38話 ダンジョン生活vlog
ーー未開拓ダンジョン80層にて
『ビビビビ』
「んあ?もう朝か」
ハイ・オークの単独討伐から一夜明けた朝、俺は男性用テントの中で目を覚ました。
拠点内に置かれた2つの巨大テントは、1つが男性用、もう1つが女性用となっており、中は各自の個室が用意されているほどには広い。
「8時か……少し寝過ぎたな」
ダンジョン内では、原則として地上の時間が使われている。
そのため日光の届かないこのダンジョンでも、今は朝の8時なのだ。
『ガチャ』
扉を開けると長めの廊下に出た。
廊下の先にはトイレと洗面所があり、とりあえずそこに行って顔を洗うとしよう。
「あ、千川さん!おはようございます」
「やぁ春一君、おはよう」
廊下に出ると寝起きの春一君がいた。
「千川さんも今起きたところですか?」
「まぁそんなところかな、7時に起きようと思ってたから少し寝過ぎてしまったよ」
「昨日は大変でしたからね、疲れとかが出たんじゃないですか?」
「はは、そうかもな、まったく歳は取りたくないもんだよ」
昨日、俺は春一君と共にハイ・オークを討伐している。
あの援護のおかげで、最大火力をぶつける事ができたので春一君には感謝をしている。
「顔洗いに行く感じっすか?」
「まぁそんなところかな」
「なら一緒に行きましょう!」
「おう」
「にしても昨日は良いもの見せてもらいましたよ、あの【一鉄】を間近で見れるなんて!」
そう言って春一君は目を輝かせる。
「大したもんじゃないさ、春一君の【ムラクモ】の方が凄いよ」
「いやいや千川さんの【一鉄】のほうが凄いですよ」
お互いに謙遜と褒め合いをする両者。
俺のガントレットなんて、シンプルな性能なんだし【ムラクモ】の方が多彩そうで便利に見えるけどなぁ。
「あ、太一さんに春一くん」
「郷士さん、おはようございます」
顔を洗いに洗面所へ来ると、眼鏡を外した郷士君がいた。
「おはよう郷士君、よく眠れたかい?」
「ええ眠れました、ただ村松さんが部屋に戻っていないみたいで」
「ああ村松さんならいいよ、どうせ拠点の拡張とかしてるんだし」
「春一君、それでも心配だよ顔を洗ったら探しに行かないと」
郷士君は心配そうな顔でそう答える。
だがな郷士君よ、拠点拡張をしている村松さんなら大丈夫だと思うぞ。
あの人は、好きな事をしているときの体力無限だから。
「そうかい、なら郷士君、村松さんを見つけたら俺の【ムラクモ】の整備は終わってるかも聞いてもらってもいいかな?」
「うん、いいよ!」
笑みを浮かべてそう答える郷士君。
郷士君、今年で28歳とは思えない童顔だよな。
パッと見だけど春一君と同い年に見えるもん。
「あ、そういえば太一さん、さっき美味姫さんがここへ来てましたよ」
「え、美味姫さんが?」
「はい、なんでも太一さんとダンジョン生活vlog撮りたいって言ってましたよ」
「ダンジョン生活vlog……」
あの人は本当にブレないな。
仕方ない、顔を洗ったら探しに行くとするか。




