17 侯爵軍の参謀長
休憩のティータイムを楽しんでいると、グランとシリュウが何かを報告にやってきた
「シオン様、数百メートル先からこちらを観察している者がおります」
シリュウが目線で合図した先を確認するが、岡のようになっているのはわかるが木しか見えない。
「ぼっちゃま、いかがいたしますか?」
え?僕が決めるの?母様や兄様もしくはキャロルかジュストの判断じゃないの?伯爵もいるのに?
「その5人の総意です。不穏なことはぼっちゃまに任せると」
ほんとにそれでいいのかな?と思いつつも少し考え出した結論は
「じゃあ、観察している人に気づいたことをあちらにバレないように全力で無視!護衛の人たちにはこれから何か起きるから心構えだけしといてって伝令して!」
僕の指令はグランとシリュウを通して一行に伝わっていく、母様、兄様、姉様、伯爵には僕から直接伝えた。快く了解してくれて、何も気にしていない自然体の演技をしてくれる。みんな肝が据わっている。
姉様だけは何故かソワソワし始めてしまった。自然体の演技とか難しいからね、仕方ないね。
ティータイムの片付けが始まって周りを見渡すが、ほんとに姉様以外、自然体の演技ができている。護衛組はまだしもメイド組や御者組まで自然体の演技ができているのを見た時は、侯爵家って恐ろしいと思った。
姉様のソワソワを誤魔化すために、駅舎町までの移動は家族馬車にした。
またオセロで僕VS可愛いもの連合で戦い、負けてしまったので、どうしようかと悩んでいるところに、まさかの兄様参戦で盛り上がった。
男兄弟VS可愛いもの連合の幕開けである。
しかし、兄様はあまり真剣に考えず、運だよりで選んでしまうので、あまり戦力にならなかった。
今度チェスで真剣勝負を挑んでみようと思った。
そんなこんなで兄弟で楽しんでいたら、何事もなく駅舎町についてしまった。
姉様がほっとした様子をしているので、もう問題は解決したということにしておこう。
現実は問題継続中なのだが。
駅舎町に入ってからすぐ、明らかに盗賊風の男性2名がこちらをずっと尾行していたからだ。
ちなみに姉様以外全員気づいている。わざとか?いや、尾行に慣れていないだけか。
和気藹々と昼食をとり、また午後の移動がはじまる。
尾行をしていた盗賊たちはフロストタウンの方角ではない方に馬を走らせて行ったらしい。
午後の移動で何かが起こりそうだったので、御者席でヴィッグの隣に座っていた。
揺れる道でシズクを落としたら嫌なので、フブキと一緒にメイミに預けておいた。
僕の乗っている馬車は先頭である。左にキャロル、右に伯爵の乗った馬が帯同してる。
少し大きな声で会話を楽しんでいると、道の左の雑木林から男性の悲鳴が聞こえた。
キャロルが指示を出し、全体の進行をストップさせる。
男性の悲鳴は少しずつ大きくなっていき、最後には雑木林から男性が飛び出してきた。
「た、た、助けてくれ〜!」
と男性はこちらに気付き駆け寄ってきたが、雑木林からもう一人、騎馬武者が飛び出して馬車と男性の間に入った。
「盗賊団団長ガルード!その首貰い受ける!」
騎馬武者の正体は、兄様の手紙を届けに一足先に帰った兄様の護衛ギルバードだった。
ガルードと呼ばれた男は驚き、その場に尻餅をついてしまった。
ガルードが完全に無抵抗と判断しキャロルがギルバードに声をかけ諌めると、伯爵が部下に指示を出しガルードを拘束させた。
ガルードの輸送についてはガルードが大男であったため、馬で2人乗りで運ぶわけにもいかず、いくら拘束されているからといって馬車に載せるわけにもいかないので、フロストタウンで檻型馬車を手配してもらうことになり、伯爵軍の1人が早駆けをして行った。
その間は伯爵軍の4名でガルードを馬から降り引き連れて歩いてもらう。
4名とガルードに食料を渡して僕らは先に進む。
午後の休憩の時間には、ギルバードへの尋問タイムだ。
ギルバードの話では全容はこうだった。
盗賊団の人数が想定より多かったので分断のち各個撃破の作戦が立案される。
侯爵軍の有志が村に侵入し、分断の囮とするために僕ら(旅をしている侯爵家一家)の情報を盗賊団に伝わるように流す。
朝、こちらを観察していた盗賊からの報告でガルードが盗賊団の主力を率いてこちらに向かったことを確認。
軍団長やギルバードなどが兵を率いて森に潜伏し、油断して移動している盗賊団を強襲し、大打撃を与える。
今頃は父様が村に進軍し、残党をやっつけているはずだ。
という感じだった。
ギルバードの説明に概ね納得のいった感じの母様と伯爵であったが、母様が最後の質問をギルバードに投げかけた。
「この作戦の立案はリオンね?」
「はい」
ギルバードの肯定の返事にグランがため息をついてしまった。
リオンの作戦立案だということが確定してしまったからである。
リオンという人物は侯爵軍の参謀長であり、グランの息子でもある。
リオンは侯爵家の中でも頭が切れる男であるのだが、寝ているものは親でも使えの精神の持ち主なので、ある種仲間の運用に容赦がない。
リオンからしてみれば、こちらにはキャロルやシリュウといった侯爵軍の主力の一角がいるので、多少盗賊団が行っても問題ないという判断だろうが、同時に守らなねればならない姉様やメイミもいるのだ、過保護くらいでちょうどいいだろうに。
つまりはシオン君オコである。同じグランから教育を受けている弟弟子として兄弟子との対決は近いか?
今回の件に関してリオンは父様と軍団長からは褒められるが、母様とグランからは説教されるだろう。あ、その時は僕も混ざろう。
とはいえリオンの作戦によって盗賊団の脅威は無くなった。胸を撫で下ろしていると、兄様がとんでもないことに気がついた。
「えっと、話をまとめると、父様もリオンも軍団長もギルバードも前線に出ていたんだよね?現状ケルテクラウンの防衛責任者は誰かな?」
兄様の指摘に侯爵家一行と伯爵がハッとした表情になり、ギルバードはみるみる顔が青ざめていった。
「・・・えっと、文官長ですかね?」
苦し紛れでギルバードが言葉を紡ぎ出すと、兄様は圧のある笑顔で言い放った。
「ヴィッグ!現状で一番元気な馬をギルバードに貸すように!ギルバード!フロストタウンを突っ切って今すぐケルテクラウンに帰るように!」
父様・軍団長・リオンがそのあたり何も対策を立てていないわけがないが、責任者が専門外の人では確かに不安なので兄様に同意しよう。兄様の笑顔が怖いとかではないよ、うん。
ヴィッグも慌てて馬の選別に入り、すぐさま馬を1頭用意した。家族馬車に繋がれていた、おそらくヴィッグが一番信頼している馬である。
ギルバードはこれから夜中も走り続け、明日の朝1でケルテクラウンに着くはずである。これから頑張るギルバードとヴィッグのお気に入りの馬に敬礼。
ギルバードが先に出発し、休憩の片付けが済んだところで僕らも出発した。
フロストタウンへの途中で檻型馬車と同行しているハーヴェイ伯爵の兵士さんたちとすれ違った。彼らは時間的に今日は野宿になるだろう。今、ガルードに同行しているツヴァイクロー伯爵の兵士さんたち共々特別ボーナスをあげてほしいことをツヴァイクロー伯爵に進言した。
「はっはっは、シオン殿の進言、心より承ろう」
と、豪快に笑って受け入れてもらった。
そんなこんなで少し暗くなり始めたくらいでフロストタウンにつきました。
次回投稿日は5/2(土)です。
次回18話のタイトルは「兄様の魔法」です。
ゴールデンウィーク毎日投稿を行います!
2日から6日まで毎日投稿しますのでお楽しみに!




