25 秘密の作戦
午後は文官長とグランにお願いをして、グランにジュストの穴埋めをしてもらうべく文官長の仕事の手伝いをしてもらうことにした。
メイミには僕の部屋の掃除をお願いしたし、シリュウは邸内にいれば僕の護衛をしたりしない。
というわけで僕のお供はシズクとフブキだけである。
そんな僕が向かった先は父様の執務室である。
ノックをし、声をかけて入室をする。
室内にいたのは父様とマーカスだけで2人とも快く歓迎してくれた。
ここでふと、執務室に飾ってある額縁2つが目に入る。
片方はキングホワイトベアの毛皮の一部で、もう片方がその時に着ていた僕の服だ。
キングホワイトベアの攻撃で破けた部分をメイミに縫ってもらいまた着ようとしたのだが、兄様に見つかり額縁に入れて飾ることになった。
せめてもの抵抗で飾る場所が食堂から父様の執務室になったのだった。
額縁を見て微妙な表情になってしまったが、この額縁を見に来たわけではない。
ニコニコしてこちらを見ている父様に話しかける
「実はお願いがあって来ました!マーカスに!」
倒置法にしたのがいけなかった。「マーカスに」の部分で父様が真顔になってしまった。
「わ、私は自分の子にさえ頼られないのかっ!」
父様がオーバーアクションをしつつ泣き出してしまった。多分、嘘泣きである。
マーカスが父様を見る目が少し儚げだったので、空気を読むことにした。
「おほん、では父様!少しマーカスを貸してください!」
父様はすぐに親指を出したグッドサインをした。白い歯まで光っている。やっぱ嘘泣きだったじゃん。
マーカスへのお願いは父様に隠すことでもないので、そのまま執務室内の来客用ソファを使わせてもらう。
僕がソファに座ると、隣にフブキもお座りした。
僕の目の前にマーカスを座らせ、お願い事を切り出した
「実はグランとメイミとシリュウにプレゼントを贈りたいから手伝って欲しいんだ」
「それはそれは。シオン様らしい、いいお考えですな」
マーカスが微笑んで肯定してくれる。父様も「どうだ我が子は素晴らしいだろう」という表情で話を聞いている。父様は仕事に集中しててもいいんだよ。
「それで、具体的には何をプレゼントするおつもりですか?」
それは前々から考えていたことなので、すんなり言葉が出てくる
「グランには文房具かな?あ、カッコいい万年筆を贈りたい!メイミには髪につける可愛いアクセサリーがいいな!メイミの髪がピンクだから、ピンク色以外でね!シリュウには武器の手入れグッズ!砥石とか!」
僕が矢継ぎ早に答えると、マーカスは丁寧にメモを取ってくれる。
マーカスがあまりにも紳士的に話を聞いてくれるので、懸念点についても伝えることにした
「それで…そのプレゼント代のことなんだけど」
僕の切り出した言葉にマーカスと父様は驚いてしまった
「シオン!それくらいの代金であれば父様がいくらでも出すぞ!」
「…ウォルト様、シオン様もそれくらいはわかっています。それでもわざわざ私にプレゼント代について尋ねられるのですから、グラン殿たちへのプレゼント代分、苦労をしたいということなのでしょう」
相変わらずマーカスは父様に容赦がない。これも信頼の成せる技だろう。
僕の言いたいことは伝わったようなので、マーカスにお礼の笑顔を向ける
「むむむ…では、私が代金を払う代わりにお手伝いをお願いしよう。そうだな、調度品や美術品の倉庫になってしまっている部屋がある。それらを一度アイテムボックスに仕舞って部屋の掃除をするように。掃除自体はロミーに頼んでメイドを数名回してもらいなさい」
「はい!」
僕が席を立つと、フブキとマーカスも席を立つ
「では、シオン様にその部屋を案内しつつ、ロミーさんに事情の説明をしてきます。ウォルト様は私が戻ってくる前に、その書類の山のお片付けをお願いいたします」
マーカスの捨て台詞に絶望顔の父様。哀れなり。
とはいえ、僕の懸念を解決してくれた父様には感謝しかないので、笑顔で手を振って執務室を出る。
侯爵邸の中をマーカスの後をついていきながら歩く。フブキも僕の隣でついてきている。シズクは父様の執務室に入る前からずっと僕の頭の上だ。
先ほど父様の話を聞きながら、「そんな部屋あったっけ?」とも思ったが、なるほど、普段の生活であまり来ないエリアにあるらしい。
マーカスがマスターキーで部屋の鍵を開ける。侯爵邸のマスターキーを持っているのは父様と母様とマーカスと母様と兄様の執事の5人だ。僕や兄様ですら持っていない。
マーカスが扉を開けたので、僕とシズクとフブキが部屋の中を覗き込むと、フブキがくしゃみをした。
部屋の中が埃っぽかったからだ。それもそのはず、そもそも倉庫用の部屋なのか、窓がなかった。
フブキは自分の鼻を押さえている。フブキの頭を撫でて部屋の外で待機してもらうように伝えると、僕はポケットからハンカチを取り出し、口にあて部屋に入室する。
部屋の中はそれなりに広くて、設置された棚に調度品や美術品が木箱に入った状態や布に包まれた状態で所狭しと綺麗に並べられていた。
シズクは掃除を始めてしまったが、「これは僕も掃除用の着替えが必要かな?でも着替えるために部屋に帰るとメイミがいるしな〜」と考えているとマーカスが予備の執事用の白い手袋を貸してくれた。
メイドが来るまでは手袋をして、ハンカチで口元をガードしつつ調度品と美術品をアイテムボックスに仕舞っていこう。
右手でハンカチを口にあて、左手で調度品や美術品に触り、アイテムボックスに収納していく。
最初にザクさんアイテムボックスの使い方を教わった時に「慣れれば手袋越しでも使える」と習ったが、問題なく使えるようだ。僕もアイテムボックスの使い方に慣れてきたってことだな。
…訝しんだ表情のザクさんが思い浮かんだ。別に間違いじゃないもん。
マーカスが3人のメイドを連れてやってきた。
中堅のメイドさん1人と若手のメイドさん2人である。
中堅のメイドさんは部屋の中をのぞき、僕の姿と棚に何もないことを確認すると、僕にお礼を言ってきた。
若手のメイドさんたちが僕にマスクがわりの布をつけてくれたり、普段着の上から着れる作業着を着せてくれたりした。これで部屋に帰らなくても済む!
今度は僕がお礼を言って、掃除の段取りを決めることにした。
段取りは中堅のメイドさんが仕切る。
マーカスは段取りがまとまったところで父様の執務室に帰って行った。
まずは棚の掃除。バケツの水で雑巾を濡らし、棚を拭く。
若手のメイドさんは2人とも水属性レベル1らしい。おかげで、水を汲むより水を捨てにいく方が大変だった。
高いところにはシズクを投げ込んで掃除をしてもらったりした。
棚が綺麗になってきたところでヴィッグが調度品や美術品を包むのに使う綺麗な布を台車で運んできた。
「お、いかったいかった。ちょうどええあんばいだったな(よかったよかった、ちょうどいいタイミングだったな)」
油断しているのかいつもより訛りが強いヴィッグ。
あ、僕が棚の後ろにいて見えていなかったのか。棚の横から顔を出し手を振ると、こちらに気づき恥ずかしがるヴィッグ。
いや、メイドさんには恥ずかしがらず、僕には恥ずかしがるんだ?
「うっかり素が出てしまったみたいで、お恥ずかしい限りです」
ヴィッグは厩舎の仕事がメインだが、侯爵邸の用務員さんみたいな仕事もしてる。しかし、ヴィッグは厩舎の仕事の時や侯爵家の人間がいるときはビシッとして訛りが出ないようにしているが、侯爵邸内の仕事をしている時は趣味の延長だと思っているらしく油断しているらしい。
倉庫の掃除にヴィッグも加わって、何やら大袈裟になってきたが、掃除の残りも頑張るぞ!
えいえいお〜
「「「「お〜」」」」「ピキ!」「わふ!」
あれ?声に出てた?
次回投稿日は6/6(土)です。
次回のタイトルは「雷神剣ゼクシオン」です。
お楽しみに〜。




