32話 前線基地
ーー未開拓ダンジョン、80層にて
ー大和小隊無線にて
ー(八木)対象の沈黙を確認、お疲れ様です皆さん
ー(大和)ふぅ、終わったか
ー(春一)まさか軍隊ゴブリンが出てくるなんて、びっくりしましたね皆さん
ー(郷士)怪我した人いたら俺のところへ頼むね、すぐに治療したいから
ー(安達)ねーねー、あたしのバズーカ見た?凄い威力だったでしょ!
ー(大和)とりあえず私は、先輩に終わったことを伝えるから、各自撤退の準備を頼むぞ
ー(全員)了解!
そう言って大和小隊の面々は、各自自分の荷物をまとめて撤退の準備を始める。
「あ、先輩ー!」
「おう大和、お疲れ!」
太一は倒れたコマンダーゴブリンの近くにいた。
10数体いた軍隊ゴブリンの残党はコマンダーが倒されるのを確認すると、すぐにどこかへ消えてしまい、ゴブリンはこの遺跡から完全に姿を消していた。
「いやぁ、全然衰えていないじゃないっすか先輩!」
「そう見えるか?」
「え、もしかして結構辛い感じなんす?」
「ああだいぶな、正直ブランク2年もあったら身体が全然重いわ」
「それであの動きができんのやっぱりやばいっすね、先輩」
太一が攻略者を辞めたのは今から2年前。
つまり、太一には2年ブランクがあったのだが、大和や他の小隊メンバーにそれを感じさせないほどの安定感を太一は出していた。
「はは、そんな大したことじゃ無いさ、そんじゃベースキャンプに帰るとするか」
「はい先輩!」
ーーチャット欄にてーー
"なんかスゲェもん見ちゃったな"
"これが攻略者のガチ戦闘"
"比べるのは違うかもだけど、普段見ている配信者のそれとは全然違うね"
"お疲れ様です千川氏"
「あ、そう言えば配信付けっぱなしだったな」
攻略に夢中になるあまり配信の存在を忘れていた太一は、そう言うと頭の上のGoProを外し電源ボタンに指を置く。
「それじゃあ皆さん、こっちの配信は終わるんであとは美味姫さんよろしくね」
『ブチッ』
そう言ってカメラの電源を切る太一。
「先輩ー!こっちは準備できましたよー!」
声がする方を見ると、大和小隊の面々が準備を終えて太一を待っていた。
「よし全員揃ってるね、ベースキャンプまで戻ろうか」
『了解!』
ーー80層、ベースキャンプにて
「す、凄いなこれ」
ベースキャンプへ着くとその変わり様に驚いた太一は、思わずそう言葉を漏らす。
太一が建てたベースキャンプは、村松の手により改築され巨大なテントが2つと固定砲台のような物が4つが新しく建っていた。
「そう言ってくれると作った甲斐があるよ太一君、まぁまだ作ってる途中だけどね」
「途中でこれなんですか?」
「ああそうさ、完成したら遠隔バリアや対モンスター用のドローンなんかも配備するつもりだよ」
「す、すげぇ」
「はは、まぁここは当分の間この未開拓ダンジョンの攻略前線基地になるからね、それくらいしないと」
前線基地、それは未開拓ダンジョンの攻略において欠かす事ができない拠点。
基本的に、難関ダンジョンでは支援物資が届くまで時間がかかる。
故に支援物資が届くまで、耐えられる設備が整っている基地が必要なのだ。
「あ、そうだ太一くん、あっちの奥に特別に用意したテントがあってさ、そこに美味姫さんはいるよ」
「え、おの二つの巨大テントの他にもテントがあるんですか?」
「うんあるよ、美味姫さんが何でも配信用のスタジオが欲しいって言うから作ったんだよね」
村松は笑顔でそう答えた。
「は、配信用……さすがは登録者100万人を超える人気チャンネルの運営主、こんな危険なダンジョンでも配信の事を第一に考えてるとはな」
太一は少々引き気味にそう話す。
「あ、ダンジョン侍ー!」
その時、ベースキャンプの奥の方からこちらに向けて手を振る美味姫が現れる。
「美味姫さーん!」
そう言って手を振りかえす太一。
「名前また間違えてる、もう改名しようかな」
太一は小さくそう呟くのだった。




