庫から窓まではまっすぐではなかったもののさすが父様である、精密に魔法をコントロールし、埃っぽい空気を外まで運んでくれた。


棚をアイテムボックスから元の並び通りに出す。ヴィッグに金具での固定を任せ、それ以外のみんなは近くの広い部屋に移動した。

この部屋は使用人用会議室である。倉庫エリアの隣は使用人エリアか、あまりこの辺りに来なかったのも納得である。

思いっきり使用人用の部屋に邸の主人が入っちゃっているが、本人も使用人たちもあんまり気にしていないようである。

わざわざ部屋を変えたのは父様とマーカスがせっかくだから、倉庫にあった物のリストを更新しようと言い出したからだ。

僕が一つずつ倉庫にあったものを取り出し、父様とマーカスが状態のチェックとリストとの照合を行い、メイドさんたちが布の交換や、木箱の掃除などを行う。そしてまた僕のアイテムボックスにしまう。といった具合に流れ作業になっていった。


状態のチェックも父様は少しいい加減だが、マーカスは真剣である。元々、こう言ったものが好きらしく、マーカスの子供の頃の夢は博物館の館長だったらしい。

時々マーカスからの長い説明が入るが、父様は聞き飽きたという顔をしていたし、僕は「ほぇ〜」というリアクションしかできなかった。

ところが、細長い木箱を出した時である、父様が急に真剣な顔になった


「な、なぜこれがこんなところに!?」


木箱から出てきたのは、少しくたびれてはいるが、魔力を帯びた豪華な剣だった。

思わずそこにいた全員が見惚れてしまうほどの剣である。


「…ウォルト様、それはまさか雷神剣(らいじんけん)ゼクシオン?」

「…僕?」


それは僕の名前が入った剣だった。

父様が、本物であることを確かめると静かに木箱に戻し、説明をしてくれる


「あぁ。これはまさしく雷神剣ゼクシオン。私の父様。シオンにとってはお祖父様の愛剣でな、6属性にも無属性にも分類されない”例外”の”雷”属性が付与されている」


”例外”確かにそういったものがあるとは聞いていたが、お祖父様の剣で初めて見ることになるとは。


「父様がご自分で管理されているか、王都の宝物庫にでもあると思っていたが、我が家の倉庫に眠っているとはな。…この剣は私が子供の頃の憧れでな?シオンの名前もゼクシオンからもらっていると言っても過言ではない」


新事実。シオンくんの名前の由来、剣だった。


「ここだけの話だがルークは私のお祖父様、先々代国王様の愛槍、天風槍(てんぷうそう)ヴェルルークから、アクアは私の母、大公爵夫人の愛杖、翠霊杖(すいれいじょう)アクアリアから発想を得ている」


ふむ、つまり僕たち兄弟は伝説の武器3兄弟ってことか。

そう思うとこの剣、雷神剣ゼクシオンにも愛着が湧いてくる。

まじまじと剣を観察する。

豪華に感じるが、剣として無駄な装飾があるわけでもなく、どことなく荘厳な雰囲気を感じるから不思議である。

しかし、錆びてるわけではないが、くたびれたものを感じるのは長年使っていなかったせいで魔力が枯渇しているのか?


「そうだ!この前のお土産のお返しにこの剣をシオンにプレゼントしよう。しかし、さすがに父様の許可を得ないといけないのでな。それまではシオンのアイテムボックスで預かっておいてくれ」


それはプレゼントしたようなものなのでは?と思った。多分マーカスも同じことを思っているような表情をしている。しかし、ありがたいので素直に受け取ることにした。


「うん!ありがとう父様!」


しかし、いつも危険なことはしないようにと言っている父様が武器を渡すとは。

子供だから武器をもらっても扱えないと思っている?

いや、僕は身体強化があるから持ち上げて振るくらいならできるよ?

それとも雷神剣ゼクシオンには持っているだけで効果が発揮する何かがあるのか?


全ての調度品や美術品のチェックが終わり、マーカスの指示で倉庫の棚に戻していく。

全ての作業が終わった頃には晩御飯の時間になっていた。


晩御飯のために食堂に行く前に掃除のために来ていた作業着や手袋の洗濯をメイドたちに任せた。

そのため服は綺麗なのだが、兄様にはそういう小細工は通用しなかった。


「ふむ、今日のシオンの髪の毛は埃っぽいね。フブキもフェンリルとは思えないほど灰色だ」

「ワフ!?」


兄様の発言に驚いて自分の体を確認するフブキ、僕も自分の髪を触って確かめる。

確かにゴワゴワだ!お風呂に入っている暇がなかったから当たり前の話ではある。

しかし


「まぁ、シオンが元気であるならば僕はそれで満足だ。細かく何をしていたかの詮索なんて野暮なことはしないよ」


さすが兄様!男前!よっ、完璧超人!

僕はヘラヘラした笑顔で会話を流す。いや、流せたと思ったが


「シオン!面白いことして遊んでたなら私も誘ってよ!」


姉様の面白いことセンサーからは逃げられなかった。

遊んでたわけではないのでどうやって誤解を解こうかとワタワタしていたら、父様が助け舟を出してくれた。


「なに、シオンにはアイテムボックスを使って私の仕事のお手伝いをしてもらっていただけだ。遊んでいたわけではない」


姉様はそれで納得してくれたようだ。ありがたい。

逆に疑問を持ってしまったのは母様だ。


「あら。急にシオンちゃんが父様の仕事のお手伝いだなんで、何かあったの?」


母様!それ一番確信的なやつ!聞かないで!

これは返答に困ったぞ。返答によってはややこしいことになりそうだ。具体的には

「欲しいものがあった」→姉様に「シオンだけずるい、私もやる」と言われる。

「日頃の感謝だよ」→兄様と姉様ともう一回掃除をすることになりそう。

本当のことをいう→みんなにニヤニヤされるし、多分グランたちにも伝わる。


数秒思考した後、僕が出した結論は


「父様にお願いがあったんだよ、それを叶えてもらうために手伝ったの。そのお願い事は数日したらわかるから今日は聞かないで!」


苦し紛れの言い訳であった…

結局詳しいことは聞かれなかったが、終始母様にはニヤニヤされてしまった。

次回投稿日は6/13(土)です。

次回27話のタイトルは「宗教戦争?ありませんよ、そんなの。」です。

お楽しみに〜。

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