22 侯爵家大混乱
シルバーバーグ侯爵邸所属、シオン様の専属メイドのメイミです。
私が侯爵家にお仕えするようになってから一番の大事件が起きてしまいました。
シオン様が倒れてしまったのです。
現在、シオン様はベッドで横になり高熱にうなされております。
ケルテクラウン到着前からシオン様の様子がおかしかったことは重々承知をしておりました。
侯爵邸到着後もすぐ休まれるように進言をしましたが、笑顔で
「まだやりたいことがあるから」
と言われてしまうと、止めることはできませんでした。
シオン様が倒れてからその日の晩は侯爵邸全体が大混乱に包まれました。
まず、シズクちゃんとフブキちゃんがパニックになりあたふたし始めました。
そして、騒ぎを聞きつけた旦那様と奥様も取り乱し、アクアお嬢様も泣きじゃくりました。
ルーク様も冷静を装いつつ、読んでる本が上下逆さまです。
シリュウさんはケルテクラウンの街で愛馬で暴走。帰宅途中のリリィさんを誘拐しそのまま教会へ直行、さらにリリィさんの上司の司祭さんを誘拐してくる問題を起こしました。
いつもは私よりも冷静沈着なグランさんでさえも動揺し、執事さん同士の連携がうまくいかず、5人の執事がそれぞれお医者様を連れてきて5人のお医者様に見てもらうことになりました。
リリィさんの上司の方の光魔法といえどもシオン様の自動魔力吸収によって効果が激減してしまいます。
お医者様が処方した薬もシオン様が目覚めてから出ないと飲んでもらうことはできません。
ここは私がしっかりしなければ。
とりあえず皆様にはシオン様のお部屋から出て行っていただき、つきっきりで看病いたします。
シズクちゃんとフブキちゃんも今晩はグランさんにお世話になってください。
とはいえできることと言えば、シオン様の頭に乗せている氷嚢代わりのタオルが温かくなったら、冷たい水で絞ってまた乗せるくらいのことしかありません。
それを何回も繰り返し、現在に至ります。
現在は夜中の3時でしょうか。
ようやくシオン様のお顔も落ち着いて来たように思えます。
これなら少し仮眠しても大丈夫でしょうか?
何かの物音で目覚めました。
目の前には上半身だけ起き上がっているシオン様!
「シオン様!無理をなさらないでください、お薬をお持ちします」
少し喜び、薬を取りに立ち上がる私を尻目に、自分の両手を見て真剣な表情のシオン様。
すぐに私を少し大きな声で呼び止めました
「メイミ!すぐグランにスキルボードを用意してもらって!」
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僕が目覚めると、辺り一面真っ白だった。
あ、これ目覚めてないな。
むしろ永遠に眠っちゃったかも。
「ほっほっほ、縁起でもないことを考えるでないわ」
あ、誰かいる。
「すいません、これはどういう状況ですか?」
僕が尋ねた相手はいかにもな木の杖を持った、神様のような仙人のような白髪ですごい立派な白髭のご老人であった。
「お前さんの肉体が昏睡状態になっておるのでな、ちょっと精神だけを拾い上げたのよ」
ますます言っている意味がわからない。
「何から説明しようかのぅ。とりあえず、ワシはお主の魂をこちらの世界に呼び寄せた者じゃ」
魂を呼び寄せたってことは…
「あ、転生してくれた神様ということですね?」
「そういうことじゃ」
「それはそれはどうもありがとうございます?」
どうやらこの方?のおかげで僕は2度目の人生を送れているらしい。
「それで、どのような用でこちらまで呼んだのです?」
こちらから質問すると、神様は少しバツが悪い様子で自慢の白い髭を触りながら語りかけてくる
「わしは物理と魔法の2つから身を守れれば安全と考えていたのだが、病気という可能性をすっかり失念していたようでな。もう1つギフトをやろうとここまで呼んだのじゃ」
あ、そうか、今僕は病気で昏睡状態なんだっけ?
確かに、言われてみれば、今、僕が昏睡しているのは病気への耐性が一般人並みであり、さらに回復魔法を自動魔力吸収が無効化してしまうせいで回復力が一般人以下になってしまっていたという落とし穴があったからだ。
「そこで、お主の護衛の若武者のスキルを参考に『自動異常耐性』というギフトを送ろうと思う。そもそも状態異常の魔法は『自動魔力吸収』の方で無効になるじゃろうが、『自動異常耐性』の方で病気や毒薬なども無効にできるじゃろう」
それはそれは、病気への恐怖もなくなるので大変ありがたいが、1つ疑問をぶつけてみることにした
「新しいギフトはありがたくいただきます。それにしてもギフトが防御ばかりなのはなぜですか?」
「それは、ここに最初に飛ばされた時のお主の望みじゃろうに」
神様が杖を少し持ち上げると空間に映像が浮かび上がる。
どうやら神様は過去の映像を流せる能力を持っているらしい。
『新しい世界での生は何を望む?』
『平和で豊かな暮らしがしたいです。争いと空腹には耐えられないので。』
『ふむ、ではどのような能力が欲しい?』
『他人を傷つけるのは性に合わないので、守りの能力がいいですね。周りと自分を守れれば、それで。』
映像に映っているのは黒髪で眼鏡をかけていて、気弱そうで少し小太りな中年の男性であったが、紛れもなく”あちらの世界”にいる時の自分であった。
「・・・そういえば、そうでしたね」
「ほっほっほ。ここにいた時の記憶は現世に帰ると曖昧になるのでな、仕方あるまいよ」
神様は杖を下ろし、そのまま腕を組む
「そもそもわしは守りの能力を司っているのでな、とはいえお前さんのギフトは少しやりすぎてしもうたがな。ま、使い手がお前さんだし、大丈夫じゃろ」
守りの神様による守りのためのギフト。それは強いわ。
ギフトに関して聞きたいことを思い出したので聞いてみることにしよう。この神様ならなんでも答えてくれそうだし
「そういえば、兄様と姉様からのプレゼントでギフトが強化された気がしたのですが、気のせいですよね?」
「いや、実際にされておる。2人の願いがわしまで届いたのでな。あの熊の魔物からの攻撃を受けても、今度は服も破けないだろうよ。それにしてもお主の護衛は本当に人間か?わしが授けたギフトを貫通する馬鹿力なんぞ初めてみたぞ」
あぁ、北の砦の稽古の時にシリュウの攻撃を受けて手が痺れてたのはやっぱり『自動物理防御』を貫通してたのか、恐ろしい。
「せっかくじゃから、ギフト以外のスキルも強化しといたのでな、戻ったら確認してみるとよい」
まだまだ神様に聞きたいことはあったのかもしれないが、早く戻ってメイミたちを安心させてあげよう。
神様が手を振って僕を送り返してくれる。
神様に笑顔で応えると、どんどん気が遠くなっていき…
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僕が元気なことを安心したのか、まだ朝の5時だというのにニコニコのグランと、何故かどこからか聞きつけ僕の部屋までやってきた父様と母様。
3人とも目の下のクマが酷いことになっている。
誰か魔法で治してあげて?いや、寝不足解消の魔法なんかないか。
それはそれとしてスキルボードだ。なんか夢で神様と喋った気がする。
そして能力を強化してもらったはずだ。
おそるおそるスキルボードに魔力を流すと文字が浮かび上がる
▪️シオン・B・シルバーバーグ
▪️無属性レベル4
⚪︎身体強化
⚪︎アイテムボックス改
⚪︎モンスターテイム
☆自動物理防御
☆自動魔力吸収
☆自動異常耐性
やっぱり強化されてる〜!
そこの大人たち、僕より喜ばないでください。
次回投稿日は5/9(土)です。
次回23話のタイトルは「アイテムボックス改」です。




