33話 ソロキャン飯
ーー80階層、ベースキャンプにて
『トントントン』
ベースキャンプ内にある調理場で、俺は1人まな板の上の小ネギを切っていた。
「へぇ、太一先輩って料理もいけるんですね」
「いやいやそんな大したもんでもないよ、キャンプで作る男の一人飯さ」
そんな様子を見て安達が話しかけてきた。
ふと思ったが、安達は料理とかするのだろうか。
失礼かもしれないがするようには見えない。
うん、この事は聞かない方がいいかもなだな。
「へぇそうなんすね、私もあんまり料理しないので勉強させてもらいます!」
そう言って安達は敬礼のように、額に右手をピシッと当てた。
やっぱり料理はしないのか。
『グツグツ』
小ネギを切るすぐ横では、持ってきた鶏肉と白菜を入れた味噌鶏鍋がいい感じになってきているらしく、グツグツと良い音を出していた。
「うーん、鍋の方もいい感じっすね匂いだけでお腹が空きそうっす」
「はは、もう少し待っててくれよ」
俺はそう言って先ほど切った小ネギを、さっき焚き火で焼いた魚の上にパラパラとかけた。
「美味そうな魚ですね!」
「ああそうだろ、この魚はさっきこの階層で見つけた"金王鯛"っていうダンジョンの魚なんだ」
「金王鯛!なんだかめっちゃ美味そうな名前っすね」
「はは、そうか?でもな安達よこの魚は本当に美味いぞ」
「マジすか先輩!それめっちゃ期待しちゃいますよ!」
「ああ構わんぞ安達よ」
俺はそう言ってグッと親指を立てた。
『グゥゥゥ』
「先輩がそんな事言うから、お腹が鳴っちゃったじゃないすかぁ」
「はは、それはすまんな、ならご飯でもよそって食事の準備を頼むよ」
「了解っす!」
ーー22時 夕食
「お、美味しそうです!!」
美味姫さんは俺が作った"金王鯛定食"を見て、目を輝かせながらそう言った。
現在、ベースキャンプの簡易的な食堂には、美味姫さん、安達、郷士君、八木さん、春一君、そして俺の6人が集まっている。
本当は皆んなで食べてしまいたいのだが、各自が見張りやベースキャンプの拡張などやる事があるため、とりあえずこのメンバーで食べてしまおうという事になった感じだ。
「千川氏のご飯……最高すぎる」
「ん、どうしたの八木さん?」
「い、いえ何でもありません!!」
何やらボソボソ呟いている八木さんにそう訊ねてみたが、彼女は首を凄い勢いで揺らしそう言った。
この子、何か怪しいんだよなぁ。
「千川さん、料理お上手なんですね」
「いやいやこんなの大した事ないよ」
「いえいえ、焼き魚に鶏鍋、あとご飯にサラダとか理想的な献立ですよ!」
春一君は目を輝かせながらそう話す。
若い子に褒められるとどうもニヤけてしまう。
今の俺の顔、大丈夫だろうか?
「あ、先輩うれしそう!」
「うるさいぞ安達!さぁ皆んな料理が冷めないうちに食べちゃってくれ!」
俺は茶化してくる安達を牽制しつつ、頂きますを促した。
「えー、それじゃあ皆さん私のあとに続いてお願いします!」
美味姫さんはそう言って両手を合わせる。
「頂きます!」
『頂きます!』
美味姫さんの頂きますに続いて、全員が手を合わせてそう言い、夕飯がスタートする。
「お、もうできたのか!」
「村松さん!」
夕飯が始まってすぐ、罠役兼ベースキャンプ管理者の村松さんが食堂へとやってきた。
「待っててください、すぐに村松さんのも用意するので」
「いやいやいいんだ、それより太一くんご飯が終わったら見てほしいものがあるんだが」
「見てほしいもの?」
「ああ、きっとこの先の攻略で役に立つものを作ったのでな」
そう言って村松さんはニコッと笑った。
この先の攻略で役立つものか、一体村松さんは何を作ったのだろう……気になるな。




