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14 出店とロクセン王国の食文化

僕のリクエストがペットショップだったのに対して、姉様のリクエストは美味しい食べ物だった。それを聞いた、母様と姉様のメイドが少しため息をついていたが、僕はとても姉様らしいなと思った。

美味しい食べ物というリクエストだけでは候補が多すぎるので、追加で姉様が提案したリクエストが、貴族の私たちが普段食べれない物。というものだった。そうなると執事組たちは頭を抱えたが、《赤き竜の爪》のメンバーたちがいいアイディアを持っていた。


「街の広場にはだいたい出店が出ています。多少当たり外れもありますが、だいたい美味しいですよ」


ということで出店の食べ歩きに決定。母様が不慣れなものを食べるのに心配をし、多少渋ったが、ツヴァイクロー伯爵家のかかりつけ医に胃薬を用意してもらうことで納得してもらった。一応、毒耐性持ちのシリュウが毒味をするが、街で商売を行っている者に毒入りの食べものを提供する者がいるというほど治安が悪い街ではないはずだ。(ツヴァイクロー伯爵談)


また執事組の先導で街を歩き、広場に着くとメグさんがこちらに大きく手を振っているのが見えた。《赤き竜の爪》の面々が広場で待機をしていてくれたのだ。広場での食べ歩きに関してはメグさんがアクア姉様を接待することになっている。基本僕ら(その他の面々)はついて行くだけだ。最初に食べるお店を決めるため、メグさんが姉様に質問をした。


「アクアお嬢様はどんなものが食べたいとかありますか?」

「ん〜。あったかいのがいい!」


「なるほど〜」と相槌を打ちながら考えるメグさん。いや、あれは考えてないな、目線でジークさんとザクさんに案を出せと言っている。するとザクさんが指を刺したので、メグさんがその刺した先のお店を確認した。納得したのか姉様を案内し始めたので、僕らもついて行く。案内されたお店は、うどんのようなものを提供しているお店だった。確かにあったかい食べ物だ。


なぜこのロクセン王国に和食があるか。それは本当に和国という国が近隣にあるからだ。和国は通称で、正確には『和の島の連合国』。その名の通り大小様々な島の連合国家であり、その島の数は60個ほどなのだとか。ロクセン王国の南東に位置し、一番近い港同士で船で丸1日といった距離感だ。ここでは昔の日本のような文化が育まれており、特に食に関してはほぼ同じであった。ロクセン王国がその港街を統治するようになって以来の友好国であり、港街と真逆の位置にある侯爵領まで和国の食文化が浸透している。


姉様からのOKサインが出たので、執事組とジークさん、ザクさんが買いに走る。

残りの僕らはイートインスペースで座れる場所を探して待っていた。実際に買ってきて合流をしてからも、全員が一斉に食べるわけにもいかず、シリュウとジークさんとザクさんは近くの出店で売っていた肉串を食べつつ辺りを警戒している。うどんは使いまわせるように木の器に入っていて、木の箸で食べるものだった。姉様が箸の使い方に苦労しつつ、うどんに喜んでいるのを見て和みつつ、フブキのために一つのうどんを少し冷まして汁を減らす。そして、器ごと地面に置いてフブキに食べてもらう。僕も食べつつ、たまに1・2本を籠の中のシズクにあげる。

メグさん、メイミ、ナタリー、グラン、バーツもうどんのあったかさにホッとしている様子だ。

その後もお好み焼きのようなものを姉様とシズクとフブキとシェアしつつ、生搾り果物ジュースを飲んだりした。最後にラスクのようなお菓子を食べたところでお腹いっぱいになってしまった。僕たちがまったりしている間にシリュウたちも交代しつつ、ご飯を食べたらしい。「満足するまでお腹いっぱい食べてしまうと護衛としていざという時動けなくなるから」とシリュウとナタリーは腹八分目にしたらしいが、それに合わせてシークさんとザクさんも腹八分目にしたらしい。メグさんは?聞くと


「魔法担当で急に動くことがないから、動けなくなる程食べなければいいの。」


と言われてしまった。

特段珍しい食べ物を食べた気はしなかったが姉様は満足しているようだった。そういえば、うどんとかお好み焼きは貴族ご飯としては滅多に出ないか。そして、そんな食べ物たちを食べ慣れているように食べる僕に対して不思議に思うことはない大人たち。それで良いのか?まぁ、変に追及されるよりはいいか。


姉様のリクエストのご飯が終わったので、兄様と合流予定のお店に向かって移動を開始した。

主人公が街中を歩くと何かしらの犯罪に巻き込まれるのが定番だが、朝から全然治安の悪い人たちを見かけない。どうやら僕らの1日滞在が決まった日からツヴァイクロー伯爵と配下の伯爵軍がパトロールを頑張ったらしい、実に平和だ。ちなみに、すでにさっき休憩した地点から現代日本人なら車を使おうと思うくらいの距離は歩いている。この世界の人はみんな健脚だ。


街の中心地から少し離れた場所にある、伯爵邸並に大きい建物の前についた。ここが目的地のお店か。

現代で言うと、一号店と本社が入っているようなものなので、力のある商会の本店は大きくなるのだそうだ。

入店するとすぐにお店のスペースがあるわけではなく、広いエントランスがあった。左奥のテーブルとソファーにキャロルの姿を見つけたので手を振る。それに気づいたキャロルが立ち上がりお辞儀をしたので兄様もこちらの存在に気がついた。


「アクア、シオン、お疲れ様。ショッピングは楽しめたかい?」

「「うん!」」


と、僕がシズクを、姉様がフブキを持ち上げて兄様に見せる。その行動に少し戸惑った兄様だったが、シズクのティアラとフブキのスカーフを見て気づいたようだ。兄様は大袈裟に右手を顎につけるポーズをとった。


「なるほど、いい買い物ができたようだね。ここでもその調子で頼むよ」


シズクをメイミが持っている籠に戻し、姉様もフブキを床に降ろす。

そのまま僕が姉様の右手と手を繋ぎ、兄様が姉様の左手と手を繋ぐ。仲良し3兄弟の陣の完成だ。

兄様がエントランスの奥に歩き出したので、僕がみんなに合図を送りついてきてもらう。

店舗エリアの入り口にピシッとした紳士服に身を包んだ男性が立っていた。髪型も整髪剤で綺麗な七三分にまとめられているが、苦労をしてそうな生え際が気になる男性であった。

兄様がすでにコンタクトをとっていたのか気安く声をかける。


「ロンダート。先ほど話した弟妹が来たから案内を頼むよ」

「はっ」


ロンダートと呼ばれた男は僕らに綺麗な会釈をした後に僕らに挨拶をした。


「では、改めて。おぼっちゃま、お嬢様方、ようこそいらっしゃいました。私、ここヘルゲンフェルン商会の本店で販売部門の責任者をしております、ロンダートと申します。本日は店内の案内をさせていただきます」


姉様が僕と繋いでる方の手をあげて「よろしく〜!」と言ったので、僕も「よろしくお願いします!」と声をかけた。

ロンダートさんが最初に案内してくれたのは調度品コーナーだった。綺麗なランプや壺、絹のカーテンなどが置かれていて、侯爵邸に置かれていても違和感のない、むしろふさわしいものではあるが、旅のお土産としてはイマイチだと思った。せっかくなので、ロンダートさんと話をしてみることにした。


「ロンダートさん、フェルンタウンの名物ってなんですか?」


ロンダートさんは少し驚きを見せたが、ちょっと考えた後答えてくれた。


「そうですな、食べ物であれば羊のチーズやじゃがいも、食べ物以外ですと、羊毛や革を使った手芸や木彫りなどの木工、あとは布の染め物ですかな」

「であれば、高級な調度品よりそっちの方がいいです!」


と元気に主張してみれば、兄様とグランの賛同を得られた。ロンダートさんも機嫌を損ねることもなく「それは失礼いたしました。では、こちらにどうぞ」と移動を始めた。

次回投稿日は4/11(土)です。

次回15話のタイトルは「旅のお土産」です。

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