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8話 美味姫

ーー未開拓ダンジョン、25層にて


 『グオオオオオ』

 『グェエエエエ』


 鳴き声の方へと歩き進めると、程なくして2体のモンスターを発見した。


 「あれはアンダードラゴンに迷宮怪鳥か、2体とも大体50階層付近のモンスターだったはず、それがここにいるという事は、このダンジョンでは階層変動が頻繁に起きている事なのかもな」


 通常、階層変動は多い時でも2ヶ月に一回ほど、もしかしたらこのダンジョンではそれよりもかなり多い頻度で起きているのかもな。

 攻略者歴10年以上の俺でもまずはじめてだけど。


 「【リミットボーナス】解放」

 『キュイーン』

 『かしこまりました、IDをどうぞ』

 「スキル名"剛拳"」

 『承認しました、強力なスキルですので対象に狙いを定めてお使いください』

 「あいよ」


 アンダードラゴンは昔、100頭くらい狩ったけか?

 迷宮怪鳥はあんまし出会わなかったから、60頭ほどだが、まぁいけるだろ。


 『キュイーン』

 「行くぞトカゲにニワトリ野郎、【奥義】デュアルインパクト!!」

 『ドゴォン』


 そうして俺は2頭に向けて、剛拳をぶっ放した。


 「す、凄いぞ!なんて一撃だぁ!!」

 「ん、なんだこの声は?」


 その時、どこからともなく若い女性の声が聞こえた。


 「馬鹿でかいドラゴンに大怪鳥を薙ぎ倒すおっさん!なんて絵面なんだ!!これは大バズり間違いなしだぜ!」

 

 そうして俺は声の主を発見する。


 「あ、君か!」

 「おおっと、こちらに規格外パワーのおっさんが気がついたようだぞぉ!」


 見ると先ほどまで寝ていた美味姫さんが、ハンディカメラを持ってこちらを撮っていた。


 「良かった、回復したのか」

 「良かった?おいおい何を安堵しているんだおっさん、ここはダンジョンだ未知の生態系に謎深きモンスター達の跋扈するワンダーランドなんだぞ」


 そう話す美味姫さんはノリノリでカメラを持っている。

 この人、こういうテンションの人なのか。

 ずっと寝てたから分からなかったな。


 「良かったよ元気になったみたいで!」


 そう言って俺は美味姫さんに手を振った。


 「元気になったかだって?この美味姫に食えぬものはないのだ、大食漢にしてゲテモノ喰らいのASMR系配信者!それが私、美味姫様だぁー!」


 何やら大声で叫びながら美味姫は両手を上げてグリコみたいなポーズをした。

 なるほど、あれが彼女の決めポーズなのかな。


 『グオオオオオ』


 その時、先ほど強烈な一撃を喰らわせたアンダードラゴンが起き上がった。


 「おおっ!凄いぞおっさんの大ピンチだぁ~!」

 「ピンチってほどでもないんだけどね」

 『キュイーン』


 そうして俺の拳が金色に輝き出す。


 「さぁ終わりだよドラゴン君」

 「キタキタキター!!出るぞおっさんの必殺、おじおじボンバー!」

  

 俺が金色の拳を構えると美味姫さんは大声でそう叫んだ。

 おじおじボンバーって、そんなネーミングはしないでしょ、普通。


 『グォォオ』


 大きな鳴き声を上げて突進してくるアンダードラゴン。

 おじおじボンバーはやれないけど、これで終わりだよ。


 「貫けスパイクインパクト!!」

 『ズドォン』


 金色に光る右拳から放たれた正拳は、アンダードラゴンの頭を吹き飛ばした。


 「ふぅ……これで終わりだね」

 「うおおおお、おっさんナイスううう!」


 そう言って美味姫は、グッジョブを俺に向けてくるのだった。


 

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