6話 階層変動
難関ダンジョンには、特筆べき特徴として階層変動と呼ばれる現象がある。
例として、不定期に40~49層を1~10と入れ替えるなどがあり、そこで起きるのが上位モンスターの低級階層での出現。
つまり、今回の1層に出現したドラゴンが良い例である。
ーー???ダンジョン、2層?にて
『ゴゴゴゴゴ』
凄まじい轟音と共に下がっていく地面、太一は近くの岩にしがみつき耐えていた。
「ぬおおおおお、まずいあの女の子は……良かった、ここら一帯の地面ごと下がってるからテントも俺と一緒に落ちてるから大丈夫そうだ、ていうかこの感じまさか」
ーーチャット欄ーー
"な、なんだよこれ"
"これ大丈夫なやつなの?"
"警察か攻略者に連絡した方がいいのでは"
パニックとなるチャット欄。
そうしてここで突如として配信が切れてしまう。
『プツン』
「この感じ、配信が止まったのか」
気がついた太一はそう呟くが、地盤落下による負荷で身動きが取れず、何もする事ができなかった。
『ゴゴゴゴゴ』
「一体、どこまで落ちるんだ……何にせよ、保護スキルだけでも張っておこう」
そう言って太一は、右手に装備しているスキルリングの力を使い始める。
『キュイーン』
「【リミットボーナス】解放」
『かしこまりました、IDをどうぞ』
「スキル名"A級障壁"」
『承認しました』
『キュオッ』
太一がそう言うと、指輪から青い結界が展開される。
スキルリング、それは攻略者がスキルを使用するために使うアイテム。
10~50ほどのスロットを使用可能であり、スロットの数はその攻略者のランクで決まる。
太一は元SSランク、引退した今でもそのスロットは30ほどあり、並の攻略者よりも少し多い。
『シュオン』
青い障壁は、太一とテントを包み込むように展開された。
「よし、これがあれば落下の衝撃を和らげる事ができるだろう」
『ズゴゴゴ』
「にしてもまさか、こんな近所のダンジョンで階層変動に遭遇するとは……」
太一は昔挑んだ、難関ダンジョンのことを思い出していた。
「もしかしてここ未開拓ダンジョンとかなのか」
そうして太一は、2層ごとダンジョンの下層へと落ちていく。
未開拓ダンジョン。
ダンジョンのほぼ99%が踏破済みの現代においてのそれは、危険度SSの未登録迷宮のことを指す。
基本的に人類が一度も入った事のないダンジョンはないとされており、それなのに未登録というのはつまり、踏破者はおろか生きて帰った者もいないという事になる。
そう、未開拓ダンジョンとはその存在が確認されただけで、世界最難関ダンジョンという事になるのだ。
「引退してのんびりダンジョン配信して生きて行こうと思ったのに、こんな目に遭うなんて……まぁでも、とりあえず頑張るか」
そうは言っても太一は内心焦っていた。
未開拓ダンジョンは、SSランクであっても単独での攻略は自殺行為と言われている。
元SSランクと言えど、今はダンジョン配信者。
太一は生きて帰れないかもしれないと、そう考えているのだった。




