気が付いたら…
状況を整理しよう。
さっきまで自分は謎の少女を追いかけていた。
すると眩いばかりの閃光に襲われ意識を失ったと見られる。
目が覚めると知らない森にいて、どうやら異世界っぽそうである、と。
「落ち着け、まだ見ず知らずの異国の可能性が…!」
そんなことを思った瞬間、角の生えたウサギの様な生物が空を飛んでいるのが目に入った。
…フラグって怖いな。と実感する。
とりあえず落ち着こう。
「…今何時だ?」
日は高い。
まあ、マッグとナルトのハンバーガーの冷め具合からすると、あまり時間も立ってなさ気なんだよな。
いやもしかするとそんな物理法則すら無い世界の可能性もあるのだが。
「せめてもの救いは持ち物はあるってことかな…」
意識を失う前に持っていたものはすべて転移されたようなのだ。
まぁ、異世界で日本円なんて使えないよなぁ…なんて考えれるくらいには落ち着いてきた。
異世界小説ものなんかを読んで、もし自分がこうなったら…みたいなことは妄想していたし。
「とりあえず移動するか」
森の中ではなかなか人には会えない。
そうと決まればと荷物をまとめ、早速移動を開始する。
それにしても、目の違和感が取れない。
なんとも言えない感覚がまとわりついている気がする…。
偶然近くにあった湖で目を洗おうとのぞき込んだ。
「特に変なところはないか…普通に瞳は黒いし。強いて言うなら瞳の中に桜吹雪のようなモノが舞っているくらいか…」
謎の少女の目にもあったしおかしくは無いだろう…。
そう考え目を洗う為に水を掬ったところで、
「いやおかしいだろ!?」
自分にツッコミを入れてしまう日が来るとは…疲れてんのかな、俺…。
一度深呼吸してもう一度覗く。
「…あれ?」
すると、桜吹雪が無くなっていた。ついでに目の違和感もなくなっていた。
「見間違いだったのか…?」
いや、そんなはずはない。確かに桜吹雪が舞っていたはず。
しかし何度見ても桜吹雪は見えない。
やっぱ疲れてんのかな…。なんて思い、一応目を洗う。その時に掬った水の上になにか映っているのが見えた。
『ただの水』
効果:特になし。
価値:無し(環境により変動)。
ただの水か、特になしって事は飲んで腹を壊すこともないのかな?
…って、
「そこじゃねぇよ俺…。なんで変なものが見えてんのかを突っ込むのが先だろ…」
違和感が無くなった瞬間から、なんか鑑定結果みたいなのが見えるようになっていた。
さすが異世界。なんでもありか…。
しばらくいろいろ試していたら、念じれば鑑定のオンオフを切り替えれるようになった。
「ここまで来ると、異世界と認めざるを得ないよな…」
肩を落とす反面、内心では叫びたいほど興奮しているのだが。
「いろいろテンプレを試してみる価値はあるな」
そう言って異世界物の小説を読んでいてやってみたいと思っていたことをやって見る。
「まずはそうだな。ステータス」
何も起きない。
「何も起きないか。なら『ステータスオープン』」
目の前に空中に光で書かれたかのようなプレートが浮かび上がってきた。
―――――――――
ステータス
名前 : トウキ・スルガ
称号 : 異世界転移者
HP : 1 ▲
STR : 1 ▲
INT : 1 ▲
VIT : 1 ▲
AGI : 1 ▲
《スキル》
無限異空間収納
《ギフト》
エルデアの加護
―――――――――
初期値全部1かよ…この世界の平均はわからないから数値はなんとも言えないけど全部1は手抜きだろ…。HPくらいなんとかならなかったのか。ハードモード過ぎる…
ステータス横の三角形はMMORPGによく出てくるステ振り可能マークか?
試しに押してみるとステータス値が上がったので推測は正しいようだ。
とりあえずなんとなくでバランスを考えながら振れるだけステ振りした結果、
―――――――――
《ステータス》
名前 : トウキ・スルガ
HP : 75
STR : 29
INT : 26
VIT : 31
AGI : 100
―――――――――
………やっちゃったぜ☆
なぜAGIにガチ振りしたんだろうか。出来る事なら5分前の「当らなければどうということはないッ!」とか言ってた過去の自分と赤い人を殴りたい。
いやさ、このステ振り、一度上げたら戻せなかったんだもん。仕方ない仕方ない。
その後も色々試したりした結果分かったことは、
インベントリは触れているものを入れられる。生きているものは不可能。
ステータスウィンドウ内に書かれているものは任意で非表示にできる。しかし鑑定能力に対しては無効。
こんな感じだ。ギフトについては何もわからなかったが、瞳に桜吹雪が舞っていたことを考えると、あの少女の物だろうと思われる。スキルに鑑定系が無いのに鑑定出来るのはこのギフトのおかげかもしれない。
とりあえず面倒事に巻き込まれるのは嫌だから、必要最低限以上のものを全部非表示にしておいた。
称号は言わずもがな、インベントリみたいなスキルは小説とかでも転移者限定だったりとレアスキルであることも多いので隠してたほうが無難だと判断した。それと、苗字も隠しておく。
ギフトも嫌な予感がするので非表示確定である。ステータス能力もまだ平均がわからないので非表示だ。…あれ?ほぼ非表示じゃ?
一通り実験が終わったらお腹が空いてきたのでお昼(?)を取る為に移動することにした。
それにしても手持ちの食料が心もとない。
なんせマグとナルトのハンバーガー一個にポテトのM一つくらいだ。
一応ジャーキーなどを買っていたのであるにはあるのだが、確保しておくに越したことはない。
とは言っても、周囲にある果実が食べれるのかもわからない。危険を犯すにはリスクが高すぎる。
どうしたものかと思いつつしばらく進むと少し開けた場所に出た。
「歩くのも少し疲れてきたしここらへんで食べることにするか」
そうしてハンバーガーを取り出した瞬間。
―――ガサッ!
「っ!?」
背後の草が揺れ、
―――ヒョコっ
蛇の頭が出てきた。
そのまま蛇はこちらの手元のハンバーガーを見つめている。
「………」
少しハンバーガーを右にずらす。
すると蛇の頭も右にずれる。
「…欲しいのか?」
返事は期待していなかったが口にすると、
―――コクコク
…いま反応した?気のせいだよな?
襲われたくないのでハンバーガーを差し出す。
すると蛇の頭が後ろからさらに8本出てきた。
そしてみんなで食べ始める。
「…ん?」
よく見るとすべての頭はひとつの胴体に繋がっているようだった。
こういうのなんか居たよな…なんて言うんだっけ?ヒュドラとか九頭大蛇?
―――ツンツン
腕を突かれ見てみると、一番太いリーダー格らしき頭がもっと欲しそうな目でこちらを見ていた。
『もっと頂戴』
もはや言ってきた。
………え?
気のせいだよな?俺疲れてるのかな…
仕方無いのでポテトも渡す。
少しして食べ終わった蛇達(?)が何やら会議のような感じになった。
暫くして話が終わったのか、一つの頭がこちらに近づいてきて―――
―――カプッ
「うわ!?」
痛くはなかったのだがいきなり右手首に噛み付かれた驚きで振りほどく。
「何だこれ…」
すると噛まれた手首の皮膚が蛇の革のようになっていた。
焦っていると蛇はすべての頭でお辞儀してから去っていった。
呆然とそれを見届けたあと、もう一度手に視線を戻すと、
「あれ?」
蛇の革のようになっていたところは元に戻り、代わりに9の頭を持ち、一つが自分の尻尾を呑み込もうとしている蛇の模様が出来ていた。
―――――――――
しばらくあの蛇について考えていたが、どうにもならなさそうだったので諦めた。
移動しようと立ち上がると、ちょうど前方から人が歩いてくるのが見えた。
話しかけようと思い近づくと、向こうから話しかけてきた。
「すみません、少し伺いたいのですが…」
フルメタルプレートの鎧を着た金髪碧眼のイケメン、年はさほどなられてなさそうな印象を受ける。
「はい、何でしょうか?」
「この辺で9つの頭を持った蛇を見かけませんでしたか?」
「それならさっきそっちの方に…」
そう言って右手で蛇が行った方を指す。
「…ッ!!」
すると、騎士のような人は顔色を変えた。
「すみませんが、その模様はどこで?」
手首にある模様を指して聞いてくる。
「さっきその蛇に噛まれた時に出来たんですが…」
なんか、嫌な予感がしてきたぞ…
「…少しご同行願えますでしょうか?」
ほらやっぱり。




