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残業と幽霊とストーカー  作者: オツタロ


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8/10

第8話 作戦会議

いつも通りに管理部メンバーは出社している。


その中に源 めぐみの姿だけはなかった。


「源さん休み?」「いつも早く来ているのにね」


仕事前の数分、みんな口々にそんなことを言っている。


「飲みすぎて二日酔いとかかな。」「源さんは未成年だからお酒飲んでないでしょ」


そんな会話をしている人もいる。


「昨日はお楽しみだったんじゃないかな」


そんなことを小声でコソコソとニヤニヤしながら話している人たちがいる。


午後課長が佐伯の机にコーヒー缶を置いた。


「佐伯君、最近残業ばかりで忙しかったでしょう。」


「そうですね、残業が多かったですね。今日業者から見積もりとか導入機器の再選定とかの資料が届いたのでそれをまとめようと思います。」


「いやいや昨日も飲み会で酔っ払っていたし今日は早く帰って休んだ方がいい。」


「でも部長とかもプリンターの件を気にしているって話でしたから今日中に仕上げようと思います。」


「あーそうだっけかな。まぁ今週中に出してくれたらいいから。今日は帰りなさい。」


「えーっと。」


「課長が帰っていいって言ってんだから帰ろうぜ。何なら俺と飲みに行こう。」


鈴木が横やりを入れてきた。


「昨日飲んだし俺は毎日酒飲むタイプじゃないし。」


「何だよー付き合い悪いなー。同期だろー。」


「その同期話は昨日も話しただろうが!」


「2人は仲いいね。まぁたまにはゆっくりしたほうがいいよ。休めるときに休んでおくことに限る。」


課長は自席に戻って行く。


「コーヒーありがとうございます。」


と言っておいた。課長は手を振って答える。


今日後輩ちゃんが休んでいることと課長がわざわざ定時で帰るように言ってきたこと、何か関係があるのだろうか。


昨日は酔っ払ってしまって後輩ちゃんに何があったのかわからない。


高橋さんなら何か知っているかと思ったがまだ話す機会が持てていない。


メールやチャットを送っているが何も反応がない。


既読無視というやつだ。


しかしその対応が何かあったのだと言っているような気がする。


定時になり俺は早々に帰ることにした。


この時間に帰るのは本来ならば後輩ちゃんのポジションなので自分が部署で一番早く帰ることに違和感がある。


後輩ちゃんに個別チャットを送ろうか。


会社から支給されているスマホがあるから見れるはず。


だが仕事以外では基本的に使用はしていないので二日酔い程度で送るのも変な気がする。


会社を出て玄関のところに立っていた。


すると高橋さんも退勤するようだ。


「お疲れ様です。」


と挨拶をすると


「ついてきなさい。」


と言われ高橋さんの後を追うように駅とは反対方向に歩く。


そして小さな個人喫茶店に入った。


店に入った瞬間タバコの匂いがした。


「タバコ吸われるんですか?」


「そんなわけないでしょ。ここなら会社の人も来ないだろうし来たとしてもこの位置ならすぐに気が付ける。」


店内はカウンターが4席にテーブルが2つ。


地元のなじみの客しか相手にしていないような雰囲気だ。


店主の反応も誰だ?って感じで、いらっしゃいませとも言っていない。


高橋さんはそのまま奥のテーブルに腰かけた。


俺はその向かいに座る。


着席するや否や


「今夜あなたのところの課長と話すわ。」


「課長と夜にですか?」


「今日源さんが休んでいるのは知っているわね。一緒のチームだから当然だけど。」


「はい。彼女が関係あるんですか。」


「昨日の飲み会の後課長が彼女を無理やり居酒屋に連れ込んでセクハラしたの。」


「え?課長がセクハラ?さすがにそれは・・・」


信じられない。普段から温厚なあの人に限ってそんなこと。


「源さんがね、スマホの通話アプリで私に教えてくれたわ、スマホから課長のゲスな声が聞こえてきた。」


「だって課長は妻子持ちですよ。」


「だから?何の意味があるの?」


「いや、失うものが多いってことですよ。このご時世セクハラなんてばれたらクビですよ。


クビにならなくても降格処分だって避けられないですよ。」


「うちみたいな古い会社で知名度もない会社でセクハラ1件あったからって何になるの?


取引先から契約を切られるとでも思っているの?

カエデは飛び降りたのに社長が箝口令を敷いたせいであなたは彼女の存在だって知らなかったじゃない。」


「・・・」


返す言葉もない。


テーブルに置かれたおしぼりを握ってその冷たさに癒しを求めてしまう。


「昨日私の記憶通りならあなたは酔いつぶれて情報の人たちにもたれて最寄駅に歩いて行ったわね。」


「はい・・・そういえばその時高橋さんもその場にいたような気がします。」


「そうよ、あなたに水のペットボトルを渡して駅まで行って私だけ彼女の後を追いかけたの。」


さすが女子社員からは信頼されていると言われるだけのことはある。


俺とは気合の入り方が違う。


「課長と源さんと何人かのメンバーが一緒に彼らの最寄り駅に向かって行ったわ。」


「課長ってそっちの駅が最寄り駅でしたっけ?」


「違うわ。


ここからは源さんから聞いた話だけど、駅に近づいたあたりで課長が2人だけで二次会に行くっていって彼女の腕を引っ張って住宅街にある居酒屋に向かったそうよ。」


「他の人はどうしていたんですか、絶対に怪しいじゃないですか。」


「だからグルなのよ。課長が女を手籠めにするための罠よ。


みんなで二次会と思っていた彼女はさぞかし驚いたでしょうね。」


課長をリーダーにしてその課長に従うチームが管理部内にいるということか。


「誰なんですかその課長とグルになっている人ってのは。」


「そこまでは話してくれなかったわ。相当ショックだったんでしょうね。


半年も一緒に働いている人がまさか自分を陥れようとしていたなんて。」


それを聞いて俺もショックだ。


俺は酔いつぶれていたので誰が一緒に帰っていたのかなんて覚えていない。


強いて言うなら肩を貸してくれた情報の等々力さんは無関係ということだ。


まさか課長がそんなことをしていたなんて。


日頃家族は大事にしないとね。


とか言っていたのに。


「それで源さんは大丈夫だったんですか。」


「ええ、店を出ようとしたところに私が駆けつけて保護したわ。


課長は怒ってお金を払わず帰っていった。


彼女は独り暮らしみたいだからタクシーで実家に送っておいた。


同じ県内に住んでいてよかったわ。


今日は大事を取って休むってことにしたの。


今朝からチャットで会話しているけど落ち着いている感じはするわ。」


対応がイケメンすぎる。


高橋さんと俺、どちらが頼りになるかと言われたら一目瞭然だ。


大事な時に酔いつぶれていた俺は幻滅されて当然ですね・・・。


「この前、源さんに5年前のことを話して事の深刻さをわかってもらったわ。


彼女の会社から支給されているスマホのチャットアプリを見たの。


課長から毎日何件も個人チャットが来ていたわ。


仕事のやり方みたいなものから今度飲みに行こうというものまでどちらかと言えばプライベートよりなものね。」


「あの課長がですか・・・?」


信じられない。仕事にまじめで家庭第一だと思っていた。


「珍しいというものではないわ。こういうケースは何度か相談されたことがある。


既婚者なら手を出してこないだろう、家族が大事と言っている人なら安心だという先入観。


相手はそうやって女の子の警戒心を解くの。


特に社会に出たばかりで右も左もわからない子は狙われやすいわ。」


「そういうのを高橋さんは今まで防いできていたんですか。」


「そうよ。そして阻止された男性側から陰口を叩かれる。私は社内の嫌われ者よ。


今回源さんはそういう事情を知った上でプライベートなやり取りがあるチャットの履歴を見せてくれた。


だから防ぐことができた。」


自分が嫌われても誰かを助け続ける。


揺るぎない信念を感じる。


「今夜源さんの件と橘さんの件で課長と話し合うんですね。」


「カエデの件だけよ。私が源さんの件を話したところで何も進展しないわ。それに録音データはすでに持っているからこれ以上私から話しを持ちかける必要はない。」


「橘さんの件は話してどうするつもりですか。


課長が5年前のことを認めたら勝ちですか。


この程度では課長が会社を辞めることもないし、ましてや逮捕されることもないですよね。


高橋さんの自己満足でしかない。」


「・・・そうよ、それの何がいけないの。


私はこのために5年も調べてきたのよ。


周りから煙たがられて嫌われても耐えてきたの。何がいけないの。」


会社の体制、考え方が古いのだ。世間の大企業のようにはいかない。


課長が本当のことを話すとも限らない。


その時天から何かが降りてきた。


この閃きは後輩ちゃんから最初に相談を受けたときの定食屋での閃きに似ている。


これならいける。


「高橋さん、秘策を思いつきました。」

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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