25話 大和小隊
ーー未開拓ダンジョン、80層にて
「み、皆さん私達は今ーー」
『ギャウウ』
『ギャオオ』
配信のためハンディカメラを自身の方へ向け、走りながら撮影する美味姫さん。
そしてその後ろから2体のゴブリンが迫っていた。
「ゴブリンちゃんに追われてます!」
ーーチャット欄にてーー
"あ、危ねぇ"
"これ配信していいやつなのか?"
"絶対ダメだろ、早く警察とかに通報したほうが……"
"か、神枠だ……色んな意味で"
「美味姫さん、頑張ってくださいもう少しでベースキャンプに着きますから!」
「は、はぃぃ」
『ギャウウ』
その時、一体のゴブリンが美味姫さんへ飛びかかった。
「危ない!【小炎弾】!」
『ゴウッ』
俺は咄嗟に右手から小さな炎弾を放ち、美味姫さんに迫ってくるゴブリンの顔面に当てた。
『イギャァァァ』
「だ、大丈夫ですか美味姫さん」
「こ、怖かったですぅぅ」
美味姫さんはそう言って爆泣きしていた。
ーーチャット欄にてーー
"おっさんナイスゥ!"
"いやでももう限界だ"
"きっと囲まれてる"
"もう終わりだよ"
『ギャウウ』
『ギャッギャッ』
「か、囲まれてますうぅぅ」
気がつくと俺と美味姫さんの周りはゴブリンだらけになっていた。
「まずいな、ここは俺が囮になって……」
「伏せてください、そこのおじ様!」
「え?」
『カチャッ』
声のする方向を見ると、そこにはバズーカを構えた小柄な女の子がいた。
「ちょちょ、ちょっと待ってくれ」
「ファイアー!」
『ズドォン』
「危ねぇ」
『ヒョイッ』
『バコォン』
女の子の放った砲弾は見事に命中し、4、5体のゴブリンを焼き払った。
てか危ねぇ、咄嗟に躱せたからいいものを当たっていたら、俺まで火だるまになっていたとこだぞ。
ーーチャット欄にてーー
"す、すげぇ"
"ギリギリのところで助けが来たのか!"
"相変わらず運が良いな美味姫"
"やはり神枠だったか"
「やぁどうもどうもー!」
「……ん、お前、どこかで見た顔だな」
「あ、太一先輩じゃないすか!」
「安達!やっぱりお前か」
バズーカを放った人物は俺の攻略者時代の後輩、安達美玖だった。
「太一先輩マジ久々っすね」
「お、おう、お前は相変わらず危なっかしいな」
「やだなー先輩、いつもそればっか言うじゃないすか」
「はは、本当のことだからね」
「冗談きついっすよ、先輩~」
安達はケラケラ笑いながらそう話す。
冗談じゃないって言ってんだけどね。
「ここに安達が来てるって事は、大和の攻略チームが到着した感じか?」
「そうっす!今、村じいが階層変動を起こさないように階層固定スパイクを打ってるところです」
「そうか、ならひとまず安心できそうだな」
安達の言っていた村じいとは、今年で51歳になる村松邦夫という高齢攻略者の事である。
邦夫さん、まだ辞めてなかったんだな。
「つか太一先輩はこんなところへ何しに来てたんすか?」
「配信だよ、そのためにここへ来たんだ」
「配信って、そんな若人みたいなことしてんすか?」
「そうだよ、俺もまだ37だし新しいことやりたいと思ってさ」
「へぇ、あの"攻略の鬼"と呼ばれた先輩が配信者ですか、変わるもんすね」
「まぁな」
「そ、ソロキャン侍、このバズーカレディは何者なのですか?」
怯えた目をした美味姫さんがそう訊ねてきた。
「ああそうか、まだ紹介してなかったね、この子は安達美玖、今年で26歳の中堅攻略者だよ」
「ちょ先輩、年齢は言わないでくださいよ!」
「別にいいだろ、まだ若いんだし」
「若いって、それはそうですけど」
「26歳は微妙では?」
若いと言われて喜ぶ安達に、女子大生配信者の悪気のない言葉が突き刺さる。
「え、えっと先輩、この子はどなたなのでしょうか?」
「美味姫さんっていう名前で活動している配信だよ」
「ほ、ほうなかなか生意気じゃんね」
安達は小さくそう呟く。
『スルッ』
その時、上の方からロープが降ってきた。
『シュルル』
そうしてロープを使ってここへ降りてくる1人の影があった。
「おーい安達、そっちは大丈夫なのか?」
「郷士か!大丈夫だ降りてこい!」
「りょーかい!」
『ドサッ』
そしてその人影は俺たちのいるすぐ近くに降りてきた。
「あ、やっぱり太一さんだ」
そう言って現れたのは、またもや俺の後輩攻略者の桜田郷士だった。
確か郷士は回復役、これで怪我人が出ても俺の素人治療をしなくて済みそうだ。
『ギャウウ』
『イギャア!』
郷士が到着したタイミングで、軍隊ゴブリンの第二波が俺たちの前に現れる。
その数約8体。
大和や春一君が前線で戦っているのに、この量が来るのか。
2人が心配だし、ここは早々に片付けて前線の援護に行ったほうがいいかもな。
「俺が前に出るから、安達は後方支援、郷士君は美味姫さんのそばにいてくれ!」
『了解!』
「わわ、私は何をすれば?」
怯えた目でそう訊ねてくる美味姫さん。
正直、美味姫さんに頼める事は何もないんだよなぁ。
「美味姫さんは、とりあえずカメラを回しててください!」
「了解です!」
変にウロチョロされるより、目のつくところでカメラマンやっててくれた方が気が楽だよな。
「【リミットボーナス】解放」
『かしこまりました、IDをどうぞ』
「スキル名"剛拳"」
『承認しました』
『キュイーン』
スキル"剛拳"により、俺の量拳は強い光を放った。
「いくぞ3人とも、行動開始だ!」
ーーチャット欄にてーー
"おっさん、かっけぇ"
"渋すぎて惚れる"
"がんばれー!美味姫ちゃんも"
"神枠……"




